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非小細胞肺がんの一次治療としてオプジーボをプラチナ製剤標準化学療法に追加する第1相試験結果 JCO

ニボルマブ(商品名オプジーボ)は、プログラム細胞死受容体PD-1を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体で、いわゆる免疫チェックポイント阻害薬。治療歴のある進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者集団における生存率の向上が確認され、日本で2015年12月、切除不能の進行・再発NSCLCの適応で承認された。

しかしながら、2016年8月5日、米Bristol-Myers Squibb社は、進行非小細胞肺がん患者の初回治療に対するニボルマブ(オプジーボ)単剤療法を使用する第3相試験(CheckMate-026)の速報を発表。オプジーボ単剤療法は対照であるプラチナ系製剤をベースにした標準療法に対して主要評価項目である無増悪生存期間での有効性を示せなかったとのことであった。

詳細な結果は、10月7日~11日にデンマーク コペンハーゲンにて開催される 第41回欧州臨床腫瘍学会(ESMO2016)にて、現地時間10月9日に発表される。

LBA7_PR – CheckMate 026: A Phase 3 Trial of Nivolumab vs Investigator’s Choice (IC) of Platinum-Based Doublet Chemotherapy (PT-DC) as First-Line Therapy for Stage IV/Recurrent Programmed Death Ligand 1 (PD-L1) − Positive NSCLC
http://www.esmo.org/Conferences/ESMO-2016-Congress/Programme

一方、2016年9月1日のJournal of Clinical Oncology誌(34巻25号)に進行性非小細胞肺がんの一次治療としてのオプジーボの併用療法、あるいは単剤療法の有用性を評価する第1相試験(CheckMate012、NCT01454102)の結果が掲載された。

2011年11月より米国およびカナダで開始された同試験について、米国Memorial Sloan Kettering がんセンターのNaijer A. Rizvi氏らは、プラチナ製剤を含む2剤併用化学療法(PT-DC)にニボルマブを追加する併用療法の中間結果を、Journal of Clinical Oncology誌に発表。オプジーボ5mg/kgとパクリタキセル+カルボプラチンの併用療法群が最も有望な成績であると報告した。

→要するに、非小細胞肺がん治療に関するオプジーボ単剤療法は標準的治療に対して「病態進行を抑える期間」について有効性が示せないと発表されており、詳細データは10月7日から開催されるヨーロッパの学会で発表される予定である。一方、オプジーボの第1相試験の中間試験結果であることに注意しなければならないが、オプジーボとプラチナ製剤併用化学療法の結果がJCOという医学誌に掲載された。

目次

~オプジーボ5mg/kgとパクリタキセル+カルボプラチン群の2年生存率が62%~

CheckMate012の中間解析対象患者は56人で、オプジーボとPT-DCを3週毎に4サイクル投与し、その後オプジーボを単剤で投与した。オプジーボ1回10mg/kgと併用する2剤併用化学療法は、扁平上皮がん集団がゲムシタビン+シスプラチン非扁平上皮がん集団がペメトレキセド+シスプラチン。また、組織型に関わらずパクリタキセル+カルボプラチンと併用でオプジーボを1回5mg/kg、または10mg/kg投与した。主要評価項目は安全性忍容性副次評価項目RECIST判定の奏効率、および治療開始後24週間の無増悪生存(PFS)率などである。探索的評価項目として全生存期間OS)、腫瘍組織PD-L1発現量別の奏効率を評価した。

その結果、治療開始後6週間に用量制限毒性DLT)は認められなかった。治療との因果関係が否定できないグレード3またはグレード4の有害事象は45%(25/56人)に認められ、4人(7%)は間質性肺炎であった。因果関係の否定できない有害事象を理由とする治療中止率は21%(12人)であった。

奏効率は、オプジーボ10mg/kg+ゲムシタビン+シスプラチン群(12人)で33%、オプジーボ10mg/kg+ペメトレキセド+シスプラチン群(15人)で47%、オプジーボ10mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン群(15人)で47%、オプジーボ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン群(14人)で43%、21週以上持続する病勢安定SD)を含めた病勢コントロール率は順に92%、93%、73%、86%であった。奏効率は腫瘍組織のPD-L1発現量により差はなかった。

治療開始後24週間の無増悪生存(PFS)率は順に51%、71%、38%、51%、PFS期間中央値は5.7カ月、6.8カ月、4.8カ月、7.1カ月であった。全生存期間(OS)中央値はオプジーボ5mg/kg併用群を除く3群は順に11.6カ月、19.2カ月、14.9カ月と確定したが、オプジーボ5mg/kgとパクリタキセル+カルボプラチン群のOSは、解析時点で8.8カ月から30.1カ月超で中央値の確定に至らず、14人中8人(57%)は2年以上生存していた。

以上、オプジーボとPT-DCの併用療法の安全性は、それぞれの薬剤で予想されるものと一致したが、有害事象を理由とする治療中止率はオプジーボの併用療法で上昇した。Rizvi氏は、オプジーボ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン群の2年間の全生存率62%は特筆すべき結果であると結論している。

→オプジーボ+プラチナ製剤を含む併用化学療法において、問題となるような毒性は認められなかった。組み合わせれる併用化学療法により効果に違いはでるものの、「オプジーボ+パクリタキセル+カルボプラチン」の群において2年間の全生存率は62%と特筆すべきものであった。

~非小細胞肺がんの一次治療としてオプジーボの適応拡大を判断する臨床試験~

非小細胞肺がんの一次治療としてのオプジーボの単剤、あるいは併用療法の適応拡大について、承認の可否は試験デザインの工夫やバイオマーカーの解析結果により違ってくる可能性がある。すなわち、効果が得られる患者数を増やす工夫が必須であることは間違いなく、オプジーボ以外にも免疫チェックポイントを標的とする同様の候補品の開発競争が激化していることから、対象とする患者の特徴を明確にし、差別化された治療が求められる。

なお、冒頭でも言及したが、本試験(CheckMate012)は上記の治療群のほか、ベバシズマブアバスチン)、エルロチニブ、またはイピリムマブ(ヤーボイ)と併用でオプジーボを投与する治療群、あるいはオプジーボ単剤の治療群が設けられており、扁平上皮型、非扁平上皮型の組織型別、無症候性の脳転移を有するといった条件別に合計19の治療群に分けて評価されている。

→要するに、非小細胞肺がんの初回治療としては、色々な抗がん剤との組み合わせでの臨床試験が実施中ということです。

記事:可知 健太 & 川又 総江

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