2020年3月30日(英国時間)、英アストラゼネカ社は、アストラゼネカのデュルバルマブ[遺伝子組換え](商品名:イミフィンジ)が、進展型小細胞肺がんの成人患者に対する一次治療として標準治療である化学療法(エトポシドとカルボプラチンまたはシスプラチン)との併用療法で、米国において承認されたことを発表した。
今回の米国食品医薬品局による承認は、第III相CASPIAN試験の良好な結果に基づくものであり、本試験において、イミフィンジと標準治療である化学療法との併用療法は、化学療法単独群と比較して統計学的に有意で臨床的に意義のある全生存期間(OS)の延長を示した。
小細胞肺がんは悪性度が高く増殖の速いがんであり、化学療法で奏効が認められたとしても一般的に再発し、急速に進行する1,2。
第III相CASPIAN試験では2つの主要評価項目を設定し、イミフィンジと化学療法の併用療法群と化学療法群を比較した。
その結果、イミフィンジと化学療法の併用療法群では、死亡リスクが27%低下し(ハザード比0.73に相当 ; 95%CI 0.59-0.91; p=0.0047)、OS中央値は化学療法群の10.3ヵ月に対して13.0ヵ月であった。
加えて、イミフィンジと化学療法の併用療法群において、より高い客観的奏効率が得られたことも示された(化学療法群の58%に対して68%)。
なお、イミフィンジと化学療法の併用療法における安全性および忍容性は、これらの薬剤における既知の安全性プロファイルと一致していた。
*CASPIAN試験で示されたイミフィンジと化学療法の併用療法のデータはThe Lancet3に掲載されている。
また、イミフィンジと化学療法との併用療法にトレメリムマブを追加したもう1つの投与群の解析も完了しており、こちらについては主要評価項目が達成されなかった。
詳細なデータは、今後の学会で発表される予定。
CASPIAN試験では、標準治療である化学療法との併用療法群では固定用量のイミフィンジ(1500mg)を3週間ごとに4サイクル患者に投与し、その後病勢進行するまで4週間ごとに投与した。
広範な開発プログラムの一環として、イミフィンジは、第III相ADRIATIC試験において、同時化学放射線療法を受けた限局型小細胞肺がん患者に対する治療薬としても検討されており、その解析データは2021年に得られる予定。
イミフィンジは、2020年2月にシンガポールにおいて進展型小細胞肺がん患者の治療薬として世界で最初の承認を第III相CASPIAN試験の結果に基づいて取得している。
現在、イミフィンジと標準治療である化学療法(エトポシドおよびシスプラチンまたはカルボプラチン)の併用療法は、同試験の結果に基づいて、進展型小細胞肺がんの一次治療薬としてヨーロッパおよび日本で承認審査中。
※進展型小細胞肺がんに対するイミフィンジの適応は日本国内では現時点で未承認
*CASPIAN試験について
CASPIAN試験は、進展型小細胞肺がん患者805名が参加し、その一次治療を対象とした、無作為化非盲検国際多施設共同第III相試験。
本試験では、イミフィンジと化学療法(エトポシドおよびシスプラチンまたはカルボプラチン)との併用療法、またはイミフィンジと化学療法に免疫チェックポイント阻害剤であるトレメリムマブを追加した併用療法と、化学療法を比較した。
イミフィンジを投与している2つの群においては、化学療法を最長4サイクル実施した。
化学療法群においては最長6サイクルの化学療法および予防的頭蓋内照射の実施が認められていた。
本試験は、米国、欧州、南米、アジア、中東の23カ国200以上の施設で実施され、イミフィンジを投与しているどちらの群においてもOSを主要評価項目とした。
出典
1 National Cancer Institute. NCI Dictionary – Small Cell Lung Cancer.
2 Kalemkerian GP, et al. Treatment Options for Relapsed Small-Cell Lung Cancer: What Progress Have We Made? Journal of Oncology Practice, volume 14, issue no. 6 (June 1, 2018) 369-370.
3 Paz-Ares, L. et al. Durvalumab plus platinum-etoposide versus platinum-etoposide in first-line treatment of extensive-stage small-cell lung cancer (CASPIAN): a randomised, controlled, open-label, phase 3 trial. The Lancet, 2019;394(10212):1929-1939.
参照元:
アストラゼネカ株式会社プレスルーム