・抗PD-1抗体薬に伴う甲状腺機能障害を予測するバイオマーカーについて前向きに検証した観察研究
・治療開始より24週目まで6週毎に甲状腺自己抗体を測定し、甲状腺機能障害の発生などで評価
・甲状腺自己抗体検査、甲状腺超音波検査を測定することで発症リスクを予測できる可能
2020年2月3日、医学誌『British journal of cancer』にて抗PD-1抗体薬に伴う甲状腺機能障害を予測するバイオマーカーについて前向きに検証した観察研究(UMIN000019024)の結果がNagoya University Graduate School of MedicineのNorio Okada氏らにより公表された。
本試験は、抗PD-1抗体薬による治療を受けた患者209人を対象にし、治療開始より24週目まで6週毎に甲状腺自己抗体を測定し、主要評価項目として免疫チェックポイント阻害剤投与による甲状腺機能障害の発生、副次評価項目として下垂体、甲状腺、糖尿病関連ホルモン値の変化率、血中抗下垂体抗体の有無、下垂体MRI所見などを検証した観察研究である。なお、ベースライン時点で甲状腺自己抗体陽性と判定された患者に対しては甲状腺超音波検査を追加で実施している。
本試験が開始された背景として、抗PD-1抗体薬は甲状腺機能障害を発症させることが複数の臨床試験より明らかになっている。しかしながら、甲状腺機能障害の発症をリスク別に予測するバイオマーカーは確立していない。以上の背景より、甲状腺自己抗体の測定がに伴う甲状腺機能障害の発症を予測できるバイオマーカーになり得るかどうかを検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、209人の患者のうち19人(9.1%)の患者が甲状腺炎、甲状腺機能低下症等の甲状腺機能障害を発症した。そして、甲状腺機能障害を発症した患者19人患者のうち、甲状腺自己抗体ステータスは陽性患者34.1%(N=15/44人)に対して陰性患者2.4%(N=4/165人)、甲状腺陽性患者は陰性患者に比べて甲状腺機能障害発症率が統計学有意に高率であることが示された(P<0.001)。
また、ベースライン時点で甲状腺自己抗体陽性と判定された42人の患者は、甲状腺超音波検査により均一(regular)、不整(irregular)の2つのグループに分けられており、グループ別の甲状腺機能障害発症率は下記の通りである。均一(regular)群5.3%(N=1/19人)に対して不整(irregular)群56.5%(N=13/23人)、甲状腺超音波検査により不整(irregular)であった患者は均一(regular)であった患者に比べて甲状腺機能障害発症率が統計学有意に高率であることが示された(P=0.001)。
以上の観察研究の結果よりNorio Okada氏らは以下のように結論を述べている。”抗PD-1抗体薬に伴う甲状腺機能障害は、甲状腺自己抗体検査、甲状腺超音波検査を測定することで発症リスクを予測できる可能性が本試験より明らかになりました。”