・進行非小細胞肺がんに対する1次治療として、化学療法とキイトルーダの併用を行うことは、化学療法のみよりも全生存期間と無増悪生存期間を有意に改善する。
・腫瘍にPD-L1発現が1%未満の患者でも全生存期間を延長。
・特に注意する副作用は腎機能低下である
進行非小細胞肺がんに対する1次治療として、化学療法と抗PD-1抗体ぺムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)の併用を行うことは、化学療法のみよりも全生存期間と無増悪生存期間を有意に改善できることが明らかとなった。無作為化二重盲検プラセボ対照フェーズ3試験KEYNOTE-189(NCT02578680)の詳細な結果より示されたもの。4月14日から18日までシカゴで開催されているAmerican Association for Cancer Research(AACR2018)で、米Perlmutter Cancer Center at NYU Langone HealthのLeena Gandhi氏によって発表され、同日、医学誌The New England Journal of Medicineに掲載された。
KEYNOTE-189試験は、無作為化二重盲検プラセボ対照フェーズ3試験。試験の対象はEGFR変異、ALK転座が認められない未治療の進行非小細胞肺がん患者。主要評価項目は全生存期間と無増悪生存期間。副次評価項目は奏効率、奏効期間など。患者は、キイトルーダと化学療法の投与を受ける群(410人、キイトルーダ群)とプラセボと化学療法の投与を受ける群(206人、プラセボ群)に2対1で割り付けられた。この試験では症状のある脳転移がない患者が対象とされていた。
キイトルーダ群において、キイトルーダは3週おきに200mg投与された。化学療法は、3週間おきにペメトレキセド500mg/m2とシスプラチン、カルボプラチン75mg/m2かパラプラチンAUC5が投与された。化学療法が4サイクル行われた後は、3週おきにキイトルーダとアリムタが、病勢増悪、受容不能な副作用の発現、医師の判断、同意撤回まで投与された。プラセボ群においては、キイトルーダ群のキイトルーダに代えて、プラセボが投与された。プラセボ群の患者は増悪した場合、キイトルーダ投与が認められていた。無作為化は、PD-L1のTumor Proportion Score(TPS:腫瘍に発現するPD-L1、1%未満と
1%以上)、白金系抗がん剤の種類、喫煙状態で層別化されていた。主要評価項目はITT解析(患者が臨床試験開始時に割り付けられた2群)における全生存期間と無増悪生存期間。
1回目の中間解析で優越性を示すためには、全生存期間についてはp=0.00128、無増悪生存期間についてはp=0.00559を下回ることが必要だった。
登録された患者の背景は、年齢中央値はキイトルーダ群が65.0歳(34-84)、プラセボ群が63.5歳(34-84)、PD-L1のTPSが1%以上はキイトルーダ群が63.4%、プラセボ群が62.1%、パラプラチンを選択されたのは、キイトルーダ群が72.4%、プラセボ群が71.8%だった。PD-L1のTPSが1%未満は、キイトルーダ群が31.0%、プラセボ群が30.6%、1から49%は、キイトルーダ群が31.2%、プラセボ群が28.2%、50%以上は、キイトルーダ群が32.2%、プラセボ群が34.0%だった。
2017年11月8日をデータカットオフとし、観察期間中央値10.5カ月(0.2-20.4)で、キイトルーダ群の33.8%、プラセボ群の17.8%で投薬が継続されていた。プラセボ群の患者のうち、67人が試験の中でキイトルーダ群へ治療変更(クロスオーバー)し、18人が試験外で抗PD-L1抗体の投与を受けていた。クロスオーバー率はITTで41.3%、投薬継続中の患者を除くと50.0%だった。
試験の結果は以下のとおり。
1.キイトルーダ群で全生存期間と無増悪生存期間の有意な延長が認められた。全生存期間では51%死亡リスクが減少した(ハザード比が0.49(95%信頼区間:0.38-0.64)、p<0.00001)。
2.無増悪生存期間(病勢進行または死亡)のリスクを48%減少させた(ハザード比が0.52(95%信頼区間:0.43-0.64)、p<0.00001)。
2.1.無増悪生存期間中央値はキイトルーダ群8.8カ月(95%信頼区間:7.6-9.2)、プラセボ群4.9カ月(95%信頼区間:4.7-5.5)だった。1年無増悪生存率は、キイトルーダ群34.1%、プラセボ群17.3%だった。
2.2.キイトルーダ群における無増悪生存期間の延長効果は、すべてのサブグループで認められた。PD-L1の発現度合いが高いほど、無増悪生存期間の差は
大きかった。
- PD-L1が1%未満の患者における病勢進行または死亡リスクの減少率は25%(ハザード比は0.75(95%信頼区間:0.53-1.05)、p=0.0476)
- 1%から49%の患者における病勢進行または死亡リスクの減少率は45%(ハザード比は0.55(95%信頼区間:0.37-0.81)、p=0.0010)
- 50%以上の患者における病勢進行または死亡リスクの減少率は64%(ハザード比は0.36(95%信頼区間:0.25-0.52)、p<0.00001)
3.全生存期間中央値はキイトルーダ群が医学統計学的に未到達、プラセボ群が11.3カ月(95%信頼区間:8.7-15.1)。
4.1年全生存率は、キイトルーダ群が69.2%、プラセボ群が49.4%だった。
4.1.キイトルーダ群における全生存期間の延長効果は、PD-L1の発現度合いを含めたすべてのサブグループで認められた。
- PD-L1が1%未満の患者における全生存期間では41%死亡リスクを減少(ハザード比は0.59(95%信頼区間:0.38-0.92)、p=0.0095)
- 1%から49%の患者における全生存期間ではの45%死亡リスクを減少(ハザード比は0.55(95%信頼区間:0.34-0.90)、p=0.0081)
- 50%以上の患者における全生存期間では58%死亡リスクを減少(ハザード比は0.42(95%信頼区間:0.26-0.68)、p=0.0001)した。
5.奏効率は、キイトルーダ群が47.6%、プラセボ群が18.9%で、キイトルーダ群の方が有意に高かった(p<0.00001)。
6.奏効期間中央値は、キイトルーダ群が11.2カ月、プラセボ群が7.8カ月だった。奏効率はPD-L1の発現度合いが高いほど差が大きかった。
7.アリムタを5サイクル以上投与されたのは、キイトルーダ群の76.5%、プラセボ群の66.8%だった。
8.グレード3以上の副作用の発現率は、キイトルーダ群が67.2%、プラセボ群が65.8%。何らかの投薬の中止につながった副作用が発現したのは、キイトルーダ群が27.7%、プラセボ群が14.9%、すべての投薬の中止につながった副作用が発現したのは、キイトルーダ群が13.8%、プラセボ群が7.9%、
死亡となった副作用が発現したのは、キイトルーダ群が6.7%、プラセボ群が5.9%だった。
9.注意すべき副作用として、腎臓機能が注目された。急性腎障害の発現は、キイトルーダ群が5.2%、プラセボ群が0.5%で、グレード3-5に限るとキイトルーダ群が2.0%、プラセボ群が0%、グレード5が2人に起きた。腎炎の発現は、キイトルーダ群が1.7%、プラセボ群が0%で、グレード3-5に限るとキイトルーダ群が1.5%、プラセボ群が0%だった。グレード5はなかった。
現在、第2相試験結果を受けて
文:前原 克章