・切除可能膵がん患者が対象の第2/3相のPrep-02/JSAP-05試験
・術前化学療法としてのゲムシタビン+S-1併用療法の有効性・安全性を比較検証
・術前化学療法群で死亡リスクが28%減少
2019年1月17日~1月19日まで米国・サンフランシスコで開催された消化器がんシンポジウム(ASCO GI 2019)にて切除可能膵がん患者に対する術前化学療法としてのゲムシタビン+S-1併用療法の有効性、安全性を比較検証した第2/3相のPrep-02/JSAP-05試験の結果が東北大学病院・肝胆膵外科の海野 倫明氏らにより公表された。
Prep-02/JSAP-05試験とは、未治療の切除可能膵がん患者(N=364人)に対して21日を1サイクルとして術前化学療法として1、8日目にゲムシタビン1000mg/m2+1日2回S-1 40mg/m2を14日間を2サイクル投与する群(N=182人)、または術前化学療法なしに手術する群(N=182人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として安全性、切除割合、無再発生存期間(RFS)などを比較検証した第2/3相試験である。なお、両群ともに術後10週以内に術後化学療法として標準治療であるS-1単独療法を開始している。
本試験が実施された背景として、膵がんは予後不良ながん種であり、根治切除後でも再発率は高く、再発予防のための治療が不可欠である。切除後の膵がん患者に対する術後化学療法の標準治療はS-1単独療法であるが、全身状態(PS)低下などを理由に全ての患者が術後化学療法の適応になるわけではない。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢(65歳以上)
術前化学療法群=66.5%
手術群=60.0%
ECOG Performance Status(スコア0)
術前化学療法群=96.7%
手術群=94.4%。
TNM分類(cT3)
術前化学療法群=71.4%
手術群=73.3%
TNM分類(cN1)
術前化学療法群=21.4%
手術群=21.7%
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は術前化学療法群36.72ヶ月に対して手術群26.65ヶ月、術前化学療法群で死亡(OS)のリスク28%減少(HR:0.72,95%信頼区間:0.55-0.94,P=0.015)を示した。また、2年全生存率(OS)は術前化学療法群63.7%に対して手術群52.5%を示した。
一方の安全性として、術前化学療法群におけるグレード3/4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は72.7%、その主な治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少57.6%、白血球減少30.8%、皮疹8.7%、食欲不振7.6%、発熱性好中球減少症6.4%であった。
以上のPrep-02/JSAP-05試験の結果より海野 倫明氏らは以下のように結論を述べている。”切除可能膵がん患者に対する術前化学療法としてのゲムシタビン+S-1併用療法は統計学的有意に全生存期間(OS)を改善し、新たな標準治療になり得る可能性が示唆されました。”