・治療歴のある進行性/転移性非小細胞肺がん患者が対象の第1相試験
・Datopotamab Deruxtecan(ダトポタマブ デルクステカン)単剤療法の有効性・安全性を検証
・客観的奏効率は4mg/kg群23%、6mg/kg群21%、8mg/kg群25%であった
2021年1月28日~31日までオンラインミーティングで開催された第21回世界肺癌学会議(WCLC-IASLC 2020)にて治療歴のある進行性/転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するTROP2に対する抗体薬物複合体(ADC)であるDatopotamab Deruxtecan(ダトポタマブ デルクステカン:DS-1062)療法の有効性、安全性を検証した第1相のTROPION-PanTumor01試験(NCT03401385)の結果が公表された。
TROPION-PanTumor01試験とは、標準治療に抵抗性を示した進行性/転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者(N=159人)に対して3週を1サイクルとしてDatopotamab Deruxtecan(DS-1062)4mg/kg投与する群(N=40人)、6mg/kg投与する群(N=39人)、8mg/kg投与する群(N=80人)の3コホートに分け、主要評価項目として有害事象(AE)発症率、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)などを検証した第1相試験である。
本試験が開始された背景として、肺がんはがんの中でも死亡率が高く、5人に1人が肺がんにより死亡に至る。肺がんの中で非小細胞肺がん(NSCLC)は80~85%を占めるが、大半の肺がん患者は転移、病勢進行期で発見され、5年生存率は6~10%程度であり予後不良である。以上の背景より、非小細胞肺がん(NSCLC)に対するTROP2に対する抗体薬物複合体(ADC)の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値7.4ヶ月時点における結果は下記の通りである。客観的奏効率(ORR)は4mg/kg群で23%(N=9/40人)、6mg/kg群で21%(N=8/39人)、8mg/kg群で25%(N=20/80人)を示した。病勢コントロール率(DCR)は4mg/kg群で73%(N=29/40人)、6mg/kg群で67%(N=26/39人)、8mg/kg群で80%(N=64/80人)を示した。
また、奏効の内訳として、完全奏効(CR)/部分奏効(PR)は4mg/kg群で7人、6mg/kg群で6人、8mg/kg群で19人、病勢進行は(PD)4mg/kg群で7人、6mg/kg群で6人、8mg/kg群で8人であった。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は粘膜炎、貧血、口内炎、倦怠感であった。また、間質性肺疾患(ILD)は8%(N=14人)の患者で確認されたが、14人の内12人の患者はDatopotamab Deruxtecan(DS-1062)8mg/kgコホートであり、3人の患者はグレード5の間質性肺疾患(ILD)により死亡に至った。
なお、Datopotamab Deruxtecan(DS-1062)4mg/kgコホートでグレード3の間質性肺疾患(ILD)が1人、Datopotamab Deruxtecan(DS-1062)6mg/kgコホートでグレード2の間質性肺疾患(ILD)が1人確認されている。
以上のTROPION-PanTumor01試験の結果より、Johns Hopkins OncologyのAlexander Spira氏は「治療歴のある進行性/転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するTROP2に対する抗体薬物複合体(ADC)Datopotamab Deruxtecan(DS-1062)単剤療法は、全てのコホートで良好な抗腫瘍効果を示し、非小細胞肺がん(NSCLC)の治療標的としてのTROP2の有効性の高さが示されました」と述べている。