・転移性非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
・ファーストライン治療としてのスゲマリマブ+プラチナ系抗がん剤の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間中央値はスゲマリマブ+プラチナ系抗がん剤併用群の9.0ヶ月であり、
プラセボ+プラチナ系抗がん剤併用群(4.9ヶ月)に対して統計学的有意に延長した
2022年1月14日、医学誌『The Lancet Oncology』にて転移性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-L1モノクローナル抗体スゲマリマブ+プラチナ系抗がん剤併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のGEMSTONE-302試験(NCT03789604)の結果がShanghai Pulmonary HospitalのCaicun Zhou氏らにより公表された。
GEMSTONE-302試験は、転移性非小細胞肺がん患者(N=479人)に対するファーストライン治療として3週を1サイクルとしてスゲマリマブ1200mg+プラチナ系抗がん剤を最大4サイクル投与し、維持療法としてスゲマリマブ500mg/m2単剤療法を投与する群(N=320人)、もしくは3週を1サイクルとしてプラセボ+プラチナ系抗がん剤を最大4サイクル投与し、維持療法としてプラセボ±ペメトレキセド併用療法を実施する群(N=159人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として主治医評価の無増悪生存期間(PFS)、安全性などを比較検証したランダム化二重盲検の第3相試験である。
投与した化学療法の内容は、扁平上皮がんのファーストライン治療ではカルボプラチン+パクリタキセル175mg/m2、維持療法では使用せず、非扁平上皮がんのファーストライン治療ではカルボプラチン+ペメトレキセド500mg/m2、維持療法ではペメトレキセドを用いた。
本試験が開始された背景として、転移性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療として抗PD-L1モノクローナル抗体+プラチナ系抗がん剤の併用療法は良好な抗腫瘍効果を示すことが確認されている。しかしながら、扁平上皮がん、非扁平上皮がんそれぞれのファーストライン治療として抗PD-L1モノクローナル抗体+プラチナ系抗がん剤の明確なエビデンスは確立されていない。以上の背景より、転移性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-L1モノクローナル抗体スゲマリマブ+プラチナ系抗がん剤併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値8.6ヶ月時点における中間解析の結果は下記の通りである。主要評価項目である主治医評価の無増悪生存期間(PFS)中央値は、スゲマリマブ+プラチナ系抗がん剤併用群の7.8ヶ月(95%信頼区間:6.9-9.0ヶ月)に対してプラセボ+プラチナ系抗がん剤併用群の4.9ヶ月(95%信頼区間:4.7-5.0ヶ月)と、プラセボ+プラチナ系抗がん剤併用群に比べてスゲマリマブ+プラチナ系抗がん剤併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを50%(HR:0.50、95%信頼区間:0.39-0.64、P<0.0001)統計学的有意に改善した。
また、フォローアップ期間中央値17.8ヶ月時点における最終解析の結果は下記の通りである。無増悪生存期間(PFS)中央値は、スゲマリマブ+プラチナ系抗がん剤併用群の9.0ヶ月(95%信頼区間:7.4-10.8ヶ月)に対してプラセボ+プラチナ系抗がん剤併用群で4.9ヶ月(95%信頼区間:4.8-5.1ヶ月)と、プラセボ+プラチナ系抗がん剤併用群に比べてスゲマリマブ+プラチナ系抗がん剤併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを52%(HR:0.48、95%信頼区間:0.39-0.60、P<0.0001)統計学的有意に改善した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3もしくは4の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。好中球数減少はスゲマリマブ+プラチナ系抗がん剤併用群の33%(N=104/320人)に対してプラセボ+プラチナ系抗がん剤併用群で33%(N=52/159人)、白血球数減少は14%(N=45人)に対して17%(N=27人)、貧血は13%(N=43人)に対して11%(N=18人)、血小板数減少は10%(N=33人)に対して9%(N=15人)、好中球減少症は4%(N=12人)に対して4%(N=7人)をそれぞれ示した。
全グレードの治療関連の重篤な有害事象(SAE)発症率は、スゲマリマブ+プラチナ系抗がん剤併用群の23%(N=73人)に対してプラセボ+プラチナ系抗がん剤併用群で20%(N=31人)。全グレードの治療関連死亡率は、スゲマリマブ+プラチナ系抗がん剤併用群の3%(N=10人)に対してプラセボ+プラチナ系抗がん剤併用群で1%(N=2人)を示した。
以上のGEMSTONE-302試験の結果よりCaicun Zhou氏らは「転移性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-L1モノクローナル抗体スゲマリマブ+プラチナ系抗がん剤併用療法は、プラセボ+プラチナ系抗がん剤併用群に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。以上の臨床試験の結果より、本治療の新しい治療選択肢になり得る可能性が示唆されました」と結論を述べている。