・EGFR陽性ステージ3A非小細胞肺がん患者に対する術前化学療法
・術前化学療法としてのタルセバ使用を検証する第3相試験
・奏効率54.1%、手術率83.1%と有効であるが、予後延長などは現状不明
2018年10月19日~23日までドイツ・ミュンヘンで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)にてEGFR遺伝子変異陽性ステージIIIA-N2非小細胞肺がん患者に対する術前化学療法、術後化学療法としてのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるエルロチニブ(商品名タルセバ;以下タルセバ)単剤療法の有効性を比較検証した第III相のCTONG1103試験(NCT01407822)の結果が公表された。
CTONG1103試験とは、EGFR遺伝子変異陽性ステージIIIA-N2非小細胞肺がん患者(N=386人)に対して術前化学療法として42日間、術後化学療法として12ヶ月間の1日1回タルセバ150mg単剤療法を投与する群、または3週を1サイクルとして術前化学療法として2サイクル、術後化学療法として2サイクルの1日目、8日目にゲムシタビン1250mg/m+1日目にシスプラチン75mg/m2併用療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを比較検証した多施設共同の第III相試験である。
本試験の結果、術後化学療法としての主要評価項目である客観的奏効率(ORR)はタルセバ群54.1%(95%信頼区間:37.2%-70.9%)に対してゲムシタビン+シスプラチン併用群34.3% (95%信頼区間:17.7%-50.8%)、タルセバ群で高率(ORR:2.26,95%信頼区間:0.87–5.84,P=0.092)であった。そして、術前化学療法後に手術に至った割合はタルセバ群83.8%に対してゲムシタビン+シスプラチン併用群68·6%であった。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はタルセバ群21.5ヶ月(95%信頼区間:19.3–23.6ヶ月)に対してゲムシタビン+シスプラチン併用群11.9ヶ月(95%信頼区間:9.1–14.7ヶ月)、タルセバ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを58%統計学有意に減少した(HR:0.42,95%信頼区間: 0.23–0.76,P=00003)。なお、全生存期間(OS)は両群ともに未到達であった。
一方の安全性として、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はタルセバ群0%に対してゲムシタビン+シスプラチン併用群29.4%、タルセバ群で治療関連有害事象(TRAE)発症率は低率であった。
以上のCTONG1103試験の結果より、Guangdong Lung Cancer Institute・Yi-Long Wu氏は次のようなコメントを述べている。”EGFR遺伝子変異陽性ステージIIIA-N2非小細胞肺がん患者に対する術前化学療法としてのタルセバ単剤療法は客観的奏効率(ORR)は良好であり、ゲムシタビン+シスプラチン併用療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。”