・進行性非小細胞肺がん患者が対象の第2/3相試験の長期フォローアップの結果
・抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法の有効性・安全性をドセタキセル群と比較検証
・3年を超える長期の治療期間でも全生存期間を統計学有意に改善
2020年2月20日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて進行性非小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2/3相のKEYNOTE-010試験(NCT01905657)の長期フォローアップの結果がYale School of MedicineのRoy S. Herbst氏らにより公表された。
KEYNOTE-010試験とは、進行性非小細胞肺がん患者に対して3週を1サイクルとしてキイトルーダ2mg/kgもしくは10mg/kg単剤療法を投与する群、または3週を1サイクルとしてドセタキセル75mg/m2単剤療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)を比較検証した第2/3相試験である。
本試験の長期フォローアップの結果が公表された背景として、既に公表されているKEYNOTE-010試験の解析結果ではPD-L1陽性(TPS≥50%)、PD-L1陽性(TPS≥1%)患者群におけるキイトルーダ単剤療法はドセタキセル単剤療法に比べて全生存期間(OS)を統計学的有意に改善することが示されている。以上の背景より、2年または35サイクル以上の治療成績の長期フォローアップの結果が公表された。
本試験に登録された患者のうち、キイトルーダ単剤療法で2年以上の治療期間に達した79人の患者背景は下記の通りである。年齢は65歳未満69.6%、65歳以上30.4%。性別は男性67.1%。人種は白人70.9%、アジア人21.5%、黒人6.3%。ECOG Performance Statusはスコア0が31.6%、スコア1が68.4%。
がんの組織学分類は非扁平上皮がん67.1%、扁平上皮がん26.6%、不明5.1%。脳転移のある患者15.2%。PD-L1ステータスは50%以上73.4%、1-49%が26.6%。EGFR遺伝子ステータスは野生型86.1%、ALK融合遺伝子ステータスは野生型88.6%。前治療歴は1レジメンが79.7%、2レジメン以上が19.0%。
本試験のフォローアップ期間中央値42.6ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)はPD-L1陽性群(TPS≥50%)でドセタキセル群に比べてキイトルーダ群で47%リスクが減少(HR:0.53,95%信頼区間:0.42-0.66,P<0.00001)、PD-L1陽性群(TPS≥1%)でドセタキセル群に比べてキイトルーダ群で31%リスクが減少(HR:0.69,95%信頼区間:0.60-0.80,P<0.00001)した。
また、36ヶ月全生存率(OS)はPD-L1陽性群(TPS≥50%)でキイトルーダ群34.5%に対してドセタキセル群12.7%、PD-L1陽性群(TPS≥1%)でキイトルーダ群22.9%に対してドセタキセル群11.0%を示した。
一方の安全性として、キイトルーダ単剤療法で2年以上の治療期間に達した79人の治療関連有害事象(TRAE)発症率は全グレードで83.5%、グレード3-5で17.7%、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率は1.3%を示した。
20%以上の患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は掻痒症27.8%、皮膚障害26.6%、甲状腺機能低下症22.8%。20%以上の患者で確認された全グレードの免疫関連治療関連有害事象(irTRAE)は甲状腺機能低下症25.3%。
以上のKEYNOTE-010試験の長期フォローアップの結果よりRoy S. Herbst氏らは以下のように結論を述べている。”進行性非小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は、ドセタキセル群に比べて3年を超える長期の治療期間であっても全生存期間(OS)を統計学有意に改善しました。”