・PD-L1陽性局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者が対象の第2相試験
・Tiragolumab(チラゴルマブ)+テセントリクの有効性・安全性をプラセボ+テセントリクと比較検証
・無増悪生存期間は全患者群で5.6ヶ月、PD-L1≧50%群で16.6ヶ月であり、いずれもテセントリク単剤療法より延長した
2021年12月10日、エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社はプレスリリースにて、PD-L1陽性局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としての抗TIGIT抗体であるTiragolumab(チラゴルマブ)+抗PD-L1抗体薬であるテセントリク(一般名:アテゾリズマブ、以下テセントリク)併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のCITYSCAPE試験(NCT03563716)の長期フォローアップの結果を公表した。
CITYSCAPE試験は、PD-L1陽性局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者(N=135人)に対するファーストライン治療として3週を1サイクルとしてTiragolumab600mg+テセントリク1200mg併用療法を実施する群(N=67人)、または3週を1サイクルとしてプラセボ+テセントリク1200mg併用療法を実施する群(N=68人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、奏効持続期間(DOR)などを比較検証した第2相試験である。
本試験のフォローアップ期間中央値2.5年時点における結果は下記の通りである。全患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はTiragolumab+テセントリク併用群の5.6ヶ月(95%信頼区間:4.2-10.4ヶ月)に対してプラセボ+テセントリク併用群で3.9ヶ月(95%信頼区間:2.7-4.5ヶ月)と、Tiragolumab+テセントリク併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを38%減少(HR:0.62、95%信頼区間:0.42-0.91)した。また、客観的奏効率(ORR)はTiragolumab+テセントリク併用群の38.8%に対してプラセボ+テセントリク併用群で20.6%であった。全生存期間(OS)中央値はTiragolumab+テセントリク併用群の23.2ヶ月(95%信頼区間:14.1-31.5)に対してプラセボ+テセントリク併用群で14.5ヶ月(95%信頼区間:9.6-20.4ヶ月)、Tiragolumab+テセントリク併用群で死亡(OS)のリスクを31%減少(HR:0.69、95%信頼区間:0.44-1.07)した。
PD-L1高発現群(PD-L1≧50%)における無増悪生存期間(PFS)中央値はTiragolumab+テセントリク併用群の16.6ヶ月(95%信頼区間:5.5-22.3ヶ月、N=29人)に対してプラセボ+テセントリク併用群で4.1ヶ月(95%信頼区間:2.1-6.8ヶ月、N=29人)と、Tiragolumab+テセントリク併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを71%減少(HR:0.29、95%信頼区間:0.15-0.53)した。また、客観的奏効率(ORR)はTiragolumab+テセントリク併用群の69.0%に対してプラセボ+テセントリク併用群で24.1%であった。全生存期間(OS)中央値はTiragolumab+テセントリク併用群の未到達(95%信頼区間:30.3ヶ月-未到達)に対してプラセボ+テセントリク併用群で12.8ヶ月(95%信頼区間:4.7-24.2ヶ月)と、Tiragolumab+テセントリク併用群で死亡(OS)のリスクを77%減少(HR:0.23、95%信頼区間:0.10-0.53)した。
一方の安全性として、全グレードの有害事象(AE)発症率はTiragolumab+テセントリク併用群の98.5%に対してプラセボ+テセントリク併用群で97.1%、グレード3~4の有害事象(AE)発症率はTiragolumab+テセントリク併用群の52.2%に対してプラセボ+テセントリク併用群で39.7%であった。全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はTiragolumab+テセントリク併用群の82.1%に対してプラセボ+テセントリク併用群で70.6%、グレード3~4の有害事象(AE)発症率はTiragolumab+テセントリク併用群の22.4%に対してプラセボ+テセントリクで併用群25%あった。本試験で新たに確認された有害事象(AE)はなく、Tiragolumab、テセントリクの安全性プロファイルと一致していた。
以上のCITYSCAPE試験の長期フォローアップの結果より、ロシュ社のChief Medical OfficerであるLevi Garraway氏は「今回の結果は、抗TIGIT抗体Tiragolumabや抗PD-L1抗体薬テセントリクなどの抗PD-L1がん免疫療法を組み合わせることで良好な抗腫瘍効果を示し、がんにおけるアンメットニーズに応える新しい治療選択肢になり得る可能性が示唆されました」と結論を述べている。