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母親の子宮頸がんが子どもに移行、がん細胞が混じった羊水から

2021年1月7日、国立がん研究センターは、2名の小児患者の肺がんが母親の子宮頸がんの移行により発症したものであるが明らかになったと発表した。

この研究成果は、国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科、同センター研究所ゲノム生物学研究分野/先端医療開発センターゲノムTR分野を中心とする研究チームによるもの。同センター中央病院で行われている臨床試験「TOP-GEAR(トップギア)プロジェクト」の一環で明らかになったという。TOP-GEARプロジェクトは、がん遺伝子パネル検査である「NCC オンコパネル検査」の有用性を調べる前向き臨床研究。

今回、NCCオンコパネル検査を用いて2名の小児がん患者の肺がんの遺伝子解析を行ったところ、がん細胞から他人の遺伝子配列を検出した。男児2名の母親がともに子宮頸がんを発症していたことから、男児と母親、それぞれの正常組織と腫瘍組織の遺伝子を比較。その結果、肺のがん細胞は2名とも母親由来の遺伝子情報を持っていることが明らかになったという。

さらに、男児の肺のがん細胞は女性の細胞であることも判明。また、男児と母親、どちらのがん細胞からも子宮頸がんの原因となる同種のヒトパピローマウイルス(HPV)の遺伝子が検出された。このことから、男児の肺がんは母親の子宮頸がんが移行して発症したと結論づけたという。男児の肺がんは、肺に多発している一方で、脳や肝臓など他の臓器への転移は認めず、通常の腫瘍細胞の広がり方とは異なる特徴を有していた。

子どもは出産直後に泣くことで呼吸を開始するが、その際には羊水を吸い込む。今回の2つの症例では母親の子宮頸がんのがん細胞が混ざった羊水を吸い込むことで、がん細胞が男児の肺に移行し、肺がんを発症したと考えられている。

なお、患児のうち1名は、同センター中央病院で行われている医師主導治験免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ(一般名:ニボルマブ)が投与され、がん細胞が消失した。オプジーボは、母親のがんには劇的な効果を示さなかったことから、子どもの免疫細胞は母親由来のがん細胞を自分の体ではないものと判断し、がん細胞に対する免疫応答が高まった可能性が示唆されている。

小児がんは罹患数が少なく、標準治療が確立していない場合、保険診療でがん遺伝子パネル検査を受けることができる。こうした遺伝子パネル検査によって患児の情報が蓄積されることで、小児がんの研究と治療法の開発がより進むことを期待されている。

NCCオンコパネル検査とは
NCCオンコパネル検査は、日本でのがんの治療開発の促進を目指し、国立がん研究センターが開発した検査方法。日本人のがんに多い114個の遺伝子変異を検出できるほか、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果に影響を与える腫瘍変異負荷の評価、がん患者の先天的な遺伝子変異(生殖細胞系列変異)と腫瘍細胞内のみの遺伝子変異(体細胞遺伝子変異)を区別することも可能。2019年6月に保険が適応された。

参照元:
国立がん研究センター プレスリリース

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