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治療歴のあるBRAF V600遺伝子変異を有する転移性大腸がん患者に対するアービタックス+エンコラフェニブ+ビニメチニブ、全生存期間、客観的奏効率を有意に改善

この記事の3つのポイント
・治療歴のあるBRAF V600遺伝子変異を有する転移性大腸がん患者が対象の第3相試験
・アービタックス+エンコラフェニブ+ビニメチニブ併用療法有効性を比較検証
標準療法に比べ、トリプレット療法群で死亡のリスクを48%統計学的有意に改善

2019年10月24日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて治療歴のあるBRAF V600遺伝子変異を有する転移性大腸がん患者に対する抗EGFR抗体薬であるセツキシマブ(商品名アービタックス;以下アービタックス)+BRAF阻害薬であるエンコラフェニブ+MEK阻害薬であるビニメチニブ併用療法の有効性を比較検証した第3相のBEACON CRC試験(NCT02928224)の結果がMD Anderson Cancer CenterのScott Kopetz氏らにより公表された。

BEACON CRC試験とは、1もしくは2レジメンの治療歴のあるBRAF V600遺伝子変異を有する転移性大腸がん患者(N=665人)に対して28日を1サイクルとして1週間に1回アービタックス250mg/m2(初回のみ400 mg/m2)+1日1回エンコラフェニブ300mg+1日2回ビニメチニブ45mg併用療法を投与する群(トリプレット療法)、28日を1サイクルとして1週間に1回アービタックス250mg/m2(初回のみ400 mg/m2)+1日1回エンコラフェニブ300mg併用療法を投与する群(タブレット療法)、または主治医選択の標準療法(アービタックス+FOLFIRI併用療法/アービタックス+イリノテカン併用療法)を投与する3群に1対1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として標準療法に比べたトリプレット療法の全生存期間OS)、客観的奏効率ORR)、副次評価項目として標準療法に比べたタブレット療法の全生存期間(OS)などを比較検証したオープンラベルの第3相試験である。

本試験が開始された背景として、大腸がん患者の約10%(5%~21%)はBRAF V600遺伝子変異を有している。BRAF V600遺伝子変異を有する転移性大腸がん患者の予後は不良であり、初回治療後に病勢進行した患者の全生存期間(OS)中央値はわずか4~6ヶ月程度である。BRAF V600遺伝子変異に対するBRAF阻害薬の治療は有効性を示すが、BRAFのシグナル伝達経路としてEGFRも関連性があるため、単剤では効果が不十分である。以上の背景より、抗EGFR抗体薬、BRAF阻害薬を併用した治療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。

年齢中央値
トリプレット療法群=62歳(26-85歳)
タブレット療法群=61歳(30-91歳)
標準治療群=60歳(27-91歳)

ECOG Performance
トリプレット療法群=スコア0 52%、スコア1 48%
タブレット療法群=スコア0 51%、スコア1 47%
標準治療群=スコア0 49%、スコア1 51%

性別
トリプレット療法群=男性 47%、女性 53%
タブレット療法群=男性 51%、女性 47%
標準治療群=男性 49%、女性 51%

腫瘍部位
トリプレット療法群=左側35%、右側56%
タブレット療法群=左側38%、右側50%
標準治療群=左側49%、右側51%

前治療歴
トリプレット療法群=1レジメン 65%、2レジメン 35%
タブレット療法群=1レジメン 66%、2レジメン 34%
標準治療群=1レジメン 66%、2レジメン 34%

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はトリプレット療法群9.0ヶ月(95%信頼区間:8.0-11.4ヶ月)に対して標準療法群5.4ヶ月(95%信頼区間:4.8-6.6ヶ月)と、トリプレット療法群で死亡(OS)のリスクを48%統計学的有意に改善した(HR:0.52,95%信頼区間:0.39-0.70,P<0.001)。また、もう1つの主要評価項目である客観的奏効率(ORR)はトリプレット療法群26%(95%信頼区間:18%-35%)に対して標準療法群2%(95%信頼区間:0%-7%)と、トリプレット療法群で客観的奏効率(ORR)を統計学的有意に改善した(P<0.001)。

副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はトリプレット療法群8.4ヶ月(95%信頼区間:7.5-111.0ヶ月)に対して標準療法群5.4ヶ月(95%信頼区間:4.8-6.6ヶ月)と、トリプレット療法群で死亡(OS)のリスクを40%統計学的有意に改善した(HR:0.60,95%信頼区間:0.45-0.79,P<0.001)。

一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はトリプレット療法群58%、タブレット療法群50%、標準療法群61%を示した。トリプレット療法群で最も多くの患者で確認された治療関連有害事象(TRAE)は下痢、吐き気、嘔吐、ざ瘡様皮膚炎であった。

以上のBEACON CRC試験の結果よりScott Kopetz氏らは以下のように結論を述べている。”BRAF V600遺伝子変異を有する転移性大腸がん患者に対する抗EGFR抗体薬、BRAF阻害薬、MEK阻害薬のトリプレット併用療法は、現在の標準治療に比べて全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)を統計学的有意に改善しました。”

Encorafenib, Binimetinib, and Cetuximab in BRAF V600E–Mutated Colorectal Cancer(N Engl J Med. 2019 Oct 24;381(17):1632-1643. doi: 10.1056/NEJMoa1908075. )

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