・高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)がある転移性大腸がん患者が対象の第3相試験
・一次治療としてのキイトルーダ単剤療法の有効性・安全性を化学療法と比較検証
・全生存期間は事前に設定した基準を超えなかったが、無増悪生存期間は16.5ヶ月であり、化学療法群(8.2ヶ月)に対して改善した
4月12日、医学誌『The Lancet Oncology』にて高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)がある転移性大腸がん患者に対する一次治療としての抗PD-1抗体薬であるキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ、以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のKEYNOTE-177試験(NCT02563002)の最終アップデート解析の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのLuis A Diaz Jr氏らにより公表された。
KEYNOTE-177試験は、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)がある転移性大腸がん患者(N=307人)に対する一次治療として3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg単剤を最大2年間投与する群(N=153人)、またはmFOLFOX6/FOLFIRI±ベバシズマブ/セツキシマブ併用療法を実施する群(N=154人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全患者群における全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、安全性を比較検証した第3相試験である。なお、化学療法群で病勢進行した場合、最大35サイクルのキイトルーダ単剤療法の治療を受けている。
本試験が開始された背景としては、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)がある転移性大腸がん患者に対する一次治療としての抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は、化学療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を改善することが示されている。しかしながら、全生存期間(OS)に関する改善効果は明らかでない。以上の背景より、本試験の最終アップデート解析の結果が公表された。
本試験のフォローアップ期間中央値44.5ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、キイトルーダ単剤群の未到達(95%信頼区間:49.2ヶ月-未到達)に対して化学療法群で36.7ヶ月(95%信頼区間:27.6ヶ月-未到達)を示し、化学療法に比べてキイトルーダ単剤群で死亡(OS)のリスクを26%改善(HR:0.74、95%信頼区間:0.53-1.03、P=0.036)したが、事前計画した優越性基準であるP値0.025未到達のため、統計学的有意な差は確認されなかった。
もう1つの主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は、キイトルーダ単剤群の16.5ヶ月(95%信頼区間:5.4-38.1ヶ月)に対して化学療法群で8.2ヶ月(95%信頼区間:6.1-10.2ヶ月)を示し、化学療法に比べてキイトルーダ単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを41%改善(HR:0.59、95%信頼区間:0.45-0.79)した。
一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率は、キイトルーダ単剤群の22%(N=33人)に対して化学療法群で66%(N=95人)であり、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通り。キイトルーダ単剤群では、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、大腸炎、下痢、倦怠感がそれぞれ2%(N=3人)、化学療法群では好中球数減少が17%(N=24人)、好中球減少症が15%(N=22人)、下痢が10%(N=14人)、倦怠感が9%(N=13人)であった。なお、治療関連有害事象(TRAE)により死亡は、キイトルーダ単剤群で0人、化学療法群で1人確認されている。
以上のKEYNOTE-177試験の最終アップデート解析の結果よりLuis A Diaz Jr氏らは以下のように結論を述べている。「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)がある転移性大腸がん患者に対する一次治療としての抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は、全生存期間(OS)で統計学的有意な差を示すことができなかったものの、持続的な抗腫瘍効果、低率な有害事象(AE)発症率であることが今回のアップデート解析の結果確認できました。これは高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)がある転移性大腸がん患者に対する一次治療を支持するものである」と結論を述べている。