・移植適応のある新規多発性骨髄腫患者が対象の第3相試験
・維持療法としてのダラザレックス単剤療法の有効性・安全性を経過観察と比較検証
・無増悪生存期間は経過観察46.7ヶ月に対して未到達であり、統計学的有意に延長した
2021年6月9日~17日、バーチャルミーティングで開催された第25回欧州血液学会議(EHA2021)にて、移植適応のある新規多発性骨髄腫(NDMM)患者に対する導入療法としてのボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン±抗CD38モノクローナル抗体ダラザレックス(一般名:ダラツムマブ、以下ダラザレックス)併用療法後の維持療法としてのダラザレックス単剤療法と経過観察の有効性、安全性を比較検証した第3相のCASSIOPEIA試験のPART2の結果がUniversity Hospital Hôtel-DieuのPhilippe Moreau氏らにより公表された。
CASSIOPEIA試験は、移植適応のある新規多発性骨髄腫(NDMM)患者に対する導入療法としてボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン±ダラザレックス併用療法を4サイクル、地固め療法として2サイクル行い(PART1)、部分奏効(PR)以上を示した患者(N=886人)に対して維持療法として8週を1サイクルでダラザレックス16㎎/kg単剤療法を投与する群(N=442人)、または経過観察する群(N=444人)に無作為に振り分け(PART2)、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、重要な副次評価項目として無増悪期間(TTP)、完全奏効率(CR)、微小残存病変(MRD)陰性率などを比較検証したランダム化オープンラベルの第3相試験である。
本試験のフォローアップ期間中央値35.4ヶ月時点における結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はダラザレックス単剤群の未到達に対して経過観察群で46.7ヶ月と、ダラザレックス単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを47%(HR:0.53、95%信頼区間:0.42~0.68、P<0.0001)減少した。
また、サブグループ解析の結果、前治療としてボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン(VTD)治療歴のある患者群における維持療法としてのダラザレックス単剤療法は、経過観察に比べて病勢進行または死亡(PFS)のリスクを68%(HR:0.32、95%信頼区間:0.23~0.46、P<0.0001)減少した。
一方、前治療としてボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン+ダラザレックス(D-VTD)治療歴のある患者群に対する維持療法としてのダラザレックス単剤療法は、経過観察に比べて病勢進行または死亡(PFS)のリスクを2%(HR:1.02、95%信頼区間:0.71~1.47)増加した。
副次評価項目である無増悪期間(TTP)中央値はダラザレックス単剤群の未到達に対して経過観察群で46.7ヶ月と、ダラザレックス単剤群で病勢進行(TTP)のリスクを51%(HR:0.49、95%信頼区間:0.38~0.62、P<0.0001)減少した。
完全奏効率(CR)はダラザレックス単剤群の60.8%に対して経過観察群で72.9%(OR:2.17、P<0.0001)、微小残存病変(MRD)陰性率はダラザレックス単剤群の58.6%に対して経過観察群で41.7%(OR:1.80、P=0.0001)、全生存期間(OS)中央値は両群ともに未到達だった。
安全性について、2.5%以上の患者で確認されたグレード3~4の有害事象(AE)は、リンパ球減少症がダラザレックス単剤群の3.6%に対して経過観察群で1.8%、高血圧が3.0%に対して1.6%、肺炎が2.5%に対して1.4%であった。重篤な有害事象(SAE)発症率はダラザレックス単剤群の22.7%に対して経過観察群で18.9%であり、多くの患者は肺炎であった。
以上のCASSIOPEIA試験の結果よりPhilippe Moreau氏らは「移植適応のある新規多発性骨髄腫(NDMM)患者に対する維持療法としてダラザレックス単剤療法は、経過観察に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善することを示しました。なお、この有効性は前治療歴としてボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン(VTD)併用療法の治療を受けた患者にのみ確認されました」と結論を述べている。