・進展型小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
・1stライン治療としてのイミフィンジ±トレメリムマブ+プラチナ製剤+エトポシド併用療法の有効性・安全性を比較検証
・イミフィンジ+プラチナ製剤+エトポシド併用療法は全生存期間の持続的な改善示すも、トレメリムマブの上乗せ効果は示されず
2020年12月4日、医学誌『The Lancet Oncology』にて進展型小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としてのプラチナ系抗がん剤+エトポシド±抗PD-L1抗体薬であるイミフィンジ(一般名:デュルバルマブ、以下イミフィンジ)±抗CTLA-4抗体薬であるトレメリムマブ併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のCASPIAN試験(NCT03043872)のアップデート解析の結果がDavid Geffen School of Medicine at University of California Los AngelesのJonathan W Goldman氏らにより公表された。
CASPIAN試験とは、進展型小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療として21日を1サイクルとして1日目に主治医選択のプラチナ系抗がん剤(シスプラチ75–80mg/m2/カルボプラチンcurve5–6mg/mL/min)+1~3日目にエトポシド80–100mg/m2+1日目にイミフィンジ1500mg+1日目にトレメリムマブ75mg併用療法を投与する群、または主治医選択のプラチナ系抗がん剤(シスプラチン/カルボプラチン)+エトポシド+イミフィンジ併用療法を投与する群、主治医選択のプラチナ系抗がん剤(シスプラチン/カルボプラチン)+エトポシド併用療法を投与する群に1対1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)などを比較検証した二重盲検ランダム化の第3相試験である。
本試験が開始された背景として、CASPIAN試験における前回の解析では進展型小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としてのイミフィンジ+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン併用療法は、シスプラチン/カルボプラチン+エトポシド併用療法に比べて全生存期間(OS)を改善することが示されている。以上の背景より、進展型小細胞肺がん患者に対するイミフィンジ+エトポシド+トレメリムマブ併用療法群の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値25.1ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はシスプラチン/カルボプラチン+エトポシド+イミフィンジ+トレメリムマブ併用群の10.4ヶ月(95%信頼区間:9.6-12.0ヶ月)に対してシスプラチン/カルボプラチン+エトポシド併用群は10.5ヶ月(95%信頼区間:9.3-11.2ヶ月)であり、シスプラチン/カルボプラチン+エトポシド+イミフィンジ+トレメリムマブ併用群が死亡(OS)のリスクを18%減少(HR:0.82、95%信頼区間:0.68-1.00、P=0.045)するも統計学的有意な改善は確認されなかった。
また、シスプラチン/カルボプラチン+エトポシド+イミフィンジ併用群の全生存期間(OS)中央値は12.9ヶ月(95%信頼区間:11.3-14.7ヶ月)で、シスプラチン/カルボプラチン+エトポシド併用群に比べて死亡(OS)のリスクを25%減少(HR:0.75、95%信頼区間:0.62-0.91、P=0.0032)した。
安全性としては、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は下記の通りである。好中球減少症はシスプラチン/カルボプラチン+エトポシド+イミフィンジ+トレメリムマブ併用群で32%、イミフィンジ+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン併用群で24%、シスプラチン/カルボプラチン+エトポシド併用群で33%、貧血はそれぞれ13%、9%、18%を示した。また。重篤な有害事象(AE)発症率はそれぞれ45%、32%、36%を示した。
以上のCASPIAN試験のアップデート解析の結果よりJonathan W Goldman氏らは「進展型小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としてシスプラチン/カルボプラチン+エトポシド+イミフィンジ併用療法は全生存期間(OS)を改善しましたが、本治療に対して抗CTLA-4抗体薬トレメリムマブの上乗せ効果は確認されませんでした。本試験の結果より、シスプラチン/カルボプラチン+エトポシド+イミフィンジ併用療法は進展型小細胞肺がんの新しい標準治療になり得るでしょう」と結論を述べている。