・再発難治性造血器悪性腫瘍患者が対象の第1相試験
・Zilovertamab vedotin(MK-2140)単剤療法の有効性・安全性を検証
・最大投与量は2.5mg/kgであり、非ホジキンリンパ腫患者における客観的奏効率は36.6%を示した
2021年12月11日~13日に開催された、第63回米国血液学会(ASH2021)にて再発難治性造血器悪性腫瘍患者に対する抗ROR1抗体薬物複合体であるZilovertamab vedotin(MK-2140)単剤療法の有効性、安全性を検証した第1相試験(NCT03833180)の結果がMD Anderson Cancer CenterのMichael Wang氏らにより公表された。
本試験は、再発難治性造血器悪性腫瘍患者(N=51人)に対して3週を1サイクルとして1日目にZilovertamab vedotin(MK-2140)0.50mg/kg(最大2.5mg/kg)単剤療法を投与する群(スケジュール1)、3週を1サイクルとして1、8日目にZilovertamab vedotin(MK-2140)1.0mg/kg(最大2.25mg/kg)単剤療法を投与する群(スケジュール2)、4週を1サイクルとして1、8、15日目にZilovertamab vedotin(MK-2140)1.0mg/kg(最大2.25mg/kg)単剤療法を投与する群(スケジュール3)に振り分け、主要評価項目として最大耐用量(MTD)、副次評価項目として安全性、客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)を検証した第1相試験である。
本試験が開始された背景として、ROR1は造血器悪性腫瘍を含む複数のがん腫で過剰発現する膜貫通型タンパク質である。基礎試験にて、抗ROR1抗体薬物複合体であるZilovertamab vedotin(MK-2140)は造血器悪性腫瘍に対して抗腫瘍効果が確認されている。以上の背景より、再発難治性造血器悪性腫瘍に対する本治療の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された51人の患者背景は下記の通りである。年齡中央値は70歳(44-91歳)。性別は男性が54.9%。ECOG PSスコアは0が49.0%。造血器悪性腫瘍の種類は非ホジキンリンパ腫(NHL)が80%(N=41/51人)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が25.5%(N=13/51人)、マントル細胞リンパ腫が33.3%(N=17/51人)。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目である最大耐用量(MTD)は、スケジュール1の3週を1サイクルとして1日目にZilovertamab vedotin(MK-2140)2.5mg/kgと決定された。全グレードの有害事象(AE)発症率は94.1%(N=48人)で、30%以上の患者で確認されたのは、悪心が45.1%、倦怠感が45.1%、末梢神経障害が41.2%、下痢が37.3%、めまいが35.3%、好中球数減少が33.3%であった。
グレード3以上の有害事象(AE)発症率は64.7%(N=33人)で、5%以上の患者で確認されたのは、好中球数減少が29.4%、ヘモグロビン値減少が15.7%、発熱性好中球減少症(FN)が7.8%、末梢神経障害が7.8%、血小板数減少が7.8%、下痢が5.9%、リパーゼ増加が5.9%、肺炎が5.9%であった。
副次評価項目である非ホジキンリンパ腫患者における客観的奏効率(ORR)は36.6%(N=15/41人、95%信頼区間:22.1-53.1%)を示し、奏効の内訳は完全奏効(CR)5人、部分奏効(PR)10人だった。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者における客観的奏効率(ORR)は38.5%(95%信頼区間:13.9-68.4%)、マントル細胞リンパ腫(MCL)患者における客観的奏効率(ORR)は52.9%(95%信頼区間:27.8-77.0%)を示した。
以上の第1相試験の結果よりMichael Wang氏らは「再発難治性非ホジキンリンパ腫(NHL)患者に対する抗ROR1抗体薬物複合体Zilovertamab vedotin(MK-2140)単剤療法の忍容性は良好であり、臨床的に期待のできる抗腫瘍効果を示しました」と結論を述べている。