9月7日、国立がん研究センター中央病院は、FGFR遺伝子異常を有する進行/再発固形がん患者を対象に、FGFRの選択的阻害剤であるE7090単剤療法の有効性と安全性を検証する第2相医師主導治験である「NCCH2006/MK010試験」(jRCT:2031210043)を実施すると発表した。
この医師主導治験は、国立がん研究センター中央病院のほか、、がんゲノム医療中核拠点病院である北海道大学病院、東北大学病院、京都大学医学部附属病院、九州大学病院の計5施設で実施する。
FGFR遺伝子異常には、融合遺伝子、活性化遺伝子変異、遺伝子増幅などの種類があり、腫瘍細胞の増殖、生存、薬剤耐性などに大きく関与している。また、FGFR遺伝子異常は肺がん、乳がん、胆管がん、脳腫瘍などさまざまながん腫で報告されているため、有望な治療標的として期待されている。
しかし、これまでFGFR遺伝子異常を認める患者の検出は頻度が低く、国立がん研究センター中央病院による研究では、がん遺伝子パネル検査が行われた症例(N=187人)のうち、FGFR遺伝子異常は4.3%(N=8人)でであった。そのため、これまでの治療開発スキームでは、治験の実施が困難であったという。
今回の治験では、国内5つのがんゲノム医療中核拠点病院による協力とがん遺伝子パネル検査を活用する新規のスキームを用いることで、希少な遺伝子異常を有する患者の課題解決が期待できるとともに、がん遺伝子パネル検査によって治療選択肢を増やすことで、がんゲノム医療の加速化を目指すとしている。
なお、NCCH2006/MK010試験に参加する5つの施設は、国立がん研究センター中央病院が実施する希少がんの研究開発、ゲノム医療を産学共同で推進するプロジェクトである「MASTER KEYプロジェクト」の拠点病院としての役割も担っている。同治験に登録した患者はMASTER KEYプロジェクトにも登録することで、希少がん患者の治療開発にも役立てるという。
FGFR遺伝子異常とは
維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)は細胞膜に存在するタンパク。遺伝子異常の種類には融合、変異、増幅などがあり、遺伝子異常により機能が活性化されると、がん細胞の増殖、生存、遊走、腫瘍血管新生、薬剤耐性などに結び付くと言われている。肺がん、乳がん、子宮体がん、胃がん、膀胱がん、胆管がん、脳腫瘍などさまざまながん腫で報告されている。
参照元:
国立がん研究センター プレスリリース