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慢性リンパ性白血病とリヒター症候群 オプジーボ×イムブルビカ併用療法で13人中10人が奏効 ASH2016

再発、または難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)、あるいはCLLから急性転化したリヒター症候群(RT)患者において、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)とブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブ(商品名イムブルビカ)の併用療法で13人中10人が奏効し、RT患者では5人中3人が奏効、うち2人が完全奏効(CR)に達した。

2016年12月の米国血液学会(ASH)で、米国テキサス大学MD AndersonがんセンターのNitin Jain氏が研究者主導第2相試験(NCT02420912)の中間結果を発表した。

目次

慢性リンパ性白血病患者、またはその急性転化となるリヒター症候群を対象にオプジーボとイムブルビカを使用する臨床試験

この試験は、MD Andersonがんセンターで実施されている小規模な非無作為化非盲検試験で、中間解析までに13人が登録され、コホート1はイムブルビカの治療歴がない慢性リンパ性白血病患者5人、およびリヒター患者5人を対象とし、初回サイクルはオプジーボ単剤を投与し、2サイクル目からイムブルビカを併用した。コホート2はイムブルビカで少なくとも9カ月以上治療中の慢性リンパ性白血病患者3人を対象としてオプジーボを併用した。オプジーボは3mg/kgを2週ごとに静注し、イムブルビカは420mgを1日1回経口投与した。主要評価項目有効性で、特に完全奏効(CR)に着目した。副次評価項目安全性、生存率などであった。

その結果、全患者集団の年齢中央値は64歳、治療歴数の中央値は1療法で、およそ半数(46%)の患者は17番染色体短腕の欠失(17p del)、またはがん抑制遺伝子TP53の変異が認められ、58%の患者は免疫グロブリン重鎖(IGVH)遺伝子変異陰性であった。

慢性リンパ性白血病患者集団における奏効率は80%、リヒター症候群患者集団における奏効率は60%であった。本試験以前から13カ月から32カ月にわたりイムブルビカを服用していたコホート2の慢性リンパ性白血病患者3人では奏効は得られなかったが、オプジーボの併用によりいずれも病勢安定SD)が認められた。

免疫関連の有害事象は、グレード3以上は認められず、グレード2は間質性肺炎(1人)、および甲状腺炎(1人)であった。安全性に関わる理由で治療を中止した患者はなかった。

予後不良のリヒター症候群に対する注目すべき効果

RT患者5人のうち、2人に完全奏効(CR)、1人に部分奏効(PR)が得られたが、奏効した3人はいずれも、予後不良の病型とされるIGVH遺伝子変異陰性であった。やはり予後不良因子である12番染色体トリソミーは2人、17p delは1人に確認され、3人は予後不良因子を重複して持っていた。2017年12月の時点で2人の完全奏効はそれぞれ2カ月以上、8カ月以上維持し、1人の部分奏効は11カ月以上持続していた。

さらに完全奏効の2人は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に転化したリヒター症候群で特徴的な悪性の大細胞にプログラム細胞死受容体1(PD-1)が多く発現していた。PD-1はオプジーボが認識する標的分子である。骨髄検体を用い、がん細胞とT細胞のPD-1、またはリガンド(PD-L1、PD-L2)の発現をより詳細に解析したところ、慢性リンパ性白血病細胞とリヒター症候群細胞におけるPD-1の発現量の増加が認められ、PD-L1またはPD-L2の発現は10%未満であった。治療開始前、CD4エフェクターT細胞のPD-1発現も亢進していた。

「慢性リンパ性白血病における免疫調節不全は、T細胞による免疫チェックポイント受容体の過剰発現、あるいは慢性リンパ性白血病細胞上のそれぞれのリガンドの過剰発現につながっている可能性がある。これを仮説として、本試験では、免疫チェックポイントの阻害により免疫調節機能を是正するのに伴い、抗白血病効果が得られるかどうかを試みた」とJain氏。

本試験を開始する前のマウスを用いた前臨床試験で、PD-L1を阻害するのと並行してイムブルビカを投与した結果、相乗的な抗腫瘍効果が認められた。さらに、慢性リンパ性白血病細胞上のPD-1、PD-L1、およびPD-L2の発現亢進を示した研究結果が明らかになっていることから、これらの標的をブロックすることは、抗腫瘍免疫を担うT細胞の活性化を導き、免疫経路正常化を促進することが示唆されていた。こうした仮説を検証する大規模試験を実施する必要がある。

本試験は患者登録を継続で、新たにコホート3を追加した。コホート3では、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)標的抗体のイピリムマブ(商品名ヤーボイ)を組入れ、PD-1とCTLA4の免疫チェックポイントを2つと、BTKを含め3つの標的を狙った3剤併用療法を実施している。

慢性リンパ性白血病(CLL)が急速に進行してリヒター症候群(RT)に転化するのは、慢性リンパ性白血病患者のうち約5%から10%とされる。リヒター症候群に移行すると予後不良で有効な治療法がなく、主にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に進展することが多い。悪性度が高く、無増悪生存(PFS)期間中央値はおよそ6カ月、全生存期間OS)中央値は8カ月から10カ月と報告されている。

Nivolumab Combined with Ibrutinib for CLL and Richter Transformation: A Phase II Trial(ASH2016,Abstracr.59)

記事:川又 総江

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