・完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
・術後療法としてのタグリッソ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・プラセボ群と比較して、病勢進行または死亡のリスクを80%減少
2020年10月29日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対する術後療法としての第3世代不可逆的EGFR阻害薬であるタグリッソ(一般名:オシメルチニブ、以下タグリッソ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のADAURA試験(NCT02511106)の結果がGuangdong Lung Cancer InstituteのYi-Long Wu氏らにより公表された。
ADAURA試験とは、完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対する術後療法として1日1回タグリッソ80mg単剤療法を投与する群(N=339人)、またはプラセボ単剤療法を投与する群(N=343人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無病生存期間(DFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、安全性などを比較検証した無作為化二重盲検プラセボ対照国際共同第3相試験である。
第3世代不可逆的EGFR阻害薬であるタグリッソは未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの標準療法である。しかしながら、完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対する術後療法としてのタグリッソの有用性は臨床試験で検証されていない。以上の背景より本試験が開始された。
本試験の結果、ステージII/III群における主要評価項目である24ヵ月無病生存率(DFS)はタグリッソ単剤群90%(95%信頼区間:84%~93%)に対してプラセボ群44%(95%信頼区間:37%~51%)、タグリッソ単剤群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを83%(HR:0.17、99.06%信頼区間:0.11~0.26、P<0.001)減少した。
また、全患者群(N=682人)における主要評価項目である24ヵ月無病生存率(DFS)はタグリッソ単剤群89%(95%信頼区間:85%~92%)に対してプラセボ群52%(95%信頼区間:46%~58%)、タグリッソ単剤群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを80%(HR:0.20、99.12%信頼区間:0.14-0.30、P<0.001)減少した。
副次評価項目である全生存期間(OS)は、現時点でデータは未成熟であるが、死亡のイベントがタグリッソ単剤群で9件、プラセボ群で20件発生した。一方の安全性として、既存の臨床試験で確認されている安全性プロファイルと一致しており、本試験で新たに確認された有害事象(AE)はなかった。
以上のADAURA試験の結果よりYi-Long Wu氏らは「完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対する術後療法としての第3世代不可逆的EGFR阻害薬タグリッソ単剤療法は、プラセボ療法に比べて無病生存期間(DFS)を統計学有意に改善しました」と結論を述べている。