・白金製剤を用いた同時化学放射線療法後に増悪が認められなかった切除不能局所進行性非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
・イミフィンジ単剤療法の有効性・安全性をプラセボと比較検証
・5年フォローアップ解析での全生存期間47.5ヶ月、無増悪生存期間16.9ヶ月であり、いずれもプラセボと比較して有用性を示した
2021年2月2日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて白金製剤を用いた同時化学放射線療法後に増悪が認められなかった切除不能局所進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に抗PD-L1抗体薬であるイミフィンジ(一般名:デュルバルマブ、以下イミフィンジ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第3相のPACIFIC試験(NCT02125461)の5年フォローアップ解析の結果がSarah Cannon Research Institute/Tennessee OncologyのDavid R. Spigel氏らにより公表された。
PACIFIC試験とは、白金製剤を用いた同時化学放射線療法後に増悪が認められなかった切除不能局所進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者(N=713人)に対して2週を1サイクルとしてイミフィンジ10mg/kg単剤を投与する群(N=476人)、またはプラセボを投与する群(N=237人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)などを比較検証した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設国際共同試験である。
本試験の5年フォローアップ解析が実施された背景として、白金製剤を用いた同時化学放射線療法後に増悪が認められなかった切除不能局所進行性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するコンソリデーション療法(強化療法)としての抗PD-L1抗体薬イミフィンジ単剤療法は、プラセボ療法に比べて全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)を改善し、忍容性も問題ないことが確認されている。以上の背景より、本治療の5年長期フォローアップ解析の結果が公表された。
本試験の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、イミフィンジ単剤群の47.5ヶ月に対してプラセボ群で29.1ヶ月と、イミフィンジ単剤群で死亡(OS)のリスクを28%減少(HR:0.72、95%信頼区間:0.59–0.89)した。5年全生存率(OS)は、イミフィンジ単剤群の42.9%(95%信頼区間:38.2-47.4%)に対してプラセボ群で33.4%(95%信頼区間:27.3-39.6%)を示した。
もう1つの主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は、イミフィンジ単剤群の16.9ヶ月に対してプラセボ群で5.6ヶ月と、イミフィンジ単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを45%減少(HR:0.55、95%信頼区間:0.45-0.68)した。5年無増悪生存率(PFS)は、イミフィンジ単剤群の33.1%(95%信頼区間:28.0-38.2%)に対してプラセボ群で19.0%(95%信頼区間:13.6-25.2%)を示した。
以上のPACIFIC試験の5年長期フォローアップ解析の結果よりDavid R. Spigel氏らは「白金製剤を用いた同時化学放射線療法後に増悪が認められなかった切除不能局所進行性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する抗PD-L1抗体薬イミフィンジ単剤療法は持続的で良好な抗腫瘍効果を示すことが確認されました。これは標準治療の新しい基準を確立しました」と結論を述べている。