目次
頭頸部扁平上皮がんを対象とするオプジーボ第3相試験
プラチナ製剤治療後に進行した患者の死亡リスク低下、準療法との有意差達成 NEJM
プラチナ製剤を含む化学療法で効果が得られなかった再発性・転移性頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)患者に対し、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(オプジーボ)の単剤療法は、治験担当医師選択の単剤標準療法と比べ全生存期間(OS)を有意に延長し、死亡リスクを30%低下させることが示された。
なお、7月27日、日本において、オプジーボは、再発又は遠隔転移を有する頭頸部がんに対する効能・効果に係る製造販売承認事項一部変更承認申請を行っている。
2016年10月7日から11日にデンマークで開催された第40回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)プレジデンシャルシンポジウムで、米国Ohio大学病院の R.L.Ferris氏らにより第3相試験(CheckMate 141、NCT02105636、JapicCTI-142647)の結果が発表され、10月9日のNew England Journal of Medicineにも論文が掲載された。
~試験デザイン・方法~
プラチナ製剤の治療後6カ月以内に病勢進行(PD)した再発性・転移性頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)患者を対象とする無作為化非盲検試験で、361人をオプジーボ群、または化学療法群に2:1に割り付け、オプジーボは3mg/kgを2週ごとに点滴静注した。標準療法はセツキシマブ(あーびタックス)、メトトレキサート、またはドセタキセル(タキソテール)の中から治験担当医師が選択した。
2014年6月から2015年8月、米国、欧州、日本を含む64施設でオプジーボが240人に、標準療法が121人に投与され、全生存期間(OS)、無増悪生存(PFS)期間、および安全性の中間解析データカットオフは2015年12月18日、奏効率は2016年5月5日までのデータに基づき算出した。
死亡リスク5.1か月→7.5か月に延長、30%の死亡リスクを軽減
主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、オプジーボ群(7.5カ月)が標準療法群(5.1カ月)と比べ有意に延長し、ハザード比(HR)は0.70であった。カプラン-マイヤー曲線に基づく1年生存率は、オプジーボ群(36.0%)が標準療法群(16.6%)より約19%高いと算出された。OS中央値は年齢(65歳未満、65歳以上75歳未満)、活動性状態(ECOGスコア0、または1以上)、セツキシマブ治療歴の有無、標準療法別(セツキシマブ、メトトレキサート、またはドセタキセル)、原発巣別(喉頭、口腔、または咽頭)といった層別解析でもすべてオプジーボ群の方が長く、HRはいずれも1.00を下回った。
副次評価項目である無増悪生存(PFS)期間中央値(各2.0カ月、2.3カ月)は有意差がなかったが(HR=0.89)、PFS率のカプラン-マイヤー曲線は治療後4~5カ月頃から標準療法群が低下していく一方で、オプジーボ群は20%前後で維持され、6カ月後のPFS率はオプジーボ群(19.7%)の方が標準療法群(9.9%)より約10%高かった。
副次評価項目である奏効率は、オプジーボ群が13.3%で、そのうち完全奏効(CR)が6人、部分奏効(PR)が26人、標準療法群の奏効率は5.8%で、CRが1人、PRが6人であった。奏効到達までの期間中央値は、オプジーボ群2.1カ月、標準療法群2.0カ月であった。
~探索的バイオマーカーによる全生存期間の層別解析~
オプジーボ群の全生存期間(OS)は、腫瘍組織のプログラム細胞死受容体リガンド1(PD-L1)発現レベル、またはがん抑制遺伝子p16発現レベルにかかわらず標準療法群より延長し、ハザード比(HR)は最小で0.44、最大で0.89であった。ハザード比=0.44、すなわち死亡リスク56%低下を示したのは、PD-L1発現レベル1%以上、かつp16陰性の集団で、OS中央値はオプジーボ群(17人)8.8カ月、標準療法群(16人)5.6カ月であった。PD-L1発現レベル1%以上、p16発現陽性の一方、または両方に該当する患者集団は、PD-L1発現レベル1%未満、またはp16発現陰性の患者集団と比べオプジーボの生存ベネフィットの規模が大きいという予備的なエビデンスは得られたものの、これらの間の相互関係は有意ではなく、複数の比較検定でも補正されなかった。
オプジーボは免疫細胞に発現するプログラム細胞死受容体1(PD-1)を認識するモノクローナル抗体で、腫瘍に発現するPD-1リガンド(PD-L1)とPD-1との相互作用、いわゆる免疫チェックポイントに介入し、抗腫瘍免疫反応を再活性化する免疫療法薬である。幅広いがん種を対象とする臨床試験が多数実施されてきており、バイオマーカーとしてのPD-L1の発現レベルが解析されている。
~安全性~
オプジーボは標準療法より高い安全性を示した。グレード3、またはグレード4の治療関連有害事象は、オプジーボ群(13.1%)が標準療法群(35.1%)の半分以下の発現率で、オプジーボ群では疲労(2.1%)、貧血(1.3%)、無力症(0.4%)、および口内炎(0.4%)であった。標準療法群では、主に好中球減少症(
~生活の質(QOL)~
患者自身が質問票に回答するQOL評価で、標準療法群では評価尺度QLQ-C30の身体機能、役割機能、および社会的機能のスコアが治療後9週目、および15週目のいずれの時点でも治療開始前の基準値と比べ有意に悪化し、QLQ-H&N35の疼痛、知覚、および社会関係問題のスコアも有意に悪化した。これに対し、オプジーボ群はこれらすべての項目が悪化することなくほぼ安定し、またはわずかに改善した。治療抵抗性のがん患者は、治療に伴う重篤な有害事象によりQOLが低下する患者も少なくないが、本試験のオプジーボ群ではグレード3以上の有害事象が少なかったこともQOL維持に寄与したと考えられた。
記事:川又 総子 & 可知 健太