2017年12月22日、医学誌『Blood』にてチーフ編集者を務めるBob Lowenberg氏、Nancy Berliner氏らが選んだ2017年『Blood』論文ランキングベスト10が公表された。
2017年、『Blood』に掲載された論文総本数は1000本を超え、その中でも際立って注目度の高かった論文10本は下記の通りである。
目次
マラリア発生地域サハラ以南アフリカにおける鎌状赤血球貧血(SCA)の小児患者に対するヒドロキシカルバミド
2017年10月19日、マラリア発生地域サハラ以南アフリカにおける鎌状赤血球貧血(SCA)の小児患者に対するヒドロキシカルバミドの有効性、安全性を検証する第III相のNOHARM試験(NCT01976416)の結果がMakerere University Hospital所属のRobert O. Opoka氏らにより公表された。
鎌状赤血球貧血(SCA)に対する治療として合成尿素誘導体であるヒドロキシカルバミドは科学的根拠をもって推奨されているが、それはマラリアの発症しない地域に限られており、サハラ以南アフリカのようにマラリアの発症する地域においてはヒドロキシカルバミド療法の有効性、安全性ともに明らかになっていない。
また、鎌状赤血球貧血(SCA)は鎌状の赤血球、赤血球の過剰破壊を原因とする慢性貧血などの症状が特徴の遺伝性疾患であるが、その原因となる遺伝子保有率には人種差があり、黒人の約0.3%がその遺伝子を保有していることから、鎌状赤血球貧血(SCA)は黒人特有の病気であると考えられている。
さらに、ヒドロキシカルバミドは基礎実験の結果よりマラリアを重症化させる可能性が示唆されていたり、ヒドロキシカルバミドの治療に関連した有害事象(AE)の1つである好中球減少症は感染症を重症化させることが示されている。以上の背景より、ヒドロキシカルバミドの有効性、安全性を検証する目的でNOHARM試験が実施された。
NOHARM試験とは、ウガンダ地域における鎌状赤血球貧血(SCA)の小児患者 (N=207人)に対して1日1回ヒドロキシカルバミド20±2.5mg/kgを12ヶ月投与する群 (N=104人) 、または1日1回プラセボ20±2.5mg/kgを12ヶ月投与する群 (N=103人)に無作為に振り分け、主要評価項目であるマラリア発症率、副次評価項目である鎌状赤血球貧血(SCA)に関連した有害事象(AE)発症率を検証した第III相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である臨床的マラリア発生率はヒドロキシカルバミド投与群0.05/人年(95%信頼区間:0.02-0.13)に対してプラセボ投与群0.07/人年(95%信頼区間:0.03-0.16)、両群間に統計学的有意差は示されなかった。また、ヒドロキシカルバミドの治療に関連した有害事象(AE)の1つである好中球減少症に伴う感染症の発症率も同様に両群間で統計学的有意差を示さなかった。
副次評価項目である鎌状赤血球貧血(SCA)に関連した有害事象(AE)発症率はヒドロキシカルバミド投与群45%に対してプラセボ投与群69%、血管閉塞性疼痛、指関節炎、急性胸部症候群など有害事象(AE)発症率はヒドロキシカルバミド投与群で統計学的有意に少なかった(P=0.001)。
以上のNOHARM試験の結果より、マラリア発生地域サハラ以南アフリカにおける鎌状赤血球貧血(SCA)の小児患者対するヒドロキシカルバミドはマラリア発症に関して影響を与えることもなく、忍容性も高いことが示された。
再発難治性多発性骨髄腫患者に対するベネトクラクス+ベルケイド+デキサメタゾン併用療法
2017年8月21日、再発難治性多発性骨髄腫患者に対する再発難治性多発性骨髄腫患者に対するベネトクラクス(ABT-199)+ボルテゾミブ(商品名ベルケイド;以下ベルケイド)+デキサメタゾン併用療法の有効性を検証した第Ib試験(NCT01794507)の結果がCentre Hospitalier Universitaire de Nantes所属のPhilippe Moreau氏らより公表された。
骨髄腫細胞は抗アポトーシス蛋白質であるBCL-2、MCL-1などの働きで生存している。そこで、BCL-2阻害薬であるベネトクラクス、MCL-1を間接的に阻害すると考えられているベルケイドの両剤併用療法は、多発性骨髄腫の治療として臨床的効果が非常に期待されている。
第Ib試験とは、前治療歴中央値3レジメン(1-13レジメン)の再発難治性多発性骨髄腫患者(N=66人)に対してベネトクラクス+ベルケイド+デキサメタゾン併用療法を投与し、主要評価項目として有害事象(AE)発症率、副次評価項目として全奏効率(ORR)を検証した試験である。
本試験の結果、主要評価項目である有害事象(AE)発症率は軽度な下痢46%、便秘41%、吐き気38%、グレード3または4の血小板減少症29%、貧血15%であった。
副次評価項目である全奏効率(ORR)は67%(N=44/66人)で、最良部分奏効(VGPR)以上の奏効を示した患者は42%であることが示された。また奏効率のサブ解析も実施され、BCL2の発現率の高い患者での全奏効率(ORR)は94%(N=17/18人)であるのに対してBCL2の発現率の低い患者での全奏効率(ORR)は59%(N=16/27人)、ベネトクラクス+ベルケイド+デキサメタゾン併用療法はBCL2高発現の患者に対して高い奏効率を示した。
以上の第Ib試験の結果より、再発難治性多発性骨髄腫患者に対するベネトクラクス+ベルケイド+デキサメタゾン併用療法は忍容性があり、奏効率をはじめ治療効果の高い治療方法であることが示された。
導入療法後に病勢進行した慢性移植片対宿主病(GVHD)患者に対するイムブルビカ
2017年9月18日、導入療法後に病勢進行した慢性移植片対宿主病(GVHD)患者に対するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるイブルチニブ(商品名イムブルビカ;以下イムブルビカ)単剤療法の有効性を検証した第I/II相試験(NCT02195869)の結果がStanford University School of Medicine所属のDavid Miklos氏らより公表された。
慢性移植片対宿主病(cGVHD)は同種異系幹細胞移植(allo-HSCT)の重大な合併症であり、その標準治療法は副腎皮質ステロイド療法であるが、この治療に対して効果を示さなかった場合の有望な次なる治療選択肢は存在しない。
そこで、第I/II相試験では前治療歴1から3レジメンの副腎皮質ステロイド療法に対して十分な効果を示さなかった慢性移植片対宿主病(cGVHD)患者(N=42人)に対してイムブルビカ420mg単剤療法を病勢進行するまで投与を継続し、主要評価項目である全奏効率(ORR)を検証した。
本試験のフォローアップ期間中央値13.9ヶ月時点における結果、主要評価項目である全奏効率(ORR)は67%、また奏効を示した71%の患者が20週間以上奏効を持続していた。一方の安全性として最も一般的に確認された有害事象(AE)は疲労、下痢、筋痙攣、悪心、そして挫傷であった。
以上の第I/II相試験の結果を受けて、前治療歴1レジメン以上のある慢性移植片対宿主病(cGVHD)患者に対するイムブルビカ単剤療法の有用性が示された。なお本試験の結果に基いて、米国食品医薬品局(FDA)よりイムブルビカは慢性移植片対宿主病(cGVHD)の効能での追加承認を受けている。
ADAMTS13活性が著減する先天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)患者に対する遺伝子組み換えADAMTS13療法
2017年9月14日、ADAMTS13活性が著減する先天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)患者に対する遺伝子組み換えADAMTS13療法であるBAX930(rADAMTS13)療法の安全性、忍容性、薬物動態をヒトで初めて検証した第I相試験(NCT02216084)の結果がUniversity College London Hospitals・Marie Scully氏らにより公表された。
第I相試験とは、ADAMTS13活性が著減する先天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)患者(N=13人)に対して5,20,または40U/kgのBAX930療法を実施し、主要評価項目として有害事象(AE)の発症率、副次評価項目として薬物動態(PK)などを検証した多施設共同用量漸増の第I相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である有害事象(AE)発症率はBAX930療法を投与した15人の患者すべてで高い忍容性が示され、アナフィラキシーショックをはじめとしたアレルギー症状を呈した患者は0人であった。また、少なくとも1つの治療関連有害事象(TEAE)を呈した患者は15人中12人(80%)であった。
副次評価項目である薬物動態(PK)は、用量依存的にADAMTS13が増加、活性化し、BAX930療法による治療開始1時間以内に血中濃度最大値に到達することを示した。また、フォンビルブランド因子(von Willebrand factor;以下VWF)切断酵素の用量依存性、VWF重合体の減少が示された。
以上の第I相試験の結果より、遺伝子組み換えADAMTS13療法であるBAX930療法の有害事象(AE)の発症率、薬物動態(PK)に関する薬物プロファイルが臨床試験において初めて示された。
ヒドロキシカルバミド療法に対し抵抗性または不耐性を示したハイリスク本態性血小板血症(ET)患者に対するジャカビ単剤療法
2017年8月9日、合成尿素誘導体であるヒドロキシカルバミド療法に対して抵抗性または不耐性を示したハイリスク本態性血小板血症(ET)、真性多血症患者患者に対するルキソリチニブ(商品名ジャカビ;以下ジャカビ)単剤療法の有効性を検証した第II相のMAJIC試験(ISRCTN61925716)の結果がGuy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust所属のClaire N. Harrison氏らにより公表された。
ヒドロキシカルバミド療法に対して抵抗性または不耐性を示す本態性血小板血症(ET)患者は約20%存在するが、その患者の全生存期間(OS)は短縮し、骨髄線維症、白血病など形質転換リスクは高いことが示されている。それにも関わらず、ヒドロキシカルバミド療法後に病勢進行後の治療方法を前向きに検証した臨床試験結果は存在しなかった。
MAJIC試験とは、ヒドロキシカルバミド療法に対して抵抗性または不耐性を示したハイリスク本態性血小板血症(ET)、真性多血症患者(N=110人)に対してジャカビ単剤療法を投与する群(N=58人)、または現時点での最善治療(BAT)をする群(N=52人)に1:1の割合で振り分け、主要評価項目である治療開始1年以内における完全奏効(CR)率、副次評価項目である治療開始1年以内における部分奏効(PR)率を比較検証した第II相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である治療開始1年以内における完全奏効(CR)率はジャカビ単剤療法群46.5%(N=27人)に対して現時点での最善治療(BAT)をする群44.2%(N=23人)、両群間で統計学的有意のある差は示されなかった。
副次評価項目である治療開始1年以内における部分奏効(PR)率はジャカビ単剤療法群46.5%(N=27人)に対して現時点での最善治療(BAT)をする群51.9%(N=27人)、両群間で統計学的有意のある差は示されなかった。
また、治療開始2年間における血栓症、出血、骨髄線維症、白血病などの形質転換発症率においても両群間で統計学的有意のある差は示されなかった。しかし、本態性血小板血症(ET)、真性多血症など疾患関連症状はジャカビ単剤療法群で改善する傾向が確認された。
一方の安全性としては、グレード3または4の貧血を発症した患者はジャカビ単剤療法群19%に対して現時点での最善治療(BAT)をする群0%、グレード3または4の血小板減少症はそれぞれ6.9%、0%であり、治療の継続が困難になった患者は両群間で差は示されなかった。
以上のMAJIC試験の結果より、ヒドロキシカルバミド療法に対して抵抗性または不耐性を示したハイリスク本態性血小板血症(ET)、真性多血症患者(N=110人)に対するジャカビ単剤療法は安全性を示すものの、現状の二次治療より上回る有効性を示すことはできなかった。
イグザレルトまたはエリキュース投与後に重大な出血を来した患者に対するプロトロンビン複合体濃縮製剤(PCC)
2017年8月23日、抗凝固薬であるリバーロキサバン(商品名イグザレルト;以下イグザレルト)、アピキサバン(商品名エリキュース;以下エリキュース)による重大な出血を発症した患者に対するプロトロンビン複合体濃縮製剤(PCC:prothrombin complex concentrate;以下PCC)の有効性を検証した試験の結果がKarolinska University Hospital所属のAmmar Majeed氏らにより公表された。
本試験では、イグザレルト投与により重大な出血を発症した患者(N=45人)、またはエリキュース投与により重大な出血を発症した患者(N=39人)に対して、それぞれの薬剤最終投与時より12.5(9-16時間)時間後、出血を発症してから6(1-10時間)時間後に4因子含有のPCCであるOcplex(46.4%)またはConfidex (52.4%)を2000IU(15000-2000IU)もしくは26.7IU/kg(21.4-29.9)投与し、主要評価項目である止血効果を検証した試験である。
本試験の結果、PCCによる止血効果は69.1%(N=58人)の患者で有効であり、30.9%(N=26人)の患者で無効であることが示された。なお、PCCによる治療が無効であった患者61.5%(N=16人)の出血部位は頭蓋内出血(ICH)であり、PCCによる治療開始5〜10日以内に2人の患者が虚血性脳卒中を発症した。そして、重大な出血を発症した患者32%(N=27人)は発症後30日以内に死亡している。
以上の試験結果より、イグザレルトまたはエリキュースの投与後に重大な出血を来した患者に対するPCCによる止血効果は高く、血栓症リスクを低下させる可能性が示された。ただし、本試験は対照群を設定しない試験デザインのために本試験により得られた知見の応用範囲は限られるとの見解をAmmar Majeed氏らは示している。
突発性血小板減少症(ITP)に罹患する妊婦患者に対するヒト遺伝子組換えトロンボポエチン(rhTPO)療法
2017年6月19日、突発性血小板減少症(ITP)に罹患する妊婦患者に対するヒト遺伝子組換えトロンボポエチン(rhTPO)療法の有効性、安全性を検証した第III相試験(NCT02391272)の結果がShandong University・Zhangyuan Kon氏らにより公表された。
本試験では、副腎皮質ステロイド療法、免疫グロブリン製剤大量療法(IVIgG療法)、そして血小板輸血などの治療後にも病勢進行し、血小板数30×10’9/L以下である患者(N=31人)に対して1日1回ヒト遺伝子組換えトロンボポエチン(rhTPO)療法300U/kgを14日間投与し、主要評価項目である奏効率を検証した多施設共同オープンラベルの第III相試験である。なお、本試験では完全奏効(CR)の基準値を血小板数100×10^9/L以上として定義している。
本試験の結果、主要評価項目である奏効率は23人(74.2%)の患者で示し、そのうち完全奏効(CR)を達成した患者は10人含まれていた。また、ヒト遺伝子組換えトロンボポエチン(rhTPO)療法に対して奏効を示さなかった患者でも出血症状の改善が顕著であることが示された。
一方の安全性として、治療関連有害事象(TEAE)は注射部位反応、目眩、疲労がそれぞれ患者1人で確認された。また、 フォローアップ期間中央値53週(39-68週)時点において乳児の先天性疾患、発達遅延などは確認されていない。
以上の第III相試験の結果より、突発性血小板減少症(ITP)に罹患する妊婦患者に対するヒト遺伝子組換えトロンボポエチン(rhTPO)療法の有効性、忍容性が示された。
前治療歴のある免疫グロブリン性アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)に対するダラザレックス
2017年6月14日、治療歴のある免疫グロブリン性アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)患者に対するダラツムマブ(商品名ダラザレックス;以下ダラザレックス)+デキサメタゾン併用療法の有効性を検証したレトロスペクティブ試験の結果がStanford University School of Medicine所属のGregory P. Kaufman氏らによる公表された。
本試験では、平均投与レジメン数3レジメンである免疫グロブリン性アミロイドーシス患者(N=25)に対して1週間に1回の投与間隔でダラザレックス16mg/kgを8週間、その後2週間に1回の投与間隔で16週間、その後4週間に1回の投与間隔で投与し、血液学的奏効率などを検証した。
本試験の結果、全血液学的奏効率は76%(N=19人)であり、奏効別には完全奏効(CR)率36%(N=9人)、最良部分奏効(VGPR)率24%(N=6人)、部分奏効(PR)率16%(N=4人)であった。なお、ダラザレックスが投与された患者11人は前治療に対する奏効率が最良部分奏効(VGPR)未満であったにも関わらず、ダラザレックスの投与により3人が完全奏効(CR)、5人が最良部分奏効(VGPR)を達成している。そして、ダラザレックス投与開始より奏効が得られるまでの期間も非常に早く、深い血液学的奏効を達成した期間中央値は1ヶ月(7ー188日)であった。
一方の安全性として、ダラザレックスの安全性プロファイルは多発性骨髄腫患者の適応で投与されたものと同様であった。グレード1または2のインフュージョンリアクション(IR)を発症した患者60%(N=15人)で、グレード3以上の患者0%であった。血液学的有害事象(AE)も管理可能であり、赤血球輸血を必要した患者は貧血、慢性腎臓病の患者2人であった。
以上の臨床試験の結果より、免疫グロブリン性アミロイドーシス患者に対するダラザレックスは深い奏効を早期に示し、安全性プロファイルに関しても未知なる副作用が確認されず、免疫グロブリン性アミロイドーシスの新しい選択肢選択肢になる可能性が示された。
IDH2変異陽性再発性難治性急性骨髄性白血病(AML)に対するIDHIFA(エナシデニブ)
2017年6月6日、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2;以下IDH2)変異のある再発性難治性急性骨髄性白血病(AML)患者に対する変異型IDH2酵素を標的とする経口薬であるエナシデニブ(商品名IDHIFA;以下IDHIFA)の有効性、安全性を検証した第I/II相試験(NCT01915498)の結果がメモリアル・スローン・ケタリングがんセンター白血病部門所属のEytan M. Stein氏らにより公表された。
本試験では、IDH2変異のある進行性血液悪性腫瘍患者(N=239人)のうち再発性難治性急性骨髄性白血病(AML)患者(N=176人)に対してIDHIFA単剤療法を投与し、主要評価項目として全奏効率(ORR)、安全性などを検証した第I/II相試験である。
本試験の結果、全奏効率(ORR)は40.3%(N=71人)であり、その内完全奏効(CR)を達成した患者19.3%(N=34人)であることが示された。また、奏効期間中央値は全奏効(ORR)患者群5.8カ月(95%信頼区間:3.9~7.4ヶ月)、完全奏効(CR)を達成した患者群8.8カ月(95%信頼区間:6.4~未到達)、初回奏効までの期間中央値は1.9カ月(0.5~9.4ヶ月)、完全奏効までの期間の中央値は3.8カ月(0.5~11.2ヶ月)であった。
一方の安全性としては、治療に関連した重篤な有害事象(SAE)を24%の患者が経験し、重篤な有害事象(SAE)の内訳としてはIDH分化症候群8%、白血球増加症4%、腫瘍崩壊症候群3%、高ビリルビン血症2%であった。また、治療関連有害事象(AE)で最も頻度が高かったのは悪心46%、高ビリルビン血症45%、下痢40%、疲労40%であった。
以上の第I/II相試験の結果より、IDH2変異のある再発性難治性急性骨髄性白血病(AML)患者に対するIDHIFA単剤療法は完全奏効(CR)達成割合も高く、安全性も問題ないために急性骨髄性白血病(AML)の治療成績を向上させる治療選択肢になり得ることが示唆された。
CD19陽性再発難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病の小児および若年成人患者に対するCAR-T細胞療法
2017年4月13日、再発難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病の小児および若年成人患者に対するCAR-T細胞療の有効性、安全性を検証した第I/II相試験(NCT02028455)の結果がSeattle Children’s Research Institute所属のRebecca A. Gardner氏らにより公表された。
本試験では、CD19陽性の再発難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病の小児および若年成人患者(N=45人)に対して抗CD19キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T;以下CAR-T)療法を実施し、主要評価項目として微小残存病変(MRD)陰性率、有害事象(AE)発症率などを検証した第I/II相試験(NCT02028455)である。
本試験の結果、主要評価項目である第I段階における微小残存病変(MRD)陰性率は89%、またCAR-T療法以外にもフルダラビン、シクロホスファミドなどの化学療法を併用した患者では100%であることが示された。
また、もう一方の主要評価項目である有害事象(AE)発症率はCAR-T療法の既知なる合併症であるサイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性を23%の患者が発症した。
以上の第I/II相試験の結果より、CD19陽性の再発難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病の小児および若年成人患者に対するCAR-T療法は微小残存病変(MRD)陰性率も高く、忍容性にも問題ないために再発難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病の治療成績を向上させる治療選択肢になり得ることが示唆された。