・切除不能な局所進行性/転移性HER2陰性の胃/食道胃接合部がん患者が対象の第3相試験
・バベンチオ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・全患者における全生存期間は10.4ヵ月で、化学療法継続群に対し優越性を認めなかった
2020年11月16日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて切除不能な局所進行性/転移性HER2陰性の胃/食道胃接合部がん患者に対するファーストライン治療としての白金製剤を含む化学療法後の維持療法としての抗PD-L1抗体薬であるバベンチオ(一般名:アベルマブ、以下バベンチオ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のJAVELIN Gastric 100試験(NCT02625610)の結果がJohannes-Gutenberg University MainzのMarkus Moehler氏らにより公表された。
JAVELIN Gastric 100試験とは、切除不能な局所進行性/転移性HER2陰性の胃/食道胃接合部がん患者(N=805人)に対してファーストラインに白金製剤を含む化学療法を12週投与後、維持療法として2週を1サイクルとしてバベンチオ10mg/kg単剤療法を病勢進行するまで継続投与する群(N=249人)、または同じ化学療法を病勢進行するまで継続投与する群(N=250人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目を全患者群とPD-L1陽性(1%以上として定義)患者群におけるそれぞれの全生存期間(OS)を比較検証した国際多施設共同オープンラベルの第3相試験である。
切除不能な局所進行性/転移性HER2陰性の胃/食道胃接合部がんの予後は不良である。国際ガイドラインでは、標準治療として白金製剤を含むダブレット化学療法、トリプレット化学療法が推奨されているが、無増悪生存期間(PFS)中央値は約6ヵ月、全生存期間(OS)中央値は9~18ヵ月程度と短期間である。以上の背景より、抗PD-L1抗体薬バベンチオ単剤療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である全患者群における全生存期間(OS)中央値はバベンチオ単剤群10.4ヵ月(95%信頼区間:9.1-12.0ヵ月)に対して化学療法群10.9ヵ月(95%信頼区間:9.6-12.4ヵ月)、24ヵ月全生存率(OS)はバベンチオ単剤群22.1%に対して化学療法群15.5%(HR:0.91、95%信頼区間:0.74-1.11、P=0.1779)を示した。
PD-L1陽性患者群(N=54人)における全生存期間(OS)中央値はバベンチオ単剤群14.9ヵ月(95%信頼区間:8.7-17.3ヵ月)に対して化学療法群11.6ヵ月(95%信頼区間:8.4-12.6ヵ月)、バベンチオ単剤群で死亡(OS)のリスクを28%減少(HR:0.72、95%信頼区間:0.49-1.05)を示した。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はバベンチオ単剤群61.3%に対して化学療法群77.3%、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はバベンチオ単剤群12.8%に対して化学療法群32.8%をそれぞれ示した。
以上のJAVELIN Gastric 100試験の結果よりMarkus Moehler氏らは「切除不能な局所進行性/転移性HER2陰性の胃/食道胃接合部がん患者に対するファーストライン治療後の維持療法としての抗PD‐L1抗体薬バベンチオ単剤療法は、主要評価項目である全生存期間(OS)を達成できませんでした」と結論を述べている。