・治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者が対象の第2相試験
・ツカチニブ+トラスツズマブ+カペシタビン併用療法の有効性・安全性をトラスツズマブ+カペシタビン併用療法と比較検証
・無増悪生存期間は7.6ヶ月であり、トラスツズマブ+カペシタビン(4.9ヶ月)に対して統計学的有意に改善した
2021年12月22日、医学誌『Annals of Oncology』にて治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者に対する経口HER2チロシンキナーゼ選択的阻害薬であるツカチニブ+トラスツズマブ+カペシタビン併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のHER2CLIMB試験(NCT02614794)の最終解析の結果がUniversity of MilanoのG. Curigliano氏らにより公表された。
HER2CLIMB試験とは、抗HER2抗体(トラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン)の治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者(N=612人)に対して21日を1サイクルとして1日2回ツカチニブ300mg+1日目にトラスツズマブ8mg/kg+1~14日目に1日2回カペシタビン1000mg/m2併用療法を実施する群、または21日を1サイクルとしてプラセボ+1日目にトラスツズマブ8mg/kg+1~14日目に1日2回カペシタビン1000mg/m2併用療法を実施する群に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、脳転移のある患者における無増悪生存期間(PFS)などを比較検証した第2相試験である。
本試験のフォローアップ期間中央値29.6ヶ月時点において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はツカチニブ+トラスツズマブ+カペシタビン併用群の7.6ヶ月に対してプラセボ+トラスツズマブ+カペシタビン併用群で4.9ヶ月と、ツカチニブ+トラスツズマブ+カペシタビン併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを43%(HR:0.57、95%信頼区間:0.47-0.70、P<0.00001)減少した。また、1年無増悪生存率(PFS)はツカチニブ+トラスツズマブ+カペシタビン併用群の29%に対してプラセボ+トラスツズマブ+カペシタビン併用群で14%を示した。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はツカチニブ+トラスツズマブ+カペシタビン併用群の24.7ヶ月に対してプラセボ+トラスツズマブ+カペシタビン併用群で19.2ヶ月と、ツカチニブ+トラスツズマブ+カペシタビン併用群で死亡(OS)のリスクを27%(HR:0.73、95%信頼区間:0.59-0.90、P=0.004)減少した。また、2年全生存率(OS)はツカチニブ+トラスツズマブ+カペシタビン併用群の51%に対してプラセボ+トラスツズマブ+カペシタビン併用群で40%を示した。
以上のHER2CLIMB試験の最終解析の結果よりG. Curigliano氏ら「治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者に対する経口HER2チロシンキナーゼ選択的阻害薬ツカチニブ+トラスツズマブ+カペシタビン併用療法は、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)において臨床的意義のある改善効果を示しました」と結論を述べている。