2019年7月3~6日までスペイン・バルセロナで開催されたthe ESMO World Congress on Gastrointestinal Cancer 2019(WCGC 2019)にて、化学療法不耐の転移性大腸がん患者に対する抗PD-L1抗体薬であるアテゾリズマブ(商品名テセントリク;以下テセントリク)+MEK1/MEK2阻害薬であるコビメチニブ併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のIMblaze370試験(NCT02788279)の結果が Sarah Cannon Research Institute/Tennessee OncologyのJohanna Bendell氏らにより公表された。
IMblaze370試験とは、少なくとも2レジメン以上の治療歴のある局所進行性または転移性大腸がん患者(N=363人)に対して28日を1サイクルとして1、15日目にテセントリク840mg +1~21日目にコビメチニブ60mg併用療法を投与する群(N=183人)、または21日を1サイクルとして1日目にテセントリク1200mg単剤療法を投与する群(N=90人)、または28日を1サイクルとして1~21日目にスチバーガ160mg単剤療法を投与する群(N=90人)に2対1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)を比較検証した国際多施設共同非盲検下の第3相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は58歳。前治療歴は3レジメン以上が26%。高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)1.7%、RAS遺伝子変異型4.3%だった。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はテセントリク+コビメチニブ併用群8.9ヶ月、テセントリク単剤群7.1ヶ月に対してスチバーガ単剤群8.5ヶ月。スチバーガ単剤と比べた時の死亡(OS)のリスクはテセントリク+コビメチニブ併用群でハザード比1.00(95%信頼区間:0.73-1.38,P=0.987)、テセントリク単剤群でハザード比1.19(95%信頼区間:0.83-1.71)を示した。また、探索的解析ではテセントリク単剤群よりもテセントリク+コビメチニブ併用群で死亡(OS)のリスクは良好であった(ハザード比0.81,95%信頼区間:0.60-1.10)。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)はスチバーガ単剤に比べた時の病勢進行または死亡(PFS)のリスクはテセントリク+コビメチニブ併用群でハザード比1.25(95%信頼区間:0.94-1.65)、テセントリク単剤群でハザード比1.39(95%信頼区間:1.00-1.94)を示した。
また、もう1つの副次評価項目である客観的奏効率(ORR)について高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)患者群で解析されており、テセントリク+コビメチニブ併用療法の治療を受けた患者3人の内2人で部分奏効(PR)、テセントリク単剤療法の治療を受けた患者3人の内1人で部分奏効(PR)が確認された。
一方の安全性として、グレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はテセントリク+コビメチニブ併用群45%に対してテセントリク単剤群10%に対してスチバーガ単剤群49%を示した。なお、30%以上の患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)はテセントリク+コビメチニブ併用群で下痢56%、皮膚障害42%、吐き気32%に対してテセントリク単剤群ではなしに対してスチバーガ単剤群で手足症候群51%、疲労43%、下痢35%、食欲減退34%を示した。
以上のIMblaze370試験の結果よりohanna Bendell氏らは以下のように結論を述べている。”化学療法不耐の転移性大腸がん患者に対する抗PD-L1抗体薬テセントリク+MEK1/MEK2阻害薬コビメチニブ併用、テセントリク単剤療法はスチバーガ単剤療法に比べて全生存期間(OS)を改善しませんでした。また、テセントリクの治療を受けた高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)患者においては部分奏効(PR)が確認されましたが、少集団における結果であるため有効性があるとの結論を出すのは難しいでしょう。”