2017年6月2日から5日開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2017)は、「がんケアの変革(Making a Difference in Cancer Care With You)」がテーマとして掲げられた。がん専門医や患者、政府機関、企業などあらゆる立場の人が知恵を出し合い、これまで常識とされていたがんケアを再考し、議論するという新たな試みである。
6月4日のプレナリーセッションで、ステージ3の大腸がん患者に対するオキサリプラチンを含む標準的な術後化学療法について、6本の第3相試験の累積データを用いた前向き研究の結果が発表された(Abstract LBA1)。演者のひとりである米国MayoクリニックがんセンターのAxel Grothey氏は、リンパ節転移が3個以下で腸管壁にがんが浸潤していないリスクの低い患者に対する術後補助療法は変革の余地があるとし、低リスク患者の60%はFOLFOX、あるいはCAPOXの治療期間を3カ月に短縮できる可能性を示唆した。米国では毎年約2万人、全世界では40万人の患者が当てはまる計算になる。
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オキサリプラチンを含む術後補助療法の期間を検討する最大規模のIDEAプロジェクト
米国や欧州、日本、オーストラリアなど12カ国で実施されている6試験(SCOT、TOSCA、 Alliance/SWOG 80702、IDEA France (GERCOR/PRODIGE)、ACHIEVE、HORG)を予め解析対象に特定していた最大規模の前向き研究で、術後補助療法の至適期間を検討するIDEA(International Duration Evaluation of Adjuvant therapy)コラボレーションが10年以上前に計画していたプロジェクトである。
2007年6月から2015年12月までに、第3相試験で術後補助療法としてFOLFOX(ロイコボリン+フルオロウラシル+オキサリプラチン)、またはCAPOX(XELOXとしても知られる)(カペシタビン+オキサリプラチン)を3カ月、または6カ月投与された計12834例を対象とし、試験登録から再発までの期間、2つ目の大腸がんの発がん、および全死因死亡といったイベント発生までの時間に基づき、主要評価項目として、無病生存(DFS)率の6カ月治療群に対する3カ月治療群の非劣性を検証した。
CAPOX療法、あるいは低リスク患者の場合は3カ月治療でも6カ月治療に劣らない
その結果、追跡期間中央値は39カ月で、無病生存(DFS)イベントが3263件発生した。全解析対象における3年間のDFS率は、3カ月治療群が74.6%、6カ月治療群が75.5%で、ハザード比(HR)は1.07、非劣性は検証できなかった。一方、治療種別ではCAPOXの3カ月治療群の6カ月治療群に対する非劣性が検証され、3年間のDFS率はそれぞれ75.9%、74.8%(HR=0.95)、3カ月治療群は6カ月治療群と比べイベント発生リスクが5%低下したことが判明した。FOLFOXのDFS率(各73.6%、76.0%)では非劣性は検証されなかった(HR=1.16)。
リスク集団別では、低リスク集団(浸潤深達度が漿膜下組織まで、かつリンパ節転移が3個以下[T1-3/N1])の3カ月治療群のDFS率(83.1%)は6カ月治療群(83.3%)に対する非劣性が検証されたが(HR=1.01)、高リスク集団(他臓器・組織に浸潤、または臓側腹膜を貫通する腫瘍[T4])、またはリンパ節転移が4個以上[N2])のDFS率(各62.7%、64.4%)では非劣性は検証されなかった(HR=1.12)。
治療期間3カ月短縮で神経毒性が約30%減少
オキサリプラチンを含む化学療法は、重要な副作用が神経障害である。具体的には、手足のしびれやピリピリ感、痛みなどの症状で、投与期間が延びれば重症化し、生涯にわたり症状と付き合わなければならなくなる。
治療期間を3カ月に短縮したことにより、今回の調査ではオキサリプラチンによるグレード2以上の神経障害の発現率は大幅に低下し、FOLFOXでは6カ月治療群の45%に対し3カ月治療群は15%、CAPOXではそれぞれ17%、48%であった。
リスクベースの治療戦略で合意形成を
2004年以降、大腸がんの術後補助療法は6カ月超のオキサリプラチンを含む化学療法がスタンダードとして定着している。今回の前向き研究の結果に基づき、IDEAの研究者らは、ステージ3大腸がんの術後補助療法にリスクベースのアプローチを適用することで合意し、T1-3/N1の低リスク患者には治療期間3カ月を推奨するという。T4もしくはN2、または他のリスク因子を有する高リスク患者の場合は、忍容性や患者の意思、再発リスク因子の評価、および選択した治療薬を考慮して期間決定を助言するという。
記事:川又 総江
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