がん情報サイト「オンコロ」

大腸癌の免疫チェックポイント阻害薬キイトルーダ(ペムブロリズマブ)について、知っておきたい7つのこと

目次

大腸癌とキイトルーダ(ペムブロリズマブ)について

皮膚癌、肺癌、胃癌に次いで抗PD-1抗体薬が期待されている癌種は大腸癌です。大腸癌は他の癌種と比べて効果のある抗癌剤、分子標的治療薬が揃っているため治療に困ることはありません。

いや、使える薬があり過ぎて何を使わないか?という贅沢な悩みはあります。このような状況にも関わらず、なぜ大腸癌の患者さんに抗PD-1抗体薬が期待されているのでしょうか?

それは、既存の治療薬には効果を示さない遺伝子異常を持つ患者さんが一定数の割合でいることが判っているからです。その遺伝子異常とは

MSI-H

と呼ばれるもので、マイクロサテライト不安定性陽性を意味します。この遺伝子異常はミスマッチ修復欠損が原因で発症すると考えられていて、ステージ4の大腸癌患者さんの約3-4%がこの遺伝子変異を持っていると言われています。

この遺伝子変異を持つ患者さんでは、抗癌剤のFOLFOX、FOLFIRIレジメン、分子標的治療薬のアバスチンベバシズマブ)、アービタックス(セツキシマブ)、ベクティビックス(パニツムマブ)などの薬剤の効果がありませんでした。

ですが、大腸癌ではマイクロサテライト不安定性検査の保険適応がされていないために、薬の効果不十分の原因が特定できていませんでした。このような背景のなか、2015年6月に彗星の如く現れたのが抗PD-1抗体薬

ペムブロリズマブ

です。ペムブロリズマブはマイクロサテライト不安定性陽性の原因とされるミスマッチ修復欠損のある患者さんに対して劇的な効果を証明しました。ペムブロリズマブのその効果がミスマッチ修復欠損のない患者さんと比べて明らかであることが試験の早期の段階で証明したために、途中で試験中止になったほどです。

2018年3月30日、MSD株式会社は”局所進行性又は転移性の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)癌 ”に対する効能・効果で、抗PD-1抗体キイトルーダの製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったことを自社のプレスリリースで公表しております。

MSI-Highを示す腫瘍は大腸がん以外にも、胃がん、膵臓がん、子宮内膜がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、甲状腺がん等でも確認されております。臓器非特異的な、様々ながんの共通のバイオマーカーでの適応で承認されたがん治療薬は国内においてこれまでにないため、キイトルーダの製造販売承認事項一部変更承認申請は非常に注目されております。

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の薬剤概要

製品名

キイトルーダ

一般名

ペムブロリズマブ(pembrolizumab)

用法用量

<根治切除不能な悪性黒色腫>
通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回2mg/kg(体重)を3週間間隔で30分間かけて点滴静注する。
PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌>
通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回200mgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注する

効能効果

1)根治切除不能な悪性黒色腫
2)PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
3)再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
4)がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌

主な副作用

そう痒症、斑状丘疹状皮疹、倦怠感

製造承認日

2014年9月(国内・悪性黒色腫)

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序

ASCO

ペムブロリズマブはヒト PD-1 に対する抗体であり、PD-1 とそのリガンド(PD-L1 及び PD-L2)との結合を阻害することにより、腫瘍特異的な細胞傷害性T細胞を活性化させ、腫瘍増殖を抑制すると考えられている

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の最新情報

1)PD-1 Blockade in Tumors with Mismatch-Repair Deficiency

概要

ミスマッチ修復欠損を持つ大腸がん患者、ミスマッチ修復能を持たない大腸がん患者、大腸がん以外のミスマッチ修復欠損を持つ癌患者に対してペンブロリズマブを投与して、その有効性(免疫関連客観的奏効率など)を検証した第二相試験。

出典

The New England Journal of Medicine

配信日

2015年6月25日

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の口コミ

医師のコメント

その他医療関係者のコメント

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の治験情報

1)Special Combination of BBI608 and Pembrolizumab

治験の概要

標準化学療法の効果を示さないステージ4大腸癌患者に対してペムブロリズマブとナパブカシンを併用投与して有効性(免疫関連客観的奏効率)を検証する治験

治験の期限

2020年10月

2)Study of Pembrolizumab (MK-3475) vs Standard Therapy in Participants With Microsatellite Instability-High (MSI-H) or Mismatch Repair Deficient (dMMR) Stage IV Colorectal Carcinoma (MK-3475-177/KEYNOTE-177)

治験の概要

ミスマッチ修復欠損もしくはマイクロサテライト不安定性陽性のあるステージ4大腸癌患者に対してペムブロリズマブを投与してPFS(無増悪生存期間)を検証する治験

治験の期限

2019年8月

参照
1)MSD株式会社リリース
2)大腸癌治療ガイドライン

×
モバイルバージョンを終了