・未治療の切除不能/転移性肝細胞がんの中国人患者が対象の第3相試験
・Sintilimab(シンチリマブ)+ベバシズマブのバイオシミラーIBI305併用療法の有効性・安全性をソラフェニブと比較検証
・無増悪生存期間4.6ヶ月、全生存期間未到達であり、いずれもソラフェニブに対し統計学的有意に改善した
2021年7月15日、医学誌『The Lancet Oncology』にて未治療の切除不能/転移性肝細胞がん中国人患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体であるSintilimab(シンチリマブ)+抗VEGFヒト化モノクローナル抗体であるベバシズマブのバイオシミラーであるIBI305併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のORIENT-32試験(NCT03794440)の結果がZhongshan HospitalのZhenggang Ren氏らにより公表された。
ORIENT-32試験は、未治療の切除不能/転移性肝細胞がん中国人患者(N=571人)に対するファーストライン治療として3週を1サイクルとしてSintilimab 200mg+IBI305 15mg/kg併用療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで行う群(N=380人)、1日2回ソラフェニブ400mg単剤療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで行う群(N=191人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、独立放射線審査委員会(IRRC)評価による無増悪生存期間(PFS)を比較検証した多施設共同オープンラベルの第3相試験である。
本試験が開始された背景として、中国では肝細胞がんに罹患する患者が多く存在し、その主な発症原因はB型肝炎ウイルス(HBV)である。肝細胞がん患者の予後は不良であり、アンメッドメディカルニーズが非常に高い疾患である。以上の背景より、未治療の切除不能/転移性肝細胞がん患者に対するファーストライン治療として抗PD-1抗体Sintilimab+抗VEGFヒト化モノクローナル抗体IBI305併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値はSintilimab+IBI305群で10.0ヶ月(8.5~11.7ヶ月)、ソラフェニブ群で10.0ヶ月(8.4~11.7ヶ月)。同時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である独立放射線審査委員会(IRRC)評価による無増悪生存期間(PFS)中央値はSintilimab+IBI305群の4.6ヶ月(95%信頼区間:4.1~5.7ヶ月)に対してソラフェニブ群で2.8ヶ月(95%信頼区間:2.7~3.2ヶ月)と、ソラフェニブ群に比べてSintilimab+IBI305群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを44%(HR:0.56、95%信頼区間:0.46~0.70、P<0.0001)統計学有意に減少を示した。
もう1つの主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はSintilimab+IBI305群の未到達(95%信頼区間:未到達)に対してソラフェニブ群で10.4ヶ月(95%信頼区間:8.5ヶ月~未到達)と、ソラフェニブ群に比べてSintilimab+IBI305群で死亡(PFS)のリスクを43%(HR:0.57、95%信頼区間:0.43~0.75、P<0.0001)と統計学有意に減少を示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。高血圧でSintilimab+IBI305群14%(N=55人)に対してソラフェニブ群6%(N=11人)、手足症候群でSintilimab+IBI305群0%(N=0人)に対してソラフェニブ群12%(N=22人)。重篤な有害事象(SAE)発症率はSintilimab+IBI305群32%(N=123人)に対してソラフェニブ群19%(N=36人)を示した。また、治療関連有害事象(TRAE)による死亡率はSintilimab+IBI305群で2%に対してソラフェニブ群1%であった。
以上のORIENT-32試験の結果よりZhenggang Ren氏らは「未治療の切除不能/転移性肝細胞がんの中国人患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体Sintilimab+抗VEGFヒト化モノクローナル抗体であるベバシズマブのバイオシミラーIBI305併用療法は、ソラフェニブ単剤療法に比べて独立放射線審査委員会(IRRC)評価による無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を統計学有意に改善しました」と結論を述べている。