・EGFRチロシンキナーゼ阻害薬治療中に髄膜播種を発症したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対する二次治療としてのタルセバ単剤療法の全生存期間(OS)中央値は8.0ヶ月
・死亡リスク(OS)はその他第1/2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に比べてタルセバ単剤療法で72%減少を示す
・二次治療としてのタルセバ単剤療法の主な前治療歴はジオトリフ、イレッサであった
2018年4月11日より4月14日までスイス・ジュネーブで開催されている第8回欧州肺癌学会議(ELCC 2018)にて、髄膜播種合併EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対する二次治療としてのエルロチニブ(商品名タルセバ;以下タルセバ)単剤療法などEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の有効性を検証した試験の結果がGustave Roussy・Ronan Flippot氏により公表された。
本試験は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬治療中に髄膜播種を発症したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者(N=66人)に対してタルセバ単剤療法などEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を投与し、全生存期間(OS) 、無増悪生存期間(PFS) 、奏効率(RR)、病勢コントロール率(DCR)などを検証した試験である。なお、病勢コントロール率(DCR)の定義は病勢安定(SD)以上の期間が2ヶ月以上継続するとしている。
本試験に登録された患者は、年齢中央値54歳(26-79歳)。性別は男性23%(N=15人)、女性77%(N=51人)。喫煙歴は非喫煙者85%(N=56人)。全治療歴中央値は2レジメン(1-7レジメン)、髄膜播種発症時に二次治療としてEGFR阻害薬の治療を受けた患者55%(N=36人)、EGFR阻害薬の種類はタルセバ53%(N=19人)、高用量タルセバ28%(N=10人)、オシメルチニブ(商品名タグリッソ;以下タグリッソ)8%(N=3人)、その他11%(N=人)。EGFR遺伝子変異の種類はExon19の欠失変異が35%(N=23人)、Exon21のL858R変異が35%(N=23人)、T790M遺伝子変異陽性が15%(N=10人)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。二次治療としてEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の治療を受けた髄膜播種合併EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者の無増悪生存期間(PFS)中央値は3ヶ月(95%信頼区間:2-3ヶ月)、全生存期間(OS)中央値は7ヶ月(95%信頼区間:3-10ヶ月)、奏効率(RR)は43%、病勢コントロール率(DCR)は77%を示した。
また、二次治療としての各EGFRチロシンキナーゼ阻害薬別の全生存期間(OS)中央値は下記の通りである。タルセバが8ヶ月(95%信頼区間:7-10ヶ月)、高用量タルセバが2ヶ月(95%信頼区間:1-5ヶ月)、その他第1/2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が2ヶ月(95%信頼区間:0-2ヶ月)を示した。
なお、二次治療としてタルセバの治療歴のある患者の主な前治療歴はアファチニブ(商品名ジオトリフ;以下ジオトリフ)、ゲフィチニブ(商品名イレッサ;イレッサ)であり、二次治療としてタルセバの治療を受けた患者の髄膜播種発症後の死亡リスクはその他第1/2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の治療を受けた患者よりも減少した(ハザードリスク:0.28,P=0.0237)。そして、10ヶ月以上の生存を達成した9人(25%)の患者のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の内訳は、タルセバが6人、高用量タルセバが1人、タグリッソが2人であった。
以上の臨床試験の結果よりRonan Flippot氏は以下のように結論を述べている。”EGFRチロシンキナーゼ阻害薬治療中に髄膜播種を発症したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者さんに対する二次治療としてのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の治療は全生存期間(OS)を延長することが本試験より示されました。そして、ジオトリフ、イレッサなどの治療後に病勢進行した患者さんに対するタルセバの治療は臨床的意義のある治療選択肢になり得るでしょう。”