・治療歴のあるBRAF V600E変異型の転移性大腸がん患者が対象の第3相試験
・ビニメチニブ+エンコラフェニブ+アービタックス併用療法の有効性・安全性を検証
・忍容性に問題なく、客観的奏効率は48%を示した
2019年6月10日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて治療歴のあるBRAF V600E変異型の転移性大腸がん患者に対するMEK阻害薬であるビニメチニブ+BRAF阻害薬であるエンコラフェニブ+抗EGFR抗体薬であるセツキシマブ(商品名アービタックス;以下アービタックス)併用療法の有効性、安全性を検証した第3相のBEACON CRC試験(NCT02928224)の結果がUniversity Hospitals Gasthuisberg Leuven and KU LeuvenのVan Cutsem E氏らにより公表された。
BEACON CRC試験とは、1~2レジメンの治療歴のあるBRAF V600E変異型の転移性大腸がん患者に対して1日2回ビニメチニブ45mg+1日1回エンコラフェニブ300mg+アービタックス併用療法を投与する群、またはエンコラフェニブ+アービタックス併用療法を投与する群、またはアービタックス250mg/m2(初回400mg/m2)+FOLFIRIまたはイリノテカン併用療法を投与する3群に分け、主要評価項目として安全性、忍容性、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)などを比較検証した無作為化非盲検化の第3相試験である。
本試験が実施された背景としてBRAF V600E変異は転移性大腸がんの約8~15%の患者で認められ、予後不良因子とされている。また、BRAF V600E変異型大腸がん患者に対する抗EGFR抗体薬にBRAF阻害薬を併用することでBRAF阻害薬の効果が向上すること、BRAF阻害薬にMEK阻害薬を追加することでMAPK経路を深部で阻害することでより高い抗腫瘍効果が得られることが判っている。以上の背景より、BRAF V600E変異型の転移性大腸がん患者に対するMEK阻害薬ビニメチニブ+BRAF阻害薬エンコラフェニブ+抗EGFR抗体薬アービタックス併用療法の有効性、安全性が検証された。
本試験に登録された30人の患者における結果は下記の通りである。主要評価項目である安全性としては、用量制限毒性(DLT)が30人中5人の患者で確認された。5人の内2人がアービタックスを原因とする薬剤過敏症、2人がグレード2の漿液性脈絡網膜症、1人がグレード2の左室駆出率低下を発症した。なお、漿液性脈絡網膜症、左室駆出率低下はビニメチニブの投与中止、減量により治療継続になった。
有害事象発症率はグレード1が6.7%(N=2人)、グレード2が23.3%(N=7人)、グレード3が53.3%(N=16人)、グレード4が16.7%(N=5人)、グレード5の有害事象(AE)は認められなかった。最も多くの患者で確認された治療関連有害事象(TRAE)は下痢77%、ざ瘡様皮疹67%、倦怠感63%、悪心63%であった。また、最も多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は倦怠感13%、貧血10%、AST上昇10%、CK上昇10%、尿路感染症10%であった。
その他評価項目である評価可能で29人の患者群における客観的奏効率(ORR)は48%(95%信頼区間:29.4%-67.5%)、奏効の内訳としては完全奏効(CR)が10%(N=3人)、部分奏効(PR)38%(N=11人)であった。1レジメンの治療歴のある患者群における客観的奏効率(ORR)は59%(95%信頼区間:32.9%-81.6%)、2レジメンの治療歴のある患者群における客観的奏効率(ORR)は33%(95%信頼区間:9.9%-65.1%)を示した。
無増悪生存期間(PFS)中央値は8.0ヶ月(95%信頼区間:5.6-9.3ヶ月)であり、1レジメンの治療歴のある患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値は8.0ヶ月(95%信頼区間:5.6-9.7ヶ月)、2レジメンの治療歴のある患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値は7.7ヶ月(95%信頼区間:4.1-10.8ヶ月)。全生存期間(OS)中央値は15.3ヶ月(95%信頼区間:9.6ヶ月-未到達)、12ヶ月時点全生存率(OS)は62%(95%信頼区間:42.1%-76.9%)であった。
以上のBEACON CRC試験の結果よりVan Cutsem E氏らは以下のように結論を述べている。”治療歴のあるBRAF V600E変異型の転移性大腸がん患者に対するMEK阻害薬ビニメチニブ+BRAF阻害薬エンコラフェニブ+抗EGFR抗体薬アービタックス併用療法は、忍容性に問題なく、客観的奏効率(ORR)は48%を示しました。”