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進行がん患者の不安や悩みを軽減する介入プログラムで成果 ASCO2017

進行がん患者が直面する精神的な脅威や苦悩に対し、医療者は何ができるか。カナダPrincess MargaretがんセンターのGary Rodin氏らは、進行がん患者の精神的負担を軽減する新しい精神療法的介入法「CALM(Cancer And Living Meaningfully)」を確立し、患者の抑うつ症状を軽減することに成功した。2017年6月2日から5日に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2017)のLate-Breaking-Abstract(LBA)枠で発表された(LBA10001)。

目次

余命12カ月から18カ月を見込む難治がん患者を対象に最長6カ月の精神的ケア

Rodin氏らは、2012年から2016年にかけて実施した第3相無作為化非盲検試験で、カナダの大都市圏にある包括的がんセンターから18歳以上の外来患者305例を登録した。がん種は様々で、ステージ3/4の肺がん、卵巣がん、ステージ4の乳がん、転移性消化器がん、悪性黒色腫、あるいは、すべての進行ステージにある膵がん、胆管がん、肝がんなどを適格とし、余命12カ月から18カ月と予測される患者を対象とした。151例をCALM群、154例を対照群(従来のケア[UC群])に割り付け、UCでは抑うつ症状スクリーニングとがん領域における標準的な心理的介入を施した。CALM群にもUCを並行して行った。主要評価項目は、介入開始後3カ月目における抑うつ症状で、健康調査票をもとに定量化した。

なお、対照のUC群の約3分の1の患者は、がん領域における一定の心理的ケアを受けていたが、理論的に、あるいはある程度確立されている精神療法的介入を受けていた患者は10%に満たなかった。

CALMは進行がん患者のために確立された個別対面の精神療法的介入で、患者のほか、患者の家族やパートナーも面談に参加し、3カ月から6カ月の期間に3回から6回にわたり、教育・訓練を受けたソーシャルワーカーや精神科医、心理学者、緩和ケア医などの専門家と45分から60分の面談を実施した。4つのドメインを明確にした面談で、他の介入法とは異なり、終末期に対する備えというよりむしろ、進行がんと向き合う患者に寄り添い、現実的で、経験的な不安や懸念に着目する。

CALMで重点を置く4つのドメインは次のとおりである。
(1) 症状コントロール、治療の意思決定、医療者との関係について
(2) 自己概念と人間関係の変化について
(3) 霊的あるいは宗教的な意味での福祉、生きがいや人生の目的に対する感覚について
(4) 将来の不安と希望、そして死の認識について

CALMが精神学的全般状態に好循環をもたらした

その結果、CALM群はUC群と比べ、3カ月後の抑うつ症状の重症度が有意に軽減し、6カ月後でも統計学的有意差が維持されていた。大うつ病性障害といった診断名がつくほどには深刻ではないが、少なくとも重症と判定される閾値には満たず、一定の抑うつ症状を有する患者で認められたCALMの成果はインパクトがあった。すなわち、抑うつ症状が臨床的意義のあるレベルで軽減した患者の割合は、3カ月後ではUC群が33%であったのに対し、CALM群では52%であった。6カ月後はCLAM群がさらに増加し、それぞれ35%、64%であった。

上記4つのドメインに照らして、CALM群では3カ月後、6カ月後のいずれにおいても全般的な成果が認められ、終末期を含む将来不安に対する認識がよい方向に向けられ、過度に怯えることなく、感情の表現やコントロールも良好になった。これらの改善は6カ月後にはさらに強固なものになり、がんを経験したことに対する認識を深めつつ、他者との関係作りに取り組み、医療者や家族とのコミュニケーションの仕方を模索し、自身の価値と信念を明確に捉える力がついたと判断することができた。

CALMはがん患者自身で精神的土台を固めるための時間と空間

Rodin氏は記者会見で、「CALMは進行がんを経験する患者に立ちはだかる恐怖や課題に取り組むための時間と空間を提供するもの。治療的な関わり合いの中で確実な土台となり、感情コントロールをサポートすることができる」とコメントした。

本試験の成果を受けて、CALMの精神療法的介入をより広く浸透させることに希望が持てた。次のステップでは、プログラムに携わる専門家訓練の最適なアプローチを探ること、成果を客観的に定量化する測定ツールを改良、洗練すること、そして、地域に関わらず様々な臨床現場でCALMを実行可能にすることなどを目指し、データを積み上げていく必要がある。

Psychological Intervention Relieves Distress in Patients With Advanced Cancer(ASCO News Release)

Managing cancer and living meaningfully (CALM): A randomized controlled trial of a psychological intervention for patients with advanced cancer.(Abstract LBA10001)

記事:可知 健太

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