がん情報サイト「オンコロ」

進行非小細胞肺がん タグリッソと免疫CP阻害薬、c-Met阻害薬、MEK阻害薬のいずれかを使用する第1相試験

この試験は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が使用中又は使用後にがんが進行してしまった非小細胞肺がん患者に対して、AZD9291と様々な薬剤(免疫チェックポイント阻害薬、c-Met阻害薬、MEK阻害薬)のいずれかを使用したときの安全性を確認する試験です。

目次

<一般的な説明>

試験概要

EGFR TKI投与後に病勢の進行が認められた非小細胞肺がん患者に対して、免疫チェックポイント阻害薬PD-L1抗体「MEDI4736(durvalumab;デュルバルマブ)」、「c-Met阻害薬AZD6094(Volitinib;ボリチニブ)」又は「MEK阻害薬AZD6244(selumetinib;セルメチニブ)」のいずれかと併用して「第3世代EGFR阻害薬AZD9291(osimertinib;オシメルチニブ)」を使用したときの安全性を評価する第1相試験です。抗腫瘍効果についても評価します。
「デュルバルマブ+ボリチニブ+オシメルチニブ」

治験薬剤の説明

【AZD9291(osimertinib;オシメルチニブ;タグリッソ)】
AZD9291は第三世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬です。細胞の表面には上皮増殖因子(EGFR)というタンパク質が存在し、この遺伝子変異があると、細胞はがん化します。この場合、EGFRの働きを阻害するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の投与が有効ですが、使用を続けるとEGFR遺伝子は耐性を獲得した状態(T790抵抗性変異)になり、薬剤が効かなくなってしまいます。AZD9291はEGFRの変異とT790抵抗性変異を阻害する新薬です。

【MEDI4736(durvalumab;デュルバルマブ)】
MEDI4736は免疫チェックポイント阻害薬です。通常、細菌等の異物が体内に認められたときに免疫細胞が攻撃します。一方、がん細胞は免疫細胞から異物と認められないような機能を有しますが、その時にPD-L1というたんぱく質がかかわっています。MEDI4736はその機能を無効にできると期待されています。結果、がん細胞を異物であると認識することができるようになります。がん細胞を異物と認識できるようになると、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようになります。

【AZD6094(Volitinib;ボリチニブ)】
AZD6094はc-Met受容体チロシンキナーゼ阻害薬です。腫瘍細胞の表面にはc-Met受容体というタンパク質が存在し、腫瘍細胞の増殖に関与します。AZD6094は、このc-met受容体の働きを阻害する薬剤となります。

【AZD6244(selumetinib;セルメチニブ)】
AZD6244はMEK1/2阻害薬です。MEK1/2は腫瘍細胞増殖に必要である細胞内に存在するプロテインキナーゼという種類の酵素になります。この酵素を阻害することにより、腫瘍増殖を抑制する薬剤となります。

主な参加条件等

この試験の対象となりうる方

  1. 20歳以上の方
  2. 非小細胞肺がんと診断された方
  3. EGFRチロシンキナーゼ阻害薬感受性と関連するEGFR変異が確認された方
  4. 前治療のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の継続投与中に病勢の進行がみられた方
  5. 測定可能病変を1つ以上有する方
  6. ECOG PSが0~1の方

この試験の対象とならない方

  1. 過去に抗PD-L1又は抗PD-L1抗体、AZD6094又は他のcMet阻害薬、AZD6244又はMEK、RASまたはRAF阻害薬を投与された患者
  2. 髄膜転移又は脊髄圧迫のある方
  3. 臨床的に重要な心疾患、全身性疾患、炎症性疾患等の疾患をお持ちの方

臨床試験公開情報

JAPIC No : JapicCTI-142661(最終更新2015/5/22);詳細はコチラ
ClinicalTrials.gov Identifier : NCT02143466 (最終更新日2015/7/31);詳細はコチラ

治験詳細を見る

上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR TKI)による治療後に病勢進行が認められたEGFRm+ 進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者にAZD9291と用量を漸増した新規治療薬を併用投与したときの安全性、忍容性、薬物動態及び抗腫瘍効果を評価する多群非盲検多施設共同第1b相試験(TATTON)

対象がん種 進行非小細胞肺がん
フェーズ P1
実施期間 2014年8月~2017年6月
実施国 日本、米国、韓国、台湾
目標症例 240
状況 募集中
手法 ランダム化オープンラベル
被験薬名 AZD9291(一般名:osimertinib;オスメルチニブ、商品名;タグリッソ)、MEDI4736(一般名;durvalumab;デュルバルマブ)、AZD6094(一般名:Volitinib;ボリチニブ)、AZD6244(一般名:selumetinib;セルメチニブ)
種類 AZD9291:EGFR阻害薬(T790変異)、MEDI4736:免疫チェックポイント阻害薬(PD-L1抗体)、AZD6094:c-Met阻害薬、AZD6244:MEK阻害薬
投与経路 経口:AZD9291、AZD6094、AZD6244 / 静脈内投与:MEDI4736

<専門的な説明>

試験概要

EGFR TKIによる治療後に病勢進行が認められたEGFRm+ NSCLC患者にMEDI4736、AZD6094又はselumetinibと併用してAZD9291を経口投与したときの安全性及び忍容性検討する。また、抗腫瘍効果に関する予備的な検討も行う。

治験薬剤の説明

【MEDI4736(durvalumab;デュルバルマブ)】
MEDI4736はプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)に直接作用する開発中のヒトモノクローナル抗体製剤です。PD-L1を介するシグナルにより、腫瘍は免疫システムから探知されるのを回避します。MEDI4736はこれらのシグナルを阻害することで、がんの免疫逃避機構が働かないよう作用します。

(アストラゼネカHPより: http://www.astrazeneca.co.jp/media/pressrelease/Article/201505082

【AZD9291(osimertinib;オスメルチニブ)】
AZD9291は、1日1回投与の、高い選択性かつ不可逆的なEGFR TKIであり、従来のEGFR変異とT790M耐性変異の両方を標的とするよう設計されています(T790M耐性変異は、EGFR変異陽性 進行NSCLC症例の最大約3分の2においてEGFR TKI薬剤耐性の原因となる遺伝子変異です)。

(アストラゼネカHPより:http://www.astrazeneca.co.jp/media/pressrelease/Article/20150422

【AZD6094(Volitinib;ボリチニブ)】
An orally bioavailable inhibitor of the c-Met receptor tyrosine kinase with potential antineoplastic activity. Volitinib selectively binds to and inhibits the activation of c-Met in an ATP-competitive manner, and disrupts c-Met signal transduction pathways. This may result in cell growth inhibition in tumors that overexpress the c-Met protein. C-Met encodes the hepatocyte growth factor receptor tyrosine kinase and plays an important role in tumor cell proliferation, survival, invasion, and metastasis, and tumor angiogenesis; this protein is overexpressed or mutated in a variety of cancers.
(NCI Drug Dictionaryより:http://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-drug?cdrid=745761

【AZD6244(selumetinib;セルメチニブ)】
An orally active, small molecule with potential antineoplastic activity. Selumetinib is an ATP-independent inhibitor of mitogen-activated protein kinase kinase (MEK or MAPK/ERK kinase) 1 and 2. MEK 1 and 2 are dual-specificity kinases that are essential mediators in the activation of the RAS/RAF/MEK/ERK pathway, are often upregulated in various cancer cells, and are drivers of diverse cellular responses, including proliferation. Inhibition of both MEK1 and 2 by selumetinib prevents the activation of MEK1/2 dependent effector proteins and transcription factors, thereby leading to an inhibition of cellular proliferation in various cancers.
(NCI Drug Dictionaryより:http://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-drug?cdrid=532294

注意

・試験タイトルに英語記載がある場合、JAPIC等の日本語公開情報に掲載がないことを意味します。
・試験概要の「専門的な説明」は、JAPICやUMINに情報がある場合はそこから、ない場合はClinidcaltrials.govから転記しています。
・薬剤の「専門的な説明」は、開発企業に情報がある場合はそこから、ない場合はNCI(National Cancer Institute)から転記しています。
・専門的な記載を一般の方がわかるよう記載していますが、当社の認識が誤っていることがありますので、必ず実際の公開情報を確かめてください。
・実施医療機関は明記できませんが、実際の公開情報に明記されている場合があります。
・主な参加条件には記載された基準以外にも多くの基準があります。

初回更新:川村 千恵(最終更新:可知 健太)

×
モバイルバージョンを終了