・免疫チェックポイント阻害薬の致死的な有害事象の発症時期や種類などを検証した
・過去9年分のWHOのデータをもとに検証したメタアナリシス試験
・治療レジメンごとに発症時期や種類は違うが、いずれも治療の早期に発症する傾向
2018年9月13日、医学誌『JAMA Oncology』にて免疫チェックポイント阻害薬に関連する致死的な治療関連有害事象(TRAE)の発症時期、種類などを、世界保健機関(WHO)の個別症例安全性報告データベースであるVigilyzeに基づきレトロスペクティブに検証したメタアナリシス試験の結果がVanderbilt University Medical Center・Daniel Y. Wang氏らにより公表された。
本試験は、2009年より2018年の期間にVigilyzに報告された16,000,000件以上の治療関連有害事象(TRAE)を対象に、抗CTLA-4抗体薬であるイピリムマブ(商品名ヤーボイ;以下ヤーボイ)、トレメリムマブ、抗PD-1/PD-L1抗体薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;キイトルーダ)、アテゾリズマブ(商品名テセントリク;以下テセントリク)、アベルマブ(商品名バベンチオ;以下バベンチオ)、デュルバルマブ(商品名イミフィンジ;以下イミフィンジ)に関わる致死的な治療関連有害事象(TRAE)の発症時期、種類などをレトロスペクティブに検証したメタアナリシス試験である。
本試験が実施された背景としては、免疫チェックポイント阻害薬はがんの中心的な治療方法として近年確立されているが、その致死的な治療関連有害事象(TRAE)により後続する治療の選択が困難になるためである。そこで、免疫チェックポイント阻害薬関連の致死的な治療関連有害事象(TRAE)の発症時期、種類などを本試験により検証した。
本試験の結果、2009年より2018年の期間にVigilyzにて報告された免疫チェックポイント阻害薬関連の致死的な治療関連有害事象(TRAE)は613件であり、各免疫チェックポイント阻害薬レジメンごとの致死的な治療関連有害事象(TRAE)の種類は下記の通りである。
ヤーボイ、トレメリムマブなどの抗CTLA-4抗体薬単剤療法で発症した致死的な治療関連有害事象(TRAE)は合計193件、最も多い致死的な治療関連有害事象(TRAE)は大腸炎70%(135件)、肝炎16%(31件)。
オプジーボ、キイトルーダ、テセントリク、バベンチオ、イミフィンジなどの抗PD-1/PD-L1抗体薬単剤療法で発症した致死的な治療関連有害事象(TRAE)は合計333件、致死的な治療関連有害事象(TRAE)の内訳としては肺炎35%(115件)、肝炎22%(115件)、大腸炎17%(58件)神経毒性15%(50件)。
抗PD-1/PD-L1抗体薬+抗CTLA-4抗体薬併用療法で発症した致死的な治療関連有害事象(TRAE)は合計87件、致死的な治療関連有害事象(TRAE)の内訳としては大腸炎37%(32件)、心筋炎25%(22件)、肝炎22%(19件)。
また、各免疫チェックポイント阻害薬レジメンごとの致死的な治療関連有害事象(TRAE)の発症時期は、抗CTLA-4抗体薬単剤療法で治療開始後40日、抗PD-1/PD-L1抗体単剤療法で治療開始後40日、抗PD-1/PD-L1抗体薬+抗CTLA-4抗体薬併用療法で治療開始後14日。どの治療レジメンも、致死的な治療関連有害事象(TRAE)が治療開始の早期のタイミングで発症していた。
以上のメタアナリシス試験の結果よりDaniel Y. Wang氏らは以下のように結論を述べている。”免疫チェックポイント阻害薬関連の致死的な治療関連有害事象(TRAE)の種類、頻度などは治療レジメンごとに異なります。また、その発症率は0.3%から1.3%程度と他の抗がん剤レジメンに比べて非常に稀です。しかし、免疫チェックポイント阻害薬はがんの中心的な治療方法として、今後はより早期の治療ラインで処方される機会が増えてきます。臨床医はその専門分野に関係なく、免疫チェックポイント阻害薬の致死的な治療関連有害事象(TRAE)について熟知している必要があるでしょう。”