・高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)がある転移性大腸がん患者が対象の第3相試験
・ファーストライン治療としてのキイトルーダ単剤療法の有効性・安全性を化学療法と比較検証
・無増悪生存期間は16.5ヶ月であり、化学療法の8.2ヶ月よりも延長した
2021年6月4日(金)~8日(火)、オンラインミーティングで開催された第57回米国臨床腫瘍学会(ASCO 2021)にて高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)がある転移性大腸がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬であるキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ、以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のKEYNOTE-177試験(NCT02563002)の最終アップデート解析の結果がSorbonne Université and Hôpital-Saint AntoineのThierry Andre氏らにより公表された。
KEYNOTE-177試験は、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)がある転移性大腸がん患者(N=307人)に対するファーストライン治療として3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg単剤療法を最大2年間投与する群、または2週を1サイクルとしてFOLFOX/FOLFIRI±ベバシズマブ/セツキシマブ併用療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、安全性を比較検証した第3相試験である。なお、病勢進行が認められた場合、最大35サイクルまでキイトルーダにクロスオーバーすることができた。
本試験のフォローアップ期間中央値キイトルーダ群44.5ヶ月(95%信頼区間:36.0~60.3ヶ月)、化学療法群44.4ヶ月(95%信頼区間:36.2~58.6ヶ月)時点における結果は下記の通りである。また、36%(N=56人)の患者が化学療法からキイトルーダにクロスオーバーしていた。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ群未到達に対して化学療法群36.7ヶ月、キイトルーダ群で死亡(OS)のリスクを26%減少(HR:0.74、95%信頼区間:0.53-1.03、P=0.0359)を示した。なお、両群間で統計学的有意な差は確認されなかった。
また、無増悪生存期間(PFS)中央値はキイトルーダ群16.5ヶ月に対して化学療法群8.2ヶ月、キイトルーダ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを41%減少(HR:0.59、95%信頼区間:0.45-0.79)を示した。客観的奏効率(ORR)はキイトルーダ群45.1%、完全奏効(CR)は20名に対して化学療法群33.1%で完全奏効は6名、奏効持続期間(DOR)中央値は未到達に対して化学療法群10.6ヶ月をそれぞれ示した。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はキイトルーダ群79.7%に対して化学療法群98.6%、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はキイトルーダ群21.6%に対して化学療法群66.4%を示した。
以上のKEYNOTE-177試験の最終アップデート解析の結果よりThierry Andre氏らは「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)がある転移性大腸がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は、無増悪生存期間(PFS)を改善し、有害事象(AE)発症率も低率でした。クロスオーバー率が高いためか、統計学的有意な差は確認できませんでしたが、死亡率を低下させる傾向が見られ、キイトルーダが新たな標準治療となる可能性が確認されました」と結論を述べている。