・BRCA/PALB2遺伝子変異を有する未治療の進行性膵管腺がん患者が対象の第2相試験
・ベリパリブ+ゲムシタビン+シスプラチン併用療法の有効性・安全性を検証
・奏効率は74.1%を示し、病勢コントロール率は100%だった
2020年1月23日(木)~25日(土)に米国・サンフランシスコにて開催された米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(2020 Gastrointestinal Cancers Symposium)にて、BRCA/PALB2遺伝子変異を有する未治療の進行性膵管腺がん患者に対するPARP阻害薬であるベリパリブ+ゲムシタビン+シスプラチン併用療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT01585805)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのEileen M. O’Reilly氏らにより公表された。
本試験は、BRCA/PALB2遺伝子変異を有する未治療の進行性膵管腺がん患者に対して1日2回ベリパリブ80mg+ゲムシタビン600mg/m2+シスプラチン25mg/m2併用療法を投与する群、またはゲムシタビン600mg/m2+シスプラチン25mg/m2併用療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として奏効率(RR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などを比較検証した第2相試験である。
本試験が開始された背景として、膵管腺がん患者の約5~8%でBRCA1/BRCA2遺伝子変異が確認されている。そして、BRCA1/BRCA2遺伝子変異を有する膵管腺がん患者に対するベリパリブ+ゲムシタビン+シスプラチン併用療法は奏効率77%を示すことが第1相試験にて確認されている。以上の背景より、BRCA/PALB2遺伝子変異を有する未治療の進行性膵管腺がん患者に対するベリパリブ+ゲムシタビン+シスプラチン併用療法の有用性が本試験にて検証された。
本試験に登録された50人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は64歳(37−82歳)。性別は男性44%(N=22人)。遺伝子変異ステータスはBRCA1遺伝子変異12人、BRCA2遺伝子変異35人、PALB2遺伝子変異3人。進行病期はステージIIIが8人、ステージIVが42人。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である奏効率(RR)はベリパリブ+ゲムシタビン+シスプラチン群74.1%に対してゲムシタビン+シスプラチン併用群65.2%(P=0.55)。副次評価項目である病勢コントロール率(DCR)はベリパリブ+ゲムシタビン+シスプラチン群100%に対してゲムシタビン+シスプラチン併用群78.3%(P=0.02)。
無増悪生存期間(PFS)中央値はベリパリブ+ゲムシタビン+シスプラチン群10.1ヶ月(95%信頼区間:6.7-11.5ヶ月)に対してゲムシタビン+シスプラチン併用群9.7ヶ月(95%信頼区間:4.2- 13.6ヶ月)を示した(P=0.73)。全生存期間(OS)中央値はベリパリブ+ゲムシタビン+シスプラチン群15.5ヶ月(95%信頼区間:12.2-24.3ヶ月)に対してゲムシタビン+シスプラチン併用群16.4ヶ月(95%信頼区間:11.7-23.4ヶ月)を示した(P=0.6)。
一方の安全性として、グレード3~4の血液関連有害事象(AE)発症率は下記の通りである。好中球減少症がベリパリブ+ゲムシタビン+シスプラチン群48%に対してゲムシタビン+シスプラチン併用群30%、血小板減少性がベリパリブ+ゲムシタビン+シスプラチン群55%に対してゲムシタビン+シスプラチン併用群9%、貧血がベリパリブ+ゲムシタビン+シスプラチン群52%に対してゲムシタビン+シスプラチン併用群35%を示した。なお、グレード3~4の非血液関連有害事象(AE)に関しては両群間で同等であった。
以上の第2相試験の結果よりMemorial Sloan Kettering Cancer Center・Eileen M. O’Reilly氏らは以下のように結論を述べている。”BRCA/PALB2遺伝子変異を有する未治療の進行性膵管腺がん患者に対するゲムシタビン+シスプラチン±ベリパリブ併用療法は、奏効率(RR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を大幅に改善しました。”