2020年12月5日~8日、オンラインミーティングで開催された第62回米国血液学会議(ASH 2020)にて、複数再発歴のある濾胞性リンパ腫(FL)患者に対する抗CEA/CD3バイスペシフィック抗体であるモスネツズマブ(RG7828)単剤療法の有効性、安全性を検証した第1相の用量漸増試験の結果がJewish General HospitalのSarit E Assouline氏らにより公表された。
本試験は、複数再発歴のある濾胞性リンパ腫(FL)患者に対して21日を1サイクルとして1、8、15日目にモスネツズマブ(RG7828)0.4/1.0/2.8mgまたは1/2/13.5mg単剤療法を投与し、評価項目として安全性、全奏効率(ORR)を検証した用量漸増試験である。
本試験が開始された背景として、濾胞性リンパ腫(FL)は病勢進行が緩徐でありながら、再発を繰り返す不治の疾患である。特に、全身療法2レジメンの治療歴のある再発濾胞性リンパ腫(FL)の予後は不良である。以上の背景より、B細胞リンパ腫に対して抗腫瘍効果が期待されている抗CEA/CD3バイスペシフィック抗体であるモスネツズマブ(RG7828)の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された62人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は59歳(27-85歳)。前治療歴中央値は3レジメン(2-11レジメン)。治療開始から24カ月以内の増悪率(POD24)は48%(N=30人)。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
全奏効率(ORR)は68%(N=42/62人)、完全寛解率(CR)を達成率は50%(N=31人)。なお、完全寛解(CR)を達成した患者背景は治療開始から24カ月以内の増悪(POD24)の患者53%(N=16/30人)、PI3Ki阻害薬に対して難治性を示した患者78%(N=7/9人)、CAR-T治療歴のある患者50%(N=2/4人)などハイリスクのある患者でも確認されている。
奏効持続期間(DOR)中央値は20.4ヵ月(95%信頼区間:11.7ヵ月-未到達)、無増悪生存期間(PFS)中央値は11.8ヵ月(95%信頼区間:7.3-21.9ヵ月)を示した。
一方の安全性として、有害事象(AE)発症率は97%(N=60人)、重篤な有害事象(SAE)発症率は35%(N=22人)の患者で確認された。10%以上の患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は低リン血症23%、好中球減少症21%、サイトカイン放出症候群(CRS)23%。全グレードの神経学的有害事象(Neurologic AEs)は45%(N=28人)の患者で確認され、その内訳は頭痛24%、不眠症15%、めまい11%を示した。
以上の第1相の用量漸増試験の結果よりSarit E Assouline氏らは「複数再発歴のある濾胞性リンパ腫(FL)患者に対する抗CEA/CD3バイスペシフィック抗体であるモスネツズマブ(RG7828)単剤療法は、持続的で良好な抗腫瘍効果を示しました」と結論を述べている。