・プラチナ系抗がん剤治療後のHER2陽性進行性肺腺がん患者が対象の第2相試験
・Pyrotinib単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・客観的奏効率は30.0%、無増悪生存期間は6.9ヵ月を示した
2020年7月2日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてプラチナ系抗がん剤治療後のHER2陽性進行性肺腺がん患者に対する経口チロシンキナーゼ阻害薬であるPyrotinib単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT02834936)の結果がShanghai Pulmonary HospitalのCaicun Zhou氏らにより公表された。
本試験は、プラチナ系抗がん剤治療後のステージIIIbまたはIV期のHER2陽性進行性肺腺がん患者に対して21日を1サイクルとして1日1回Pyrotinib 400mg単剤療法と投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)を検証した多施設共同非盲検下単群の第2相試験である。
肺腺がん患者の中でHER2陽性割合は1~4%程度である。現在、HER2陽性非小細胞肺がんに対しては抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体トラスツズマブ エムタンシン(商品名カドサイラ)が推奨されているが、HER2陽性進行性肺腺がんに対する標準治療は存在しない。以上の背景より、基礎試験にて抗腫瘍効果が確認されているチロシンキナーゼ阻害薬であるPyrotinib単剤療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された患者の背景としてステージIVが96.7%(N=58人/60人)、前治療で少なくとも2ラインの化学療法を受けていた人は41.7%(N=25人/60人)であった。
以上の背景を有する患者において主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は30.0%(95%信頼区間:18.8%-43.2%)を示した。また、転移別の客観的奏効率(ORR)は中枢神経系(CNS)転移あり群25.0%に対してなし群31.3%と同等であった。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は6.9ヵ月(95%信頼区間:5.5-8.3ヵ月)、全生存期間(OS)中央値は14.4ヵ月(95%信頼区間:12.3-21.3ヵ月)、奏効持続期間(DOR)中央値は6.9ヵ月(95%信頼区間:4.9-11.1ヵ月)を示した。
安全性として、グレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は28.3%を示し、最も多くの患者で確認されたのは下痢20.0%(すべてグレード3)であった。
以上の第2相試験の結果より、Caicun Zhou氏らは「プラチナ系抗がん剤治療後のHER2陽性進行性肺腺がん患者に対するPyrotinib単剤療法は、良好な抗腫瘍効果を示し、忍容性も問題ありませんでした」と結論を述べている。