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世界で初めて原発不明がんに対する承認を取得したオプジーボ、この承認がもたらす意義とは

小野薬品工業株式会社とブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社は1月19日、メディアセミナー「原発不明がんに対する世界初の治療薬登場」を開催。近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 主任教授の中川和彦先生が講演した。

目次

標準治療が未確立の原発不明がん


近畿大学 医学部 内科学 腫瘍内科部門
主任教授 中川和彦 先生 ※提供写真

原発不明がんとは、十分な検索にも関わらず原発巣が不明であり、組織学的に転移巣(別の部位から)と判明している悪性腫瘍。診断時に進行転移しており、複数臓器に転移が認められる患者が全体の半数以上を占めると言われている。

原発不明がんは、全がん種うち1~5%を占め、日本国内では年間約7000人が新規に罹患すると考えられているが「正確な数はわからない」と中川氏。その理由として、「原発不明がんには標準治療が無いため、治療を行うために他のがんとして診断している可能性がある」と述べた。

原発不明がんは、推定される原発巣に準じた特異的な治療の適応となる「予後良好群」と、治療法が確立されていない「予後不良群」に大別され、予後不良群は原発不明がんの80%を占める。予後良好群では、ガイドラインに記された治療が行われるが、予後不良群では国内外で承認された薬剤はなく、先述の通り標準治療が未確立であった。


(中川先生講演資料より)

医師主導治験で有効性を確認、奏効率は22.2%

このような背景から中川氏ら研究グループは、原発不明がんを対象としてオプジーボ(一般名:ニボルマブ)の有効性および安全性を評価する医師主導治験「NivoCUP試験」を実施した。

同試験では、主要評価項目である化学療法既治療例における奏効率中央判定)は、22.2%(10/45例、95% CI:11.2-37. 1)を示し、信頼区間の下限値が事前に設定した閾値奏効率5%を超えたことから主要評価項目を達成した。また、治療歴の有無を問わない全体集団における奏効率(中央判定)は、21.4%(12/56例、95% CI:11.6-34.4)を示し、治療歴を問わずオプジーボの抗腫瘍効果が示された。

同試験について、中川氏は「無増悪生存期間PFS)の中央値は3カ月ほどとあまり長くないが、全生存期間OS)は長くすることができそうだということが、副次的項目として示された」と述べるとともに、「他のがん種でも示されているが、できるだけ早い時期にオプジーボによる治療を行うことで、生存期間を延ばすことができるのではないか」と期待を込めた。


(中川先生講演資料より)

オプジーボの承認で「争点を乗り越えた」

NivoCUP試験の結果を受け、小野薬品工業は2021年4月、原発不明がんの治療薬としてオプジーボの承認申請を行い、同年12月24日に承認を取得した。

今回の承認について、中川氏は「まず、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が原発不明がんを薬剤承認の対象疾患として認めてくれるかどうかという争点であり、そこを乗り越えた。これにより原発不明がんが開発の対象になったということがひとつの朗報」と評価し、これにより今後、原発不明がんを対象とした研究・開発が進むのではないかと期待を口にした。

また、一般の方々に対しては、「まずは『原発不明がん』というものがあることを知っていただきたい」とメッセージを送り、「今回のオプジーボでもどんな治療でも、患者さんが元気であればあるほど、治療の効果は高い。治療を遅らせないことが大切」と早期診断と治療開始の重要性を示した。

 

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