術後膵管腺がん患者に対するゲムシタビン(ジェムザール)とカペシタビン(ゼローダ)の併用療法は、ゲムシタビン単剤療法より生存ベネフィットが上回ることが報告された。英国Liverpool大学のJohn P Neoptolemos氏らが、第3相無作為化非盲検試験(ESPAC-4、EudraCT 2007-004299-38、ISRCTN96397434)の結果を2017年1月24日のLancet Oncol Onlineに発表した。
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術後補助化学療法として「ゲムシタビン×カペシタビン」または「ゲムシタビン単剤」を比較
ESPAC-4はイングランド、スコットランド、ウェールズ、ドイツ、フランス、およびスウェーデンの92施設で実施され、肉眼的完全切除から12週以内の膵管腺がん患者732人をゲムシタビン×カペシタビン併用群、またはゲムシタビン単剤群に無作為に割り付け、術後療法を行った。1サイクル4週間としてゲムシタビンは1000mg/m2を週1回3週間静注後1週間休薬し、カペシタビンは1660mg/m2を3週間経口投与後1週間休薬した。主要評価項目は全生存期間(OS)であった。
その結果、2008年11月10日から2014年9月11日までに732人が登録され、データカットオフは2016年3月9日、最終解析対象は730人(ゲムシタビン×カペシタビン併用群364人、ゲムシタビン単剤群366人)で、追跡期間中央値は43.2カ月であった。全生存期間(OS)中央値は併用群(28.0カ月)が単剤群(25.5カ月)と比べ有意に延長し(p=0.032)、併用群は単剤群より死亡リスクが18%減少した(ハザード比(HR)=0.82)。
グレード3からグレード4の有害事象は、併用群359人中259人に、単剤群366人中196人に発現した。
先に実施された試験ESPAC-3では、膵がん患者に対する術後療法として、ゲムシタビン群の生存ベネフィットは5-フルオロウラシル(5-FU)/葉酸群と同等で、毒性は少なかった。さらに、進行、または転移膵がん患者に対する別の臨床試験では、ゲムシタビン×カペシタビン併用群の生存ベネフィット、および腫瘍反応がゲムシタビン単剤群よりすぐれた。これらの結果を踏まえ、今回の試験ESPAC-4では、ゲムシタビン×カペシタビン併用療法が膵管腺がんの新たな術後標準療法となる可能性が示唆された。
全生存期間等の詳細データ~生存期間を有意に延長。5年後生存率は12.5%増加~
・治療12カ月後、24カ月後、および5年後の全生存率は、ゲムシタビン×カペシタビン併用群でそれぞれ84.1%、53.8%、28.8%、ゲムシタビン単剤群ではそれぞれ80.5%、52.1%、16.3%であった。
・術後の切除断端に腫瘍細胞の残存が確認された(R1)集団、および確認されなかった(R0)集団別の全生存期間(OS)中央値は、ゲムシタビン×カペシタビン併用群でそれぞれ23.7カ月、39.5カ月、ゲムシタビン単剤群ではそれぞれ23.0カ月、27.9カ月であった。
・無再発生存期間中央値は、ゲムシタビン×カペシタビン併用群で13.9カ月、ゲムシタビン単剤群で13.1カ月で、有意差はなかった(p=0.082、HR=0.86)。
・治療後3年間、および5年間の無再発生存率は、ゲムシタビン×カペシタビン併用群でそれぞれ23.8%、18.6%、ゲムシタビン単剤群ではそれぞれ20.9%、11.9%であった。
安全性の詳細~転移性膵がんに関するデータと同程度の毒性~
・ゲムシタビン×カペシタビン併用療法における毒性は許容可能なもので、すでに行われた進行、または転移膵がん患者に対する第3相試験の報告と同程度であった。試験ESPAC-4で、グレード3、またはグレード4の好中球減少症の発現率は、ゲムシタビン×カペシタビン併用群(38%)がゲムシタビン単剤群(24%)と比べ高かったものの、発熱性好中球減少症は両群とも少なく、また、感染症を発症した患者割合は、ゲムシタビン併用群(3%)の方がゲムシタビン単剤群(7%)より低かった。
・グレード3、またはグレード4の下痢は予想通り、併用群(5%)が単剤群(2%)より多く発現した。グレード3、またはグレード4の手足症候群は併用群のみに7%発現したが、カペシタビンの用量を減量することで適切に対処可能であった。
・予め規定された用量の何割の投与を完了したかを示す用量強度の中央値は、ゲムシタビン×カペシタビン併用群のゲムシタビンは83%、カペシタビンは78%、ゲムシタビン単剤群では93%であった。
・併用群の死亡率は65%(239/366人)、単剤群の死亡率は60%(219/364人)で、そのうち、最大6サイクルの治療完了前に毒性を理由として治療を中止した患者の割合は、それぞれ47%、41%であった。
記事:川又 総江 & 可知 健太