3月28日、中外製薬株式会社は、パージェタ(一般名:ペルツズマブ、以下パージェタ)とハーセプチン(一般名:トラスツズマブ、以下ハーセプチン)の併用療法について、がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行/再発の結腸・直腸がんを適応症として、厚生労働省より承認を取得したと発表した。
HER2陽性の大腸がんは、大腸がん全体の1~5%を占める希少なサブタイプである。パージェタとハーセプチンはともに抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であり、両剤を併用することで、HERシグナル伝達系を広範囲に遮断して、抗悪性腫瘍効果をもたらす。
今回の承認は国内第2相医師主導治験(TRIUMPH試験)の結果に基づくもの。TRIUMPH試験は、化学療法歴のあるHER2陽性の治癒切除不能な進行/再発の結腸・直腸がん患者(N=30人)を対象にパージェタとハーセプチン併用療法の有効性と安全性を検証した。その結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は、腫瘍組織でHER2陽性が確認された患者において29.6%、血液検査にてHER2陽性ならびにRAS野生型が確認された患者において28.0%であった。
今回の承認により、大腸がんの領域においてHER2をターゲットとした治療薬による新たな個別化医療のアプローチが可能となった。中外製薬代表取締役社長CEOの奥田修氏は、プレスリリースにて「大腸がんには多くの有効な治療薬が存在しますが、近年の遺伝子研究により、標準治療では十分な効果が得られていない患者さんの存在が明らかになってきました。こうした患者さんに対し、パージェタとハーセプチンによる併用療法を、個別化医療に基づく新たな治療選択肢として提供できることを大変嬉しく思います」と述べている。
なお、HER2陽性大腸がんにおけるパージェタならびにハーセプチンのコンパニオン診断薬として、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社の組織検査用キット「ベンタナultraViewパスウェーHER2(4B5)」およびアボットジャパン合同会社のHER-2遺伝子キット「パスビジョンHER-2 DNAプローブキット」が承認されている。
パージェタ(一般名:ペルツズマブ)とは
パージェタは、腫瘍細胞の増殖に関与するヒト上⽪増殖因⼦受容体2型(HER2)を標的とするヒト化モノクローナル抗体。2013年にHER2陽性の手術不能または再発乳がんを対象に発売され、その後追加承認により、現在はHER2陽性の乳がんが適応症となっている。
ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)とは
ハーセプチンは、腫瘍細胞の増殖に関与するヒト上⽪増殖因⼦受容体2型(HER2)を標的とするヒト化モノクローナル抗体。2001年にHER2過剰発現が確認された転移性乳がんを対象に発売されて以降、HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進⾏/再発の胃がん、HER2陽性の根治切除不能な進行/再発の唾液腺がんへの適応を取得している。
参照元:
中外製薬株式会社 ニュースリリース