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転移性膵管腺がん患者に対するイミフィンジ±トレメリムマブ、主要評価項目である客観的奏効率の達成基準を満たさず

この記事の3つのポイント
転移性膵管腺がん患者を対象とした第2相試験
・イミフィンジ±トレメリムマブ療法の有効性安全性を比較検証
・試験開始前に定めた10%以上の客観的奏効率達成基準を両群ともに満たせず

2019年7月18日、医学誌『JAMA Oncology』にて転移性膵管腺がん患者に対する抗PD-L1抗体薬であるデュルバルマブ(商品名イミフィンジ;イミフィンジ)±抗CTLA-4抗体薬であるトレメリムマブ療法の有効性、安全性を比較検証した第2相試験(NCT02558894)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer Center and Weill Cornell Medical CollegeのEileen M. O’Reilly氏らにより公表された。

本試験は、転移性膵管腺がん患者(N=65人)に対して4週を1サイクルとしてイミフィンジ1500mg+トレメリムマブ75mg併用療法を4サイクル投与後に4週を1サイクルとしてイミフィンジ1500mg単剤療法を投与する群(N=32人)、または4週を1サイクルとしてイミフィンジ1500mg単剤療法を投与する群(N=33人)に分けて、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として病勢コントロール率DCR)、無増悪生存期間PFS)、全生存期間OS)などを比較検証した第2相試験である。

本試験が実施された背景として、膵がん患者の約90%は膵管腺がんが占めており、その5年生存率(OS)約8%程度であり、非常に予後が悪い。近年、複数のがんに対して有用性を示している免疫チェックポイント阻害薬の可能性が膵管腺がんにおいても注目されている。以上の背景より、転移性膵管腺がん患者に対する抗PD-L1抗体薬イミフィンジ±抗CTLA-4抗体薬トレメリムマブの有用性を確認する目的で本試験が開始された。

本試験に登録された65人の患者背景は下記の通りである。

年齢中央値
イミフィンジ+トレメリムマブ群=60.0歳(37-81歳)
イミフィンジ群=62.0歳(40-78歳)

性別
イミフィンジ+トレメリムマブ群=男性46.9%
イミフィンジ群=男性57.6%

人種
イミフィンジ+トレメリムマブ群=白人53.1%、アジア人46.9%
イミフィンジ群=白人66.7%、アジア人30.3%

WHO Performance Status
イミフィンジ+トレメリムマブ群=スコア0 43.8%、スコア1 53.1%
イミフィンジ群=スコア0 33.3%、スコア1 63.6%

PD-L1発現率TC25%以上
イミフィンジ+トレメリムマブ群=12.5%
イミフィンジ群=12.1%

前治療歴中央値
イミフィンジ+トレメリムマブ群=1レジメン
イミフィンジ群=1レジメン

前治療歴の種類
イミフィンジ+トレメリムマブ群=5FUベースの化学療法56.3%、ゲムシタビンベースの化学療法37.5%、不明6.3%
イミフィンジ群=5FUベースの化学療法60.6%、ゲムシタビンベースの化学療法33.3%、不明6.1%

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)はイミフィンジ+トレメリムマブ群3.1%(95%信頼区間:0.08%-16.22%)に対してイミフィンジ群0%(95%信頼区間: 0.00%-10.58%)。試験開始前に定めた10%以上の客観的奏効率(ORR)達成基準を両群ともに満たすことはできなった。

副次評価項目である3ヶ月病勢コントロール率(DCR)はイミフィンジ+トレメリムマブ群9.4%に対してイミフィンジ群6.1%。無増悪生存期間(PFS)中央値はイミフィンジ+トレメリムマブ群1.5ヶ月(95%信頼区間:1.2-1.5ヶ月)に対してイミフィンジ群1.5ヶ月(95%信頼区間:1.3-1.5ヶ月)。6ヶ月無増悪生存率(PFS)はイミフィンジ+トレメリムマブ群9.4%(95%信頼区間:2.4%-22.3%)に対してイミフィンジ群3.6%(95%信頼区間:0.3%-15.4%)。

全生存期間(OS)中央値はイミフィンジ+トレメリムマブ群3.1ヶ月(95%信頼区間:2.2-6.1ヶ月)に対してイミフィンジ群3.6ヶ月(95%信頼区間:2.7-6.1ヶ月)。6ヶ月全生存率(OS)はイミフィンジ+トレメリムマブ群 36.2%(95%信頼区間:2.4%-22.3%)に対してイミフィンジ群34.9%(95%信頼区間:19.2%-51.1%)。 12ヶ月全生存率(OS)はイミフィンジ+トレメリムマブ群8.8%(95%信頼区間:1.8%-22.8%)に対してイミフィンジ群6.3%(95%信頼区間:1.1%-18.4%)。

一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はイミフィンジ+トレメリムマブ群で34%(N=11/32人)に対してイミフィンジ群で31%(N=10/32人)、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はイミフィンジ+トレメリムマブ群で22%(N=7/32人)に対してイミフィンジ群で6%(N=2/32人)を示した。

また、5%以上の患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は疲労がイミフィンジ+トレメリムマブ群で13%に対してイミフィンジ群で9%、下痢がイミフィンジ+トレメリムマブ群で13%に対してイミフィンジ群で6%、そう痒がイミフィンジ+トレメリムマブ群で3%に対してイミフィンジ群で6%、甲状腺機能低下症がイミフィンジ+トレメリムマブ群で9%に対してイミフィンジ群で6%を示した。

以上の第2相試験の結果よりEileen M. O’Reilly氏らは以下のように結論を述べている。”転移性膵管腺がん患者に対する抗PD-L1抗体薬イミフィンジ±抗CTLA-4抗体薬トレメリムマブは、忍容性に問題はありませんでしたが、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)の達成基準を満たすことはできませんでした。”

Durvalumab With or Without Tremelimumab for Patients With Metastatic Pancreatic Ductal Adenocarcinoma(JAMA Oncol. 2019 Jul 18. doi: 10.1001/jamaoncol.2019.1588.)

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