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リキッドバイオプシー開発企業は大腸がんに狙いを定める

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

 

米Natera社と米Guardant Health社は適応症別血液検査で巻き返しを図ろうとしているが、現時点では、米Exact Sciences社は同社の糞便検査であるCologuard検査に賭けている。

2020年、世界初となるがん種横断的ながん血液検査が米国食品医薬品局(FDA)に承認された。現在、複数のリキッドバイオプシー企業が大腸がんに特化した新たな軸、すなわち再発がんの検診と検出に目を向けており、大腸がん検査は間もなく大きな変革を遂げる可能性がある。

Natera社の最近のデータでは、同社の血液検査「Signatera」が、術後補助化学療法が有効な大腸がん患者を予測できることが初めて示された。また、Guardant Health社は同社の大腸がん診断「Lunar-2」の大規模ピボタル試験の結果を間もなく発表する予定であり、現在非侵襲的診断の分野を先導しているExact Sciences社を脅かす可能性がある。

Natera社はいわゆる微小残存病変検出(循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いて腫瘍の外科的切除後の再発を検出すること)の分野における中心的企業の1つであり、米SVB Leerink銀行のアナリストによれば、この市場は200億ドルと推算されている。米国臨床腫瘍学会-消化器がんシンポジウム(Asco-GI)で先月(1月)発表されたCIRCULATE-JapanプロジェクトのGalaxy試験のデータにより、現在さらにこの市場規模は拡大している。

だから何なのか?

Natera社の副社長であるAlexey Aleshin氏によると、Signatera検査やそれと同様の検査は、がんが再発するかしないかを効率的に区別できることが示されているという。「しかし、ここ数年残る疑問は、だから何なのかということだ。本当にctDNAの陽性・陰性に基づいて治療に介入し、患者の予後を改善することができるのか?」とAleshin氏は付け加えている。

「Galaxy試験のデータは、その答えがイエスであることを示している」とAleshin氏は言う。Signatera検査の結果陽性となったステージIIIのがん患者のうち、術後補助化学療法を受けなかった患者は治療を受けた患者に比べて再発のリスクが8倍以上高く、有意差が得られている。これはSignatera検査に基づいた術後治療が患者の予後を改善しうることを示した最初の結果であり、決定的な結果である。

また、Signatera検査はどの患者に化学療法が有効であるか追跡することもできる。化学療法によりctDNAが除去された患者(Signatera検査の結果ctDNA陽性から陰性になった患者)は、ctDNA陽性のままであった患者に比べて有意に予後良好であり、6か月無病生存率(DFS)はそれぞれ100%と58%であった。

実際、ctDNA陽性から陰性になった患者は、もともとctDNA陰性であった患者と同程度にまで予後が改善している。

Aleshin氏は、これらのデータがSignatera検査への関心を高めることを期待していると述べる一方、市場にとってどのような意味を持つかについては明言を避けた。

血液検査と大腸がん

大腸がんでは、再発ではなく検診の観点からも開発競争が迫っている。今年の夏には、Guardant Health社のLunar-2リキッドバイオプシーを用いたピボタル試験であるECLIPSE試験(13,000人の患者を対象とした大規模試験)の結果が発表される予定である。

大腸がん検診の代表は大腸内視鏡検査であるが、処置が侵襲的かつ不快であるため患者コンプライアンスは低い。非侵襲的な検診には主にExact Sciences社の糞便検査「Cologuard」があり、2014年の発売以来、驚異的な成功を収めている。もしLunar-2検査がECLIPSE試験の結果を強みに上市され(2022年下半期に申請予定)、とりわけ人々が糞便サンプルよりも血液サンプルを提供する方がよいと判断すれば、Cologuard検査の売上に割り込むことができるだろう。

もちろん、Exact Sciences社は独自のリキッドバイオプシーを保有している(これは2020年に米Thrive Earlier Detection社を買収したことで獲得したがん種横断的な検査である)。Guardant Health社やその他のリキッドバイオプシー開発企業に対抗するために、Exact Sciences社がCologuard検査を差し置き、その労力を血液検査にまわそうとしていると推察するのは論理的であろう。だが、それは間違いでもある。

リキッドバイオプシーの代わりに、Exact Sciences社は有効性を向上させた第2世代の糞便検査である「Cologuard 2.0」を売り出している。Asco-GIで発表された小規模臨床試験のデータによると、Cologuard 2.0検査は予め設定された92%の特異度で、大腸がんを95%、高度異形成を83%、全ての進行前がん病変を57%の感度で検出することが示されている。

Exact Sciences社の医務部長であるPaul Limburg博士は、早期がんだけでなく前がん病変も検出できる点において、Cologuard 2.0検査はLunar-2検査に比べて優位性があると考えている。

「生物学的に考えると、前がん病変には、血中へバイオマーカーを排出するがんと同様の能力はないかもしれない」とLimburg博士は言う。「糞便検査で前がん病変を検出することは生物学的にも技術的にも実現可能であるが、リキッドバイオプシーはこれには及ばないだろう」とLimburg博士は述べている。

Exact Sciences社の次のステップは、Cologuard 2.0検査のピボタル試験となるBlue-C試験である。Limburg博士は、「Blue-C試験では、第1世代のCologuard検査がピボタル試験で示した実績、すなわち92%の感度と87%の特異性を超えなければならないだろう」と述べている。Blue-C試験の結果は2024年に発表される予定である。

一方、並行する臨床試験からは、Exact Sciences社が大腸がんにおける血液検査にも選択肢を広げていることが示唆される。Blue-C試験に登録された患者は、糞便サンプルだけでなく血液サンプルも提供することが可能である。「血液検査の開発を念頭に置き、こうした検体を血中バイオマーカーのさらなる探索や既存の他検査との性能比較のために利用する予定だ」とLimburg博士は言う。

しかしながら、これが大腸がん検診のためのリキッドバイオプシー承認申請の根拠になるとは考えにくく、Lunar-2検査に対抗する血液検査がすぐに登場する訳ではない。Exact Sciences社は、まだしばらくの間は第1世代のCologuard検査に賭けることになるだろう。

■出典
Liquid biopsy developers take aim at colorectal cancer

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