2018年10月19日~23日までドイツ・ミュンヘンで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)にてステージⅣ非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-L1抗体薬であるアテゾリズマブ(商品名テセントリク;以下テセントリク)+カルボプラチン+ナブパクリタキセル(商品名アブラキサン;以下アブラキサン)併用療法の有効性を比較検証した第Ⅲ相のIMpower130試験(NCT02367781)の結果が公表された。
IMpower130試験とは、化学療法治療歴のないステージⅣ非扁平上皮非小細胞肺がん患者(N=724人)に対して、ファーストライン治療として21日を1サイクルとして1日目にテセントリク+1日目にカルボプラチン+1、8、15日目にアブラキサン併用療法を4~6サイクル投与後、メンテナンス療法としてテセントリクを病勢進行するまで継続する群(N=451人,アームA)、21日を1サイクルとして1日目にカルボプラチン+1、8、15日目にアブラキサン併用療法を4~6サイクル投与後、メンテナンス療法として最善の支持療法(BSC)またはペメトレキセド(商品名アリムタ)を病勢進行するまで継続する群(N=228人,アームB)に1:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)を比較検証した国際多施設共同非盲検下の第Ⅲ相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は、テセントリク+化学療法群7.0ヶ月(95%信頼区間:6.2-7.3ヶ月)に対して、化学療法群5.5ヶ月(95%信頼区間:4.4-5.9ヶ月)、テセントリク+化学療法群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを統計学有意に36%減少(HR:0.64,95%信頼区間:0.54-0.77,P<0.0001)した。なお、1年無増悪生存率(PFS)はテセントリク+化学療法群29.1%(95%信頼区間:24.83%-33.44%)に対して化学療法群14.1%(95%信頼区間:9.37%-18.76%)を示した。
もう1つの主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、テセントリク+化学療法群18.6ヶ月(95%信頼区間:16.0-21.2ヶ月)に対して、化学療法群13.9ヶ月(95%信頼区間:12.0-18.7ヶ月)、テセントリク+化学療法群で死亡(OS)のリスクを統計学有意に21%減少(HR:0.79,95%信頼区間:0.64-0.98,P=0.033)した。なお、1年全生存率(OS)はテセントリク+化学療法群63.1%(95%信頼区間:58.59%-67.66%)に対して化学療法群55.5%(95%信頼区間:48.89%-62.17%)を示した。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はテセントリク+化学療法群49.2%(95%信頼区間:44.49%-53.96%)に対して化学療法群31.9%(95%信頼区間:25.84%-38.36%)を示した。また、奏効持続期間(DOR)中央値は、テセントリク+化学療法群8.4ヶ月(95%信頼区間:6.9-11.8ヶ月)に対して化学療法群6.1ヶ月(95%信頼区間:5.5-7.9ヶ月)を示した。
一方の安全性として、本試験で確認されたテセントリク+化学療法群の治療関連有害事象(TRAE)は既存の臨床試験で確認されている安全性プロファイルと一致しており、新たに確認された治療関連有害事象(TRAE)はなかった。なお、両群間におけるグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はテセントリク+化学療法群73.2%に対して、化学療法群60.3%。テセントリク+化学療法群で最も確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症32.1%、貧血29.2%、好中球数減少12.1%。
以上のIMpower130試験の結果を受けて、エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社・最高医学責任者兼グローバル開発責任者であるSandra Horning氏は以下のように述べている。“肺がんの中で最も患者さんの発症割合の高い進行性非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療として、テセントリクが有効性を示しました。本試験の結果に基づき、政府当局と協議できることを我々は楽しみにしております。”