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サルコペニアを併発する進行性大腸がん患者に対するロンサーフ単剤療法、骨格筋量指数の低下が全生存期間に影響

この記事の3つのポイント
・サルコペニアを併発する進行性大腸がん患者が対象のレトロスペクティブ試験
・ロンサーフ単剤療法有効性安全性を検証
ベースライン時点でのサルコペニアは全生存期間11.2ヶ月で影響を与えないが、
 骨格筋量指数が5%以上の低下は死亡リスクを増加させた

2021年6月31日~7月3日に開催された欧州臨床腫瘍学会世界消化器癌会議(ESMO 23rd World Congress on Gastrointestinal Cancer)にてサルコペニアを併発する進行性大腸がん患者に対するトリフルリジン(FTD)/チピラシル塩酸塩(TPI)(商品名:ロンサーフ、以下ロンサーフ)単剤療法の有効性、安全性を検証した試験の結果がLower Silesian Oncology CentreのM. Malik氏らにより公表された。

本試験は、サルコペニアを併発する進行性大腸がん患者(N=78人)に対してロンサーフ単剤を投与し、評価項目として骨格筋量指数(Skeletal Muscle mass Index)の低下、ベースライン時点のサルコペニア、骨格筋量指数(SMI)の5%低下が無増悪生存期間PFS)、全生存期間(OS)へ与える影響を検証した試験である。なお、骨格筋量指数(SMI)は第3腰椎の高さにおける骨格筋面積に基づいて評価される。

本試験に登録された78人の患者のうち、骨格筋量指数(SMI)中央値は47.89cm2/m2(CT評価1:ロンサーフ単剤療法開始時)、46.43cm2/m2(CT評価2:初回の再評価時)。ベースライン時点でのサルコペニア発症率は44%。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。

無増悪生存期間(PFS)中央値は3.6ヶ月(95%信頼区間:3.03~5.1ヶ月)を示した。ベースライン時点のサルコペニア、骨格筋量指数(SMI)の5%低下は無増悪生存期間(PFS)に統計学有意な影響は与えないことが確認された(CT評価1でP=0.5526、CT評価2でP=0.1092)。

また、全生存期間(OS)中央値は11.2ヶ月(95%信頼区間:8.65~25.20ヶ月)を示した。ベースライン時点のサルコペニアは全生存期間(OS)に統計学有意な影響は与えないことが確認された(P=0.3963)。一方で、骨格筋量指数(SMI)の5%以上の低下は死亡(OS)のリスクを増加させ、統計学有意な影響を与えることが確認された(HR:2.03、P=0.0039)。ベースライン時点で腫瘍マーカーCEAレベル(≦5ng/L)はロンサーフの奏効(RR)を予見する重要なファクターになり得る可能性が示唆された(P=0.0001)。

以上の試験の結果よりM. Malik氏らは「サルコペニアは進行性大腸がんで併発する典型的な疾患です。サルコペニアを併発する進行性大腸がんの標準治療であるロンサーフの効果は無増悪生存期間(PFS)では影響を与えないが、全生存期間(OS)には影響を与えることが確認されました。治療開始前のCEAの値はロンサーフの効果を予見する重要な因子であると思われるが、さらなる研究が必要です」と結論を述べている。

Sarcopenia in advanced colorectal cancer patients treated with trifluridine/tipiracil(ESMO 23rd World Congress on Gastrointestinal Cancer,Abstract P-152)

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