・未治療のステージIII/IV卵巣がん(上皮性卵巣がん、卵管がん、腹膜がん)患者が対象の第3相試験
・化学療法±バベンチオ療法後、維持療法としてバベンチオ投与の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間は化学療法+バベンチオ群で18.1ヶ月、化学療法+維持療法としてのバベンチオ群で16.8ヶ月、
対照群で未到達であり、有意な改善は見られなかった
2021年8月4日、医学誌『The Lancet Oncology』にて未治療のステージIII/IVの卵巣がん(上皮性卵巣がん、卵管がん、腹膜がん)患者に対する化学療法±抗PD-L1抗体薬であるバベンチオ(一般名:アベルマブ、以下バベンチオ)併用療法後、維持療法として化学療法、もしくはバベンチオ単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のJAVELIN Ovarian 100試験(NCT02718417)の結果がBiltmore Cancer CenterのBradley J Monk氏らにより公表された。
JAVELIN Ovarian 100試験は、未治療のステージIII/IVの卵巣がん(上皮性卵巣がん、卵管がん、腹膜がん)患者(N=998人)に対して化学療法+3週を1サイクルとしてバベンチオ10mg/kgを併用後、維持療法として2週を1サイクルとしてバベンチオ10mg/kg単剤を投与する群(バベンチオ併用療法群、N=331人)または化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルもしくは主治医選択化学療法)後、維持療法として2週を1サイクルとしてバベンチオ10mg/kg単剤を投与する群(バベンチオ維持療法群、N=332人)、または化学療法後、維持療法として経過観察を実施する群(対照群、N=335人)に1対1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として盲検下独立中央評価(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として安全性などを比較検証した国際多施設共同ランダム化の第3相試験である。
本試験が開始された背景として、未治療のステージIII/IV卵巣がん患者の約70%程度はプラチナ系抗がん剤ベースの治療後3年以内に再発を経験する。以上の背景より、未治療のステージIII/IV卵巣がんに対するファーストライン治療としての抗PD-L1抗体薬バベンチオ追加療法、維持療法としてのバベンチオ単剤療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の全患者におけるフォローアップ期間中央値10.8ヶ月(7.1~14.9ヶ月)時点の結果は下記の通りである。無増悪生存期間(PFS)中央値はバベンチオ併用療法群で18.1ヶ月(95%信頼区間:14.8ヶ月~未到達)、バベンチオ維持療法群で16.8ヶ月(95%信頼区間:13.5ヶ月~未到達)、対照群で未到達(95%信頼区間:18.2ヶ月~未到達)であった。また、対照群に比べた病勢進行または死亡(PFS)のハザードリスクはバベンチオ併用療法群で1.14(95%信頼区間:0.83~1.56、P=0.79)、バベンチオ維持療法群で1.43(95%信頼区間:1.05~1.95、P=0.99)を示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3~4の有害事象(AE)は下記の通りである。貧血がバベンチオ併用療法群19%(N=63人)、バベンチオ維持療法群21%(N=69人)、対照群16%(N=53人)、好中球減少症がそれぞれ30%(N=99人)、28%(N=91人)、26%(N=88人)、好中球数減少がそれぞれ14%(N=45人)、15%(N=49人)、18%(N=59人)であった。重篤な有害事象(SAE)発症率はバベンチオ併用療法群36%(N=118人)、バベンチオ維持療法群28%(N=92人)、対照群19%(N=64人)であった。
以上のJAVELIN Ovarian 100試験の結果よりBradley J Monk氏らは「未治療のステージIII/IV卵巣がん(上皮性卵巣がん、卵管がん、腹膜がん)患者に対する化学療法への抗PD-L1抗体薬バベンチオの上乗せ療法は、新たな有害事象(AE)を発生はさせないものの、無増悪生存期間(PFS)をはじめ有効性を向上させない可能性が示唆され、別のレジメンが必要でした」と結論を述べている。