オシメルチニブ(タグリッソ)による1次治療における獲得耐性のメカニズムの解析結果 #LBA50
10月19日から23日までドイツ・ミュンヘンで開催されているESMO2018で、1次治療としてオシメルチニブを評価したフェーズ3のFLAURA試験の予備的データから、試験期間中に増悪した患者で最も多く観察された耐性のメカニズムが発表された。
1次治療でオシメルチニブを選択した場合に発生する可能性がある耐性メカニズムの解明は、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対する今後の治療開発に大切な役割を果たす。
FLAURA試験では、未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者において、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるオシメルチニブの有効性は、第1世代ゲフィチニブ(イレッサ)もしくはエルロチニブ(タルセバ)よりも優れることが示されている。
FLAURA試験の対象は、未治療のEGFR遺伝子変異陽性(エクソン19の欠失変異またはL858R点突然変異)の非小細胞肺がん患者556人。 オシメルチニブ80mgを1日1回投与する群(オシメルチニブ群、279人)、またはゲフィチニブ250mgを1日1回またはエルロチニブ150mgを1日1回投与する群(標準治療群、277人)に、1対1でランダムに割り付けた。
ベースライン、ならびに2018年3月までに増悪と判断した時点および/または治療を中止した時点の計2回、血漿検体を採取し、次世代シーケンサー(NGS)を用いて解析した。
オシメルチニブ群では279人中113人(41%)、ゲフィチニブもしくはエルロチニブでは277人中159人(57%)が増悪または治療中止となり、これらの患者で次世代シーケンサーによる血漿検体の解析が行われた。
ベースラインの血漿検体でEGFR遺伝子変異が検出されたのは、オシメルチニブ群は113人中91人(81%)、ゲフィチニブもしくはエルロチニブは159人中129人(81%)で、今回の解析ではこれらの患者で評価が可能だった。
未治療のEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者を対象にとして、オシメルチニブ群では、EGFR T790M遺伝子変異による獲得耐性は認められず、 獲得耐性のメカニズムで最も多く検出されたのは、MET遺伝子増幅の15%(91人中14人)、次にEGFR C797S遺伝子変異の7%(91人中6人)で、その他HER2遺伝子増幅、PIK3CA遺伝子変異、RAS遺伝子変異が2-7%だった。
オシメルチニブ群では予想外の耐性メカニズムは観察されなかった。
一方、ゲフィチニブもしくはエルロチニブでは、最も多く検出された獲得耐性のメカニズムはEGFR T790M遺伝子変異の47%(129人中60人で、MET遺伝子増幅の4%(129人中5人)、HER2遺伝子増幅の2%(129人中3人)となった。
今回の解析結果を発表したRamalingam氏は「FLURA試験は、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの1次治療として、オシメルチニブを 新たな標準的治療の1つとなり治療の選択肢を増やした。
今回の結果は、MET遺伝子増幅とEGFR C797S遺伝子変異を検討することにより、オシメルチニブによる1次治療で増悪した後の新たな治療選択肢の研究に対し、道しるべとなる」と話した。
現在、オシメルチニブによる1次治療の耐性メカニズムについて、非小細胞肺がん組織検体で解析する研究(ELIOS試験など)が進行中である。