・転移性大腸がん患者が対象の第2相試験
・一次治療としてのFOLFOXIRI+ベバシズマブ+テセントリク併用療法の有効性・安全性を
FOLFOXIRI+ベバシズマブと比較検証
・無増悪生存期間はFOLFOXIRI+ベバシズマブ+テセントリク併用群で13.1ヶ月と、
FOLFOXIRI+ベバシズマブ併用群(11.5ヶ月)に対して延長を認めた
5月27日、医学誌『The Lancet Oncology』にて転移性大腸がん患者に対するファーストライン治療としてのFOLFOXIRI+ベバシズマブ±PD-L1抗体薬であるテセントリク(一般名:アテゾリズマブ、以下テセントリク)併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のAtezoTRIBE試験(NCT03721653)の結果がUniversity Hospital of PisaのCarlotta Antoniotti氏らにより公表された。
AtezoTRIBE試験は、転移性大腸がん患者(N=218人)に対するファーストライン治療としてのFOLFOXIRI(イリノテカン165mg/m2+オキサリプラチン85mg/m2+ロイコボリン200mg/m2+フルオロウラシル3200mg/m2)+ベバシズマブ5mg/kg+テセントリク840mg併用療法を実施し、維持療法としてフルオロウラシル+ロイコボリン+ベバシズマブ+テセントリク併用療法を実施する群(N=145人)、もしくはFOLFOXIRI(イリノテカン165mg/m2+オキサリプラチン85mg/m2+ロイコボリン200mg/m2+フルオロウラシル3200mg/m2)+ベバシズマブ5mg/kg併用療法を実施し、維持療法としてフルオロウラシル+ロイコボリン+ベバシズマブ併用療法を実施する群(N=73人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証した多施設共同ランダム化オープンラベルの第2相試験である。
本試験が開始された背景として、過去の臨床試験にて免疫チェックポイント阻害薬はミスマッチ修復機構欠損のない(pMMR)またはマイクロサテライト安定性(MSS)の転移性大腸がんに対して臨床的ベネフィットを示さないことが確認されている。しかし、FOLFOXIRI+ベバシズマブは、pMMRやMSS腫瘍の免疫原性を高める可能性がある。そこで、転移性大腸がん患者に対するFOLFOXIRI+ベバシズマブ併用療法への抗PD-L1抗体薬テセントリクの上乗せ効果を検証する目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値19.9ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はFOLFOXIRI+ベバシズマブ+テセントリク併用群の13.1ヶ月(80%信頼区間:12.5-13.8ヶ月)に対してFOLFOXIRI+ベバシズマブ併用群で11.5ヶ月(80%信頼区間:10.0-12.6ヶ月)と、FOLFOXIRI+ベバシズマブ併用群に比べてFOLFOXIRI+ベバシズマブ+テセントリク併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを31%減少(HR:0.69、80%信頼区間:0.56-0.85、P=0.012)した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3~4の有害事象(AE)は下記の通りである。好中球減少症は、FOLFOXIRI+ベバシズマブ+テセントリク併用群の42%(N=59人)に対してFOLFOXIRI+ベバシズマブ併用群で36%(N=26人)、下痢は15%(N=21人)に対して13%(N=9人)、発熱性好中球減少症は10%(N=14人)に対して10%(N=7人)をそれぞれ示した。また、重篤な有害事象(SAE)発症率は、FOLFOXIRI+ベバシズマブ+テセントリク併用群の27%(N=39人)に対してFOLFOXIRI+ベバシズマブ併用群で26%(N=19人)を示した。
以上のAtezoTRIBE試験の結果よりCarlotta Antoniotti氏らは「転移性大腸がん患者に対するファーストライン治療としてのFOLFOXIRI+ベバシズマブ+PD-L1抗体薬テセントリク併用療法は、無増悪生存期間(PFS)を改善し、忍容性も良好でした」と結論を述べている。