・EGFR-TKIに耐性となったT790M陽性進行性非小細胞肺腺がん患者が対象の第2相試験
・タグリッソ+ベバシズマブ併用療法の有効性・安全性をタグリッソ単剤療法と比較検証
・無増悪生存期間は併用療法の9.4ヵ月に対して単剤は13.5ヵ月と、統計学的有意に改善せず
2021年1月7日、医学誌『JAMA Oncology』にて上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に耐性となったT790M陽性進行性非小細胞肺腺がん患者に対する第三世代EGFR-TKIであるタグリッソ(一般名:オシメルチニブ、以下タグリッソ)+ベバシズマブの併用療法の有効性、安全性を比較検証した第2相WJOG8715L試験(UMIN000023761)の結果が和歌山県立医科大学の赤松弘朗氏らにより公表された。
WJOG8715L試験とは、EGFR-TKIに耐性となったT790M陽性進行性非小細胞肺腺がん患者(N=87人)に対して1日1回タグリッソ80mg+3週を1サイクルとしてベバシズマブ15mg/kg併用療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)発現するまで投与する群、またはタグリッソ単剤療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)発現するまで投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として主治医判定による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、治療成功期間(TTF)、全生存期間(OS)、安全性などを検証したオープンラベルの無作為化の国内第2相試験である。
本試験が開始された背景として、T790M陽性進行性非小細胞肺腺がん患者に対する他のEGFR-TKI+ベバシズマブ併用療法は有望な抗腫瘍効果を示している。タグリッソ単剤療法はプラチナ製剤のダブレット化学療法と比較すると無増悪生存期間を延長するが、10ヵ月であり、進行を遅らせるための新たな併用療法が必要とされている。以上の背景より、EGFR-TKI耐性となったT790M陽性進行性非小細胞肺腺がん患者に対する第三世代EGFR-TKIであるタグリッソ+ベバシズマブ併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された87人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は68歳(41-82歳)。性別は男性41%(N=33人)。ECOG Performance Statusはスコア0が46%(N=37人)。脳転移のある患者は26%(N=21人)。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目である主治医判定による無増悪生存期間(PFS)中央値はタグリッソ+ベバシズマブ併用群9.4ヵ月に対してタグリッソ単剤群13.5ヵ月、タグリッソ+ベバシズマブ併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを44%(HR:1.44、80%信頼区間:1.00-2.08、P=0.20)増加した。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はタグリッソ+ベバシズマブ併用群68%に対してタグリッソ単剤群54%を示した。治療成功期間(TTF)中央値はタグリッソ+ベバシズマブ併用群8.4ヵ月に対してタグリッソ単剤群11.2ヵ月(P=0.12)。全生存期間(OS)中央値はタグリッソ+ベバシズマブ併用群未到達に対してタグリッソ単剤群22.1ヵ月(P=0.96)。一方の安全性として、タグリッソ+ベバシズマブ併用群で最も多くの患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)はタンパク尿23%(N=9人)、高血圧20%(N=8人)を示した。
以上のWJOG8715L試験の結果より赤松弘朗氏らは「EGFR-TKIに耐性となったT790M陽性進行性非小細胞肺腺がん患者さんに対するタグリッソ+ベバシズマブ併用療法は、タグリッソ単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しませんでした」と結論を述べている。