・Borderline resectable 膵がん患者に対する術前化学療法としてのFOLFIRINOX療法はR0切除率65%を示した
・FOLFIRINOX療法後に手術を実施した患者におけるR0切除率は97%を示した
・FOLFIRINOX療法の主な治療関連有害事象(TRAE)は下痢、末梢神経障害などである
2018年5月3日、医学誌『JAMA Oncology』にてBorderline resectable 膵がん患者に対する術前化学療法としてのFOLFIRINOX療法の有効性を検証した第II相試験( NCT01591733)の結果がMassachusetts General Hospital・Janet E. Murphy氏らにより公表された。
本試験は、Borderline resectable 膵がん患者(N=48人)に対して術前化学療法として14日間を1サイクルとしてFOLFIRINOX(オキサリプラチン、イリノテカン、フルオロウラシル、レボホリナートカルシウム)療法を8サイクル投与(予定)し、その後カペシタビン(商品名ゼローダ)+放射線併用療法を投与し、主要評価項目としてR0切除率、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を検証した単群非盲検下の第II相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は62歳(46-74歳)。性別は男性56%(N=27人)、女性44%(N=21人)。腫瘍マーカーレベル中央値はCEAで3.6mg/ml(0.6-90.7)、CA19-9で97.5U/ml(0-7730)。腫瘍部位は膵頭部73%(N=35人)、膵体部23%(N=11人)、膵尾部4%(N=2人)。腫瘍の大きさは3.75cm(2.1cm-5.6cm)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目であるR0切除率は65%(95%信頼区間:49%-78%,N=31人)を示した。また、手術を実施した患者(N=31人)におけるR0切除率は97%(N=31人)を示した。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は14.7ヶ月(95%信頼区間:10.5ヶ月-未到達)、2年無増悪生存率(PFS)は43%を示した。また、全生存期間(OS)中央値は37.7ヶ月(95%信頼区間:19.4ヶ月-未到達)、2年全生存率(OS)は56%を示した。
なお、手術を実施した患者(N=31人)における無増悪生存期間(PFS)中央値は48.6ヶ月(95%信頼区間:14.4ヶ月-未到達)、2年無増悪生存率(PFS)は55%を示した。また、全生存期間(OS)中央値は未到達、2年全生存率(OS)は72%を示した。
一方の安全性として、術前化学療法により発症した治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。グレード3の治療関連有害事象(TRAE)としては下痢10%(N=5人)、末梢神経障害4%(N=2人)など、グレード4の治療関連有害事象(TRAE)としては好中球減少症2%(N=1人)、リンパ球減少症2%(N=1人)、アルカリホスファターゼ(ALP)上昇2%(N=1人)。なお、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は1人も確認されなかった。
以上の第II相試験の結果より、Janet E. Murphy氏らは以下のように結論を述べている。”Borderline resectable 膵がん患者に対する術前化学療法としてのFOLFIRINOX療法はR0切除率、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を延長しました。本試験の結果は、現在進行中であるFOLFIRINOX療法の第III相試験の結果を後押しするでしょう。”