5月19日、中外製薬株式会社は抗悪性腫瘍剤/微小管阻害薬結合抗CD79bモノクローナル抗体であるポライビー点滴静注用30 mg/140mg(一般名:ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)、以下ポライビー)について、再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を適応症として販売を開始したと発表した。
DLBCLは非ホジキンリンパ腫の組織型サブタイプのひとつで、非ホジキンリンパ腫の中で患者数が最も多い中悪性度の疾患である。未治療のDLBCLには、リツキシマブ+化学療法が標準治療とされているが、約40%が再発し、十分な治療効果が得られていない。また、再発/難治性DLBCLに対する治療としては、適応となる患者では、自己造血幹細胞移植(ASCT)の実施が推奨されるが、約半数はASCT実施前の救援化学療法が奏効せず、ASCTを受けられない。さらに、ASCTが適応とならない患者に対する標準治療は確立されておらず、再発/難治性DLBCLに対するより有用性の高い新たな治療選択肢が求められている。
今回の承認は、再発/難治性DLBCLを対象に実施された海外第1b/2相多施設共同臨床試験(GO29365)と国内第2相多施設共同単群臨床試験(JO40762/P-DRIVE試験)などの結果に基づくもの。GO29365試験は再発/難治性の濾胞性リンパ腫もしくはDLBCL患者を対象にポライビー+BR療法またはBG療法(ベンダムスチン塩酸塩およびオビヌツズマブ)の併用療法の有用性を検証した臨床試験であり、第2相パートではDLBCL患者(N=80人)を対象にポライビー+BR療法の有用性と安全性をBR療法と比較検証した。JO40762(P-DRIVE)試験は、再発/難治性DLBCL患者(N=35人)にポライビー+BR療法を投与し完全奏効率(CRR)を主要評価項目とした第2相試験である。
同社代表取締役社長CEOの奥田修氏は「ポライビーが再発又は難治性のDLBCLの新しい治療薬として発売できることを大変嬉しく思います」と述べるとともに、「DLBCLは、再発または難治性となった場合の治療選択肢が限られているアンメットメディカルニーズが高い疾患です。ファーストインクラスの抗CD79b抗体薬物複合体である本剤により患者さんのより良い治療の実現に貢献できるよう、適正使用に向けた情報提供を行ってまいります」と語っている。
なお、同剤については未治療のDLBCLを対象に、R-CHP(リツキシマブ+シクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾロン)との併用療法の有効性と安全性をR-CHOP(リツキシマブ+シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)療法と比較する国際共同第3相GO39942/POLARIX試験が進行中である。
ポライビーとは
ポライビー(一般名:ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え))は、ヒト化抗CD79bモノクローナル抗体とチューブリン重合阻害剤をリンカーで結合させた、ファーストインクラスの抗CD79b抗体薬物複合体(ADC)。CD79bタンパクは、多くのB細胞で特異的に発現しており、ポライビーは正常細胞への影響を抑えつつCD79bに結合することで、化学療法剤を送達しB細胞を破壊すると考えられている。CD79bは新たな治療法を開発する上で有望なターゲットになり得る。
救援化学療法とは
主に造血器腫瘍において、治療の効果が得られない場合または再発・再燃した場合に用いる治療をさし、救援療法、サルベージ療法とも呼ばれる。がんの種類によって治療内容は異なるが、抗がん剤などの複数の薬剤を組み合わせた治療が多い。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)とは
非ホジキンリンパ腫の一種であり、月単位で進行する中悪性度の疾患。非ホジキンリンパ腫の中で患者数が一番多く、約2万3000人~3万2000人と推定されている。60代に好発する。
参照元:
中外製薬株式会社 プレスリリース